2022年度農畜産物トレンド調査から知る注目キーワード。過去のトレンド調査結果と比べてみると……

2022年度農畜産物トレンド調査から知る注目キーワード。過去のトレンド調査結果と比べてみると……

農業専門紙「日本農業新聞」は、“業者の傾向を把握して消費実態に合わせた農業生産につなげる目的で”「農畜産物トレンド調査」を実施。2022年1月11日に、その2022年度版が公開されました。

 

 

22年度農畜産物トレンド調査

2022年度農畜産物トレンド調査から知る注目キーワード。過去のトレンド調査結果と比べてみると……|画像1

 

流通業者に聞いた22年度の販売キーワードの結果は以下の通りです(順位/キーワード)。

  1. 持続可能性
  2. 安全・安心
  3. ネット取引・宅配
  4. 安定(価格・数量)
  5. 健康(機能性)
  6. 地産地消・国産志向
  7. 新型コロナ対応
  8. 物流
  9. 簡便・時短
    値頃感(節約志向)

1位に選ばれた「持続可能性」は、持続可能な開発目標(SDGs)などの浸透から、社会課題を解決する商品が選ばれるのでは、と注目が集まっています。SDGsやエシカル消費(社会課題の解決を考慮したり、社会課題に取り組む事業者を応援しながら消費活動を行うこと)に関心の高い若い世代へも訴求できると考えられています。

後ほど改めてご紹介しますが、22年度版で第2位にランクインしている「安全・安心」は、上位キーワードの常連です。調査に回答した流通業者の意見には「食の基本であり、最低条件」とあります。また新型コロナウイルスの影響もあり、コロナ下の消費者の健康意識の高まりからより安全・安心が求められる、といった意見もあります。

2019年12月初旬に報告されてから世界的流行となった新型コロナウイルスの影響はいまだ続いており、第3位にランクインした「ネット取引・宅配」や第7位「新型コロナ対応」の意見にも、コロナ下のマーケットを意識しているものが見受けられました。

 

 

過去の農畜産物トレンド調査を振り返る

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本サイトでは過去に2020年度の農畜産物トレンド調査の結果を取り上げています。

2020年農業トレンドキーワードをヒントに、今後の農業について考える|農業メディア|Think and GROWRICCI

そこで2018年から2021年度のランキング結果を調べ、表にまとめました。

2018年 2019年 2020年 2021年 2022年
1位 安全・安心 安定(価格・数量) 物流 新型コロナ対応 持続可能性
2位 おいしさ 安全・安心 安定(価格・数量) ネット取引・宅配 安全・安心
3位 健康 気象 安全・安心 安全・安心 ネット取引・宅配
4位 気象 消費増税対応 気象 安定(価格・数量) 安定(価格・数量)
5位 国産 健康(機能性) 東京五輪 気象 健康(機能性)
6位 値頃感 簡便・時短 簡単・時短 値頃感(節約志向) 地産地消・国産志向
7位 地産地消 おいしさ おいしさ 健康(機能性) 新型コロナ対応
8位 簡便・時短 小容量(少人数家族対応) 健康(機能性) 物流 物流
9位 GAP認証 輸入・貿易自由化(TPP11、日欧EPAなど)
東京五輪・パラリンピック
輸出・インバウンド おいしさ 簡便・時短


値頃感(節約志向)

10位 契約取引 値頃感(節約志向) 簡便・時短

こう見ると、その時代に何があったか、何に注目が集まっていたかが一目瞭然です。

2018年度のランキングを掲載していた当時の日本農業新聞(紙面)によると、前年度から順位を上げた4位の「気象」は、2017年の天候不順や台風の影響で野菜などが高騰したことから関心が高まった、とあります。

19年度には「気象」は3位にランクインし、また1位の「安定(価格・数量)」の背景には、異常気象や自然災害などの影響で相場が乱高下していることが挙げられています。2019年は10月1日から消費税及び地方消費税の税率が8%から10%に引き上げられた年ですが、19年度の結果にはその影響を懸念して4位に「消費増税対応」がランクインしています。

改めて見ると、21年度と22年度の結果は、「安全・安心」や「安定(価格・数量)」といった、常に注目されているキーワードもランクインしているものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、これまでとは違うキーワードが重視されている印象です。

「持続可能性」「ネット取引・宅配」「地産地消・国産志向」といったキーワードが来年度以降、どうランクインしてくるのか気になるところです。

 

 

