注目集まる伝統野菜。伝統野菜は売れるのか?その魅力は?

注目集まる伝統野菜。伝統野菜は売れるのか?その魅力は?

「6次産業化」や「地産地消」のキーワードとともに、目にする機会が増えた「伝統野菜」の文字。近年、全国各地で「伝統野菜」が注目を集めているようです。

本記事では伝統野菜に着目。伝統野菜に注目が集まる理由や、「売れるのか」といった疑問、魅力などについて調べてみました。

 

 

伝統野菜の定義

注目集まる伝統野菜。伝統野菜は売れるのか?その魅力は?|画像1

 

伝統野菜とは

その地域で古くから栽培されてきた在来種の野菜。日本では、京野菜、加賀野菜、江戸野菜などがある。在来野菜。

引用元:小学館 デジタル大辞泉

とあります。

 

伝統野菜に注目が集まる理由

伝統野菜はこれまで生産減少の一途をたどっていました。

大量生産が求められる時代において、在来種の野菜は形や大きさが安定しない、育てるのに手間がかかるなどの理由でF1種の生産に切り替えられていき、生産が減少していきました。

また大量生産の野菜が広く浸透したことで、伝統野菜の存在が薄れ、消費者からも「知識や調理経験がないと扱いづらい」と認識されるように。

品質が統一された農産物の大量生産は続いていますが、近年「地産地消」が叫ばれるようになったことから、地域特有の伝統野菜に再び注目が集まるようになりました。

 

伝統野菜は売れるのか?

伝統野菜農家の中には「売れるかどうかでいうと、今はまだ難しい」と答える人もいるようですが、多方面から注目を集める野菜であるのは事実です。

例えば、原材料にこだわりを求めるレストランでは、地域の特色を活かした伝統野菜に注目が集まっています。

消費者の健康志向もあいまって、野菜そのものが食べ物の主役になりつつある昨今。伝統野菜の個性や特徴が、「そこでしか食べられない」「他の野菜にはない味」などの付加価値をもたらしているのです。

伝統野菜は生産者が限定されることがあるため、簡単に生産できない可能性もあります。

ただ、希少性が高い伝統野菜は高価格で取引されることが多いので、伝統野菜生産へのこだわりと販売元次第では「売れる野菜」になると言えます。

また伝統野菜は栄養面でも注目されています。

京都府立大学の「食品成分の発ガン抑制」の研究によると、一般の野菜に比べ、伝統野菜は「生物的抗変異作用」が高いと言います。

生物的抗変異作用とは、遺伝子の損傷を修復する能力を高める働きを指します。人のカラダでは常に遺伝子の損傷が起きており、DNAに組み込まれた修復する力によって修復されています。なお、いくつかの損傷はそのまま残ってしまうのですが、それがやがてガンになることも。修復力を高める働きは、発ガンを抑制するにはとても重要なのです。

研究によると、伝統野菜と一般的な野菜の生物的抗変異作用の活性を比較したところ、以下のような結果となりました。

<伝統野菜と一般的な野菜の生物的抗変異作用の比較>

  • 加茂茄子(伝統野菜)→千両なすの6倍
  • 柱うり→しろうりの8倍
  • 鹿ケ谷カボチャ→西洋カボチャの10倍

また石川県農業総合研究センターは「加賀野菜」に抗酸化作用のあるポリフェノール系物質が多いことを報告、京都府保健環境研究所は「」の栄養価が市販されている改良品種よりも高いことを報告しています。

一般に販売されている野菜に比べて高価格帯になる伝統野菜ですが、健康志向のある消費者であれば、少々高くても買ってもらえるかもしれません。

 

 

伝統野菜が地域ビジネスを盛り上げる!?

注目集まる伝統野菜。伝統野菜は売れるのか?その魅力は?|画像2

 

地域特有の農作物である伝統野菜によって、地域ビジネスが盛り上がるという利点もあります。

“伝統野菜生産へのこだわりと販売元次第では「売れる野菜」になる”と紹介したものの、一般に生産されている農作物に比べて生産効率が悪く、形や大きさが安定しにくいことから、伝統野菜そのものは「ビジネス商材」には向いていないかもしれません。

しかし地域特有の伝統野菜が、人の関心を集め、地域の人たちをつなげることで、その地域の存在感を高められるのではないでしょうか

地域を盛り上げた事例として奈良県の農家レストラン「清澄の里 粟」(以下「粟」)をご紹介します。

大和伝統野菜を使った料理を提供している「粟」は地元農家から野菜を買い取り、地域経済を回しています。

伝統野菜を維持するため、「粟」を中心に複数の組織が関わり、地域の活性化をはかっています。

  • 伝統野菜を使った飲食店経営や6次産業化
  • 伝統野菜の栽培
  • 伝統野菜の調査研究

この3つの柱が、伝統野菜の維持と地域文化をともに支えているのです。

収入はレストランや6次産業で得、地域の伝統やコミュニティ機能を確実に維持する「粟」の事例が全国各地に広まれば、かつて生産者からも消費者からも扱いにくいと言われていた伝統野菜へのイメージがガラリと変わるかもしれません。

 

参考文献

  1. 特集 野菜をめぐる新しい動き 伝統野菜の実力(1) 農林水産省
  2. 渡邉絵里子編集, 『農業ビジネスveggie 2019 vol.24 冬号』イカロス出版
  3. 伝統野菜の健康成分に注目! AllAbout
  4. 渡邉絵里子編集, 『農業ビジネスマガジン 2017 WINTER vol.16』, 2018年5月25日, イカロス出版
  5. 伝統野菜がつくる小さな経済と地域の未来 WEDGE Infinity

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