冬の露地栽培で安定した収量と品質を得るために効果的な防寒対策として「トンネル栽培」があります(注:豪雪地域や激しい海風やビル風が吹く地域などでは難しいため、地域は限定されます)。
トンネル栽培とは
畝に防寒用シートをトンネル状にかけて栽培する方法です。トンネルをかけることで冷気や雪を遮り、保温性が高いので野菜の発芽や生育に必要な温度を保つことができます。霜害対策にもつながります。
どんな地域が適している?
トンネル栽培に適した地域は平野部です。冒頭で紹介したような、激しい風が吹く地域や寒さが厳しい地域などでは、トンネル栽培ではなく「べたがけ被覆※」やハウスを利用した栽培が適しています。平野部であっても、その土地の積雪量や冬の時期に吹く風の速さを見越して、資材やトンネルの張り方を工夫する必要があります。
※「べたがけ被覆」は、作物に直接被覆資材(一般的には不織布)をかけるか、支柱を使って被覆資材を浮かせてかけるものです。
どんな野菜を育てるのがおすすめ?
トンネル栽培するのにおすすめな野菜は、比較的寒さに強い種類の葉菜類や根菜類です。ホウレンソウやコマツナ、ニンジンやダイコンなどが挙げられます。ただし品種を選ぶ際は、低温などの条件下でトウ立ち((花をつける茎)が伸びること)が起こりやすいものもあるので、冬の寒い時期でも種まきが可能かどうか、野菜の栽培適期や特性についてあらかじめ確認してください。
どんな資材を使うのがおすすめ?
主な資材はトンネル用の支柱と防寒用シートです。
防寒用シートの素材には「農ビ」、「農PO」、「農ポリ」などが挙げられます。素材ごとに特性があるので(例えば「農ビ」は厚手なので保温効果が高く、「農ポリ」は軽くて薄いなど)トンネル栽培をするにあたり重視するものによって使い分けましょう。
換気用の穴が空いている「有孔」か「無孔」かも、保温性や作業量に影響します。例えば「無孔」だと、日中晴れた場合にトンネル内の温度が上がりすぎることがあります。そのため作物によっては換気作業が必須となります。一方「有孔」の場合、換気をせずに済む分、保温効果は低くなります。
資材を選ぶ際は、その地域の冬の様子や育てる野菜の特性、保温効果をとるのか作業効率をとるのかなどを考えた上で選びましょう。
トンネルの作り方
トンネルを作る際、注意しなければならないのが強度です。トンネルの作り方が甘いと、雪が積もったり、強い風が吹ったりした時にトンネルが崩れ、その度に修復しなければなりません。栽培時期などによっては半年以上被覆したままになることもありますから、どうせなら雪にも風にも強いトンネルを作っておきたいところ。
トンネルを作る前の準備
トンネルを作る前に、まずは土を耕します。トンネル栽培で育てる野菜に適した肥料等を入れ、しっかり耕しておきましょう。耕したら畝を立てて平らにならします。
トンネルの作り方
①支柱を立てる
種をまいたら畝の上をまたぐようにしてトンネル用の支柱を垂直に挿し込みます。
支柱を立てる際、トンネル天井部の高さが揃うよう、土に挿し込む深さを一定にします。支柱を立てる前に挿す深さが一定になるよう目印をつけておくか、あらかじめ目印がついている支柱を選ぶことをおすすめします。高さを一定にすることで強風に強くなります。
支柱の間隔は基本的には70〜80cm程でOKですが、風が強い地域の場合は40〜60cmなど間隔を狭めて調整してください。
②防寒用シートを被せる
支柱を立てたら防寒用シートを被せます。シートの裾は土で埋め、隙間から冷気が入り込まないようにしましょう。
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強風対策として、追加で補強用の支柱を挿すのもおすすめです。
また防寒用シートが「無孔」の場合や、「有孔」で基本的には換気が不要なタイプであっても、日中の日差しが強い場合などはシートの裾をめくって換気を行う必要があります。裾を固定するための「留め具」も 用意しておくとよいでしょう。
マルチと組み合わせるのもおすすめ
トンネルを作る前に、土壌の表面をマルチで覆うのもおすすめです。冬の寒い時期のマルチングには、地表の温度を上げて生育を促進する効果やトンネル内の多湿を避ける(土壌中の水分が蒸発するのを抑える)効果などがあります。黒色のマルチなどを用いると、光を通しにくいので雑草抑制効果もあります。
参考文献