1位「持続可能性」に関する農業分野の取り組み、その現状

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農林水産省「食品及び農業・農村に関する意識・意向調査結果」(2010年4月公表)は、農業者モニター2,500人を対象にアンケート調査を実施。

農業者に環境保全型農業※の取り組みに対する意識についてアンケートをとったところ、。

消費者の信頼感が高まる

  • とても利点がある 43.6%
  • やや利点がある 34.8%
  • どちらともいえない 16.6%
  • あまり利点がない 3.5%
  • まったく利点がない 1.0%
  • 無回答 0.5%

地域の環境をよくすることができる

  • とても利点がある 34.1%
  • やや利点がある 43.8%
  • どちらともいえない 16.9%
  • あまり利点がない 4.0%
  • まったく利点がない 0.6%
  • 無回答 0.5%

自身の健康につながる

  • とても利点がある 36.3%
  • やや利点がある 37.5%
  • どちらともいえない 21.2%
  • あまり利点がない 3.1%
  • まったく利点がない 1.3%
  • 無回答 0.5%

と「消費者の信頼感が高まる」「地域の環境をよくすることができる」などに対して利点があるとした回答が多く寄せられ、農業者の中で取り組みへの関心が高いことがわかります。


農業の持つ物質循環機能を生かし、生産性との調和などに留意しつつ、土づくり等を通じて化学肥料、農薬の使用等による環境負荷の軽減に配慮した持続的な農業

引用元:環境保全型農業関連情報:農林水産省

上記アンケートは2010年4月に公表されたものですが、2016年2月9日公表の「有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査」でも同じようなアンケート調査が行われています。このアンケート調査は農業者モニター1,142人を対象に行われました。

有機栽培等又は特別栽培※2等を行っていると回答した人(450人)に、実践している理由を聞いたところ(複数回答)、

  • 消費者の信頼感を高めたいため 66.4%
  • より良い農産物を提供したいため 60.0%
  • 地域の環境や地球環境を良くしたいため 35.6%

などが挙げられました。

また有機栽培等又は特別栽培等を行っている人で、今後、栽培面積等を拡大、または現状維持(環境に配慮した栽培に移行する)と回答した人(187人)に、その理由を聞いたところ、回答率は異なりますが、上記と同じ内容が同じ順で挙げられる結果となりました。

※2
特別栽培農産物は“その農産物が生産された地域の慣行レベル(各地域の慣行的に行われている節減対象農薬及び化学肥料の使用状況)に比べて、節減対象農薬の使用回数が50%以下、化学肥料の窒素成分量が50%以下、で栽培された農産物(引用元:特別栽培農産物に係る表示ガイドライン:農林水産省)”を指します。

一方で、持続的な農業への取り組みに対する課題も見えてきました。

今後の栽培面積等を縮小すると回答した人(36人)に理由を聞いたところ、「高齢のため、後継者がいない」「労力がかかる」「収量や品質が不安定だから」といった理由が挙げられています。

とはいえ、関心を持っている人は増えつつあるのではないでしょうか。同調査で、慣行栽培を最も多い栽培方法と回答した人たち(650人)に、現在行っている慣行栽培から有機栽培等及び特別栽培等への取組みへの意向を聞いたところ、

  • どちらかといえば取り組みたい 43.7%
  • どちらかといえば取り組みたくない 24.9%
  • 取り組みたくない 18.9%

の順で、「どちらかといえば取り組みたい」が最も高い回答となりました。「どちらかといえば取り組みたくない」「取り組みたくない」の回答が続いているものの、取り組みたいという意向が上位に来ていることは興味深いです。

参考文献

  1. 22年農畜産物トレンド調査 「持続可能」へ移る商流 若者に訴求期待 「地産地消」も急伸 / 日本農業新聞
  2. 日本農業新聞 – 21年農畜産物トレンド 1位は「コロナ対応」 「ネット取引」も急上昇
  3. 2020年農業トレンドキーワードをヒントに、今後の農業について考える|農業メディア|Think and GROWRICCI
  4. 流通業者に聞く「19年農畜産物トレンド」 価格・数量とも「安定」 「自由化」対応が鍵
  5. 3年連続「安全・安心」 「気象」「値頃感」アップ 18年農畜産物トレンド調査
  6. (6)持続可能な農業生産を支える取組 イ 環境保全型農業の取組状況:農林水産省
  7. 有機農業を含む環境に配慮した農産物に関する意識・意向調査 農林水産統計

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