Verical Farming(垂直農法)とは。垂直農法に期待されることとその課題。活用するためのポイントとは。

Verical Farming(垂直農法)とは。垂直農法に期待されることとその課題。活用するためのポイントとは。

Verical Farming(垂直農法)とは、水耕栽培などの装置を垂直方向に積み重ねた面で、野菜や果物などを生産する方法です。垂直に積み重ねることで栽培面積を広げることができ、従来の畑や温室栽培で利用する土地面積の10倍の収穫を可能にすることが期待されています。

情報サービス企業の株式会社グローバルインフォメーションが2022年3月に公開した市場調査レポート「垂直農法の世界市場 (2020-2026年):メカニズム・製品・国別」(BIS Research Inc.)によると、世界の垂直農法市場は2020年に55億米ドル規模(2020年のドル円相場平均より日本円にして約5,885億円)に達しました。2021年から2026年の間に市場は成長し、2026年には198億6千万ドル規模に達する、という予測も出ています。

垂直農法市場が成長するとされる要因には、耕地面積の減少や農村部から都市部への人口移動、人工的に日の長さなどを操作するのに利用される発光ダイオード(LED)技術の進歩などが挙げられます。

 

 

垂直農法の種類

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農産物を垂直に積み重ねて栽培する垂直農法には、土耕栽培、水耕栽培、エアロポニック栽培、アクアポニック栽培などの方法があります。

土耕栽培は従来の畑同様、植物を栽培するために土を利用します。水耕栽培は土を使わず水と液体肥料で植物を栽培します。エアロポニック栽培は「噴霧式水耕栽培」とも訳されます。エアロポニック栽培は水耕栽培同様、土を使わず、最低限の水と液体肥料を「スプレー噴射」して植物を栽培します。アクアポニック栽培は、従来の水産養殖と作物の水耕栽培を組み合わせた栽培方法で、植物を育てるために水と魚を必要とします。

上記市場調査レポートによると、世界の垂直農法市場において水耕栽培分野がその多くを占めています。

垂直農法に期待されていること

大都市圏での食料増加に対応できると期待されています。

垂直方向に積み上げる垂直農法は、広大な畑を必要としません。

先で紹介した垂直農法市場が成長するとされる要因に“農村部から都市部への人口移動”とありますが、2050年には世界人口の約80%が都市部に住むと推測されています。都市部の人口が増えるということは、土地の確保が困難な場所での食料需要が高まることを意味しています。このような大都市圏において、設置面積が小さく、既存の建物や屋上にも設置できる垂直農法は食料増加に対応できると期待されています。

また垂直農法を行う上で人工的に日の長さや温度・湿度などをコントロールできれば、天候や気候に左右されることなく、年間を通じてさまざまな作物を生産できるとされています。

なお、垂直農法は農業分野以外でも利用されています。アメリカのテキサス州にあるキャリバー・バイオセラピューティック社には世界最大の植物性医薬品工場があります。この施設内で栽培されている新薬やワクチンの製造に使用される植物は約15メートルの高さに積み上げられて栽培されています。これらの植物は屋内で厳重に管理されて栽培されることで、外界の病気や汚染などのリスクから守られています。

垂直農法の課題

未来の食料保障に対して期待が高まる垂直農法ですが、もちろん課題もあります。

屋内で垂直農法を行う場合、コスト面が課題となります。近年ではLEDの高効率化や製造コストの低下により、コストダウンが進み始めていますが、現状は特定の作物にのみ有効とされています。

たとえばベビーリーフやイチゴなどの小さな作物は栽培しやすく利益率も高いのですが、小麦やトウモロコシといった背の高い穀物は効率的に積み上げることができず、1トンあたりの価格はかなり低くなります。BBC Science Focusの記事によると、アメリカ・コーネル大学の研究いわく、垂直農法の小麦から作られたパンはLED照明の電力代だけで約18ポンド(日本円にして約3,011円)かかります。

また屋内型で、環境を人工的にコントロールする場合には、電力供給が途絶えないようにする必要も生じます。

 

 

垂直農法を活用するためのポイント

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そこで最後に、スマート農業関連企業「AGRITECTURE(アグリテクチャー)」が、ハリケーンを経験したプエルトリコの屋内農場「Fusion Farms(フュージョン・ファーム)」と「Grupo Vesan(グルーポ・ベサン)」に行ったインタビューをもとに記した、垂直農法を活用するためのポイントをまとめます。

ハリケーン被害を乗り越え、垂直農法による生産を続けているプエルトリコの農場が挙げたポイントは

  1. 自然災害を乗り越えるため、建物の耐候性を確保する
  2. 植物工場の環境調整に利用する空調機の設置場所を検討する
  3. 電力供給が途絶えないよう発電機を設置する
  4. 緊急時の暴風雨対策計画を立てる
  5. 屋内栽培であっても除染を徹底する

です。

2.について補足すると、グルーポ・ベサン社は通常屋上に設置される空調機を建物の外壁に設置しました。外壁に設置することで、ハリケーンによる浸水のリスクを回避することができます。直射日光が当たらないという利点もあり、そのおかげで効率が向上したとインタビューに答えています。

5.について補足すると、従来の畑に比べ病原体にさらされる量が限定される屋内農場であっても、汚染防止に注意を払う必要があります。フュージョン・ファーム社は自然災害後に人が化学物質と接触する可能性が高くなることや石油精製所がハリケーンの被害を受け、大気汚染物質が増加する可能性などを鑑みて、厳しい作業手順を徹底することで人による汚染リスクの軽減をはかったり、空気中の病原菌や汚染物質が蔓延するのを防ぐため、栽培室の空気の流れを陽圧に保ったりして、汚染を防いでいます。

 

参考文献

  1. Vertical farming: Why stacking crops high could be the future of agriculture
  2. 垂直農法市場、2026年に198億6千万米ドル規模到達見込み
  3. What is vertical farming? | Definition from TechTarget
  4. 空中で3倍早く育つ。エアロポニック野菜とは? | ギズモード・ジャパン
  5. What You Should Know About Vertical Farming | Eden Green
  6. These Vertical Farms in Puerto Rico Offer 5 Lessons for Surviving Extreme Weather — AGRITECTURE

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