農産物直売所で稼ぐために何が重要か。直売所で売れる野菜や売り方のポイント。

農産物直売所で稼ぐために何が重要か。直売所で売れる野菜や売り方のポイント。

農産物直売所は、近年日本で成長を続けている分野の一つです。農林水産省の令和4年度の調査によると、農産物直売所の売上は1兆879億円で、前年から4.0%増加となっています。

直売所は、新鮮な地元産の野菜や加工品、スーパーでは手に入らない地域特産物や伝統的な農産物が手に入れられることから、地元消費者や観光客にとって魅力的な場所となっています。

しかし、直売所で成功を収めるためには、ただ商品を並べるだけでは十分ではありません。売上増加を目指すうえでは、売れる野菜や売れる商品の特性、店頭での見せ方やマーケティング戦略を駆使することが重要です。

 

 

直売所で売れる野菜

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定番野菜

購入者からの需要が高いだけでなく、栽培の面では単位面積当たりの労働時間が主要農産物の中で短いという点で魅力的な野菜といえばタマネギとジャガイモがあげられます。

ただし、タマネギとジャガイモをただ店頭に並べれば売れる、というわけではありません。タマネギとジャガイモの一般的な収穫時期である5〜6月を過ぎた後、直売所に仕入れ品が多くなる時期を狙って売るのがポイントです。

そのために、収穫後の保管に気を付けたいところです。タマネギであれば、貯蔵性に優れた品種を選ぶと時期をずらした出荷に取り組みやすくなります。ジャガイモは緑化防止のために遮光した涼しい場所に保管します。貯蔵が難しい場合には、圃場の一定の面積を秋にかけて栽培するジャガイモのために利用します。

また他にも「売れる野菜」として知られている野菜は多々あります。ただ、売れる品目が要する労働時間や経費の割合によってはコストパフォーマンスが悪く感じられるものもあるので、経営規模やどのような販売形態を望むかによって慎重に考えることをお勧めします。

関連記事:どんな野菜が売れている?売れる品目を選ぶ際の注意点

ミニ野菜

世帯人数の平均が少なくなり、単身世帯が増えつつある昨今、少人数の家庭に合わせたミニサイズの野菜の販売もおすすめです。少人数家庭用のニーズに応えられるだけでなく、ミニサイズの野菜は通常サイズの野菜に比べると密植できるので、単位面積当たりの売り上げを増やすことにもつながります。

ミニサイズの野菜を栽培して販売する他に、間引き野菜や規格外品も売り方を工夫することで人気の商品になることがあります。間引きしたニンジンや大根を安価に提供することは、消費者に喜ばれるだけでなく、廃棄ロスを減らすことにもつながります。そのほか、隙間農地で育てたベビーリーフ、二十日大根なども販売アイデアとしてあげられます。

自給率が低い野菜

国産品が少ない野菜も直売所では高い需要があります。もちろん、国産自給率が低い野菜はそれなりに手間がかかります。たとえば国産自給率が0.1%のゴマは、栽培自体は比較的容易なものの、選別作業に手間がかかります。ただ、その分、参入者が少ないともいえます。手間を惜しまず取り組めば、他の生産者との差別化を図ることができます。

直売所で売れる商品の特徴

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直売所で成功するためには、消費者が求める商品の特性を理解することが重要です。消費者が直売所で重視するポイントは、何と言っても「鮮度」です。朝採りの新鮮な野菜や完熟した果物は、スーパーマーケットではなかなか手に入らないため、直売所での大きな強みとなります。また、旬や季節感も購入の際に重視される要素です。旬の野菜や果物を並べることで、消費者に「今しか手に入らない」と感じさせ、購買意欲を高めることができます。

そのほか、地域特産品や珍しい品目、少量生産のものもスーパーマーケットではなかなか手に入らないものとして需要があります。

たとえば生産量の少ない地域独自の野菜や食品は、地元消費者にとっては懐かしさを感じるものとなり、直売所で人気商品となることがあります。近年復活している伝統野菜もその例です。また、こうした商品には都市部ではお目にかかれないこともあり、その歴史や調理法の紹介を添えることで、若い世代や観光客の興味を引くこともできます。

 

 

売り方のポイント

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冒頭でも申し上げたように、直売所にただ商品を並べるだけでは十分ではありません。消費者に手に取ってもらいやすくなるよう工夫をこらすことが大切です。

商品の見せ方

商品そのものの見た目は非常に重要です。もし内容量も価格もまったく同じ商品が並んでいたとしたら、消費者は見た目で判断するしかありません。手に取ってもらいやすくするためには、野菜の形や大きさを揃えたり、袋詰めされた商品がより美しく見えるように袋の曇りや汚れを避け、タマネギやジャガイモなどの土もの野菜は定期的に新しい袋に入れ替えたりするなどして、商品の価値を高めます。なお、キャベツやハクサイなどの大きな野菜は、鮮度を保つためにラップで包むなどするほか、切り口をきれいに整えるとなおよいです。

また先で“野菜の形や大きさを揃えたり”と記しましたが、規格外品も売り方を工夫すれば消費者にとって魅力的な商品となります。この際は、規格品とはっきりと区分けしたうえで安く売ると、「お得感」から消費者に喜ばれます。

商品をアピールするPOPの書き方

商品説明がしっかりと書かれたPOP(商品説明カード)は、消費者に対して商品の魅力を直接伝える有効な手段です。たとえば、特定の品種や栽培方法の特徴をアピールすることで、一般的な品種との違いを伝えることができます。また、地域特産の野菜や加工品、珍しい野菜には、その野菜を使ったレシピを添付すると、普段それらを食べ慣れていない若い世代や観光客が手を伸ばしやすくなります。すべての来店者の目に留まるよう、POPは商品に近い場所、たとえば商品の手前に配置します。

またPOPに生産者の顔写真や名前、栽培に対するこだわりを書き添えるのもおすすめです。生産者自身の思いや経歴を紹介し、商品に付加価値を持たせることができるのは、直売所での販売ならではの特徴といえます。

価格設定にも工夫

売り切るために安売りするのはNGですが、はじめのうちは少し安く販売する必要があるかもしれません。直売所に来る人の中には「直売所の商品は安い」と考えて足を運ぶ人もいるからです。とはいえ、価格よりも鮮度を重視して選ぶ人もいるのは事実。商品に対して消費者からの評価が高まれば、売値を高くすることができます。

なお、販売時には200円や300円とキリの良い数字で販売するのではなく、200円なら190円に、300円なら290円にと10円安くするのがおすすめです。キリの悪い価格表示は、消費者の心理的抵抗を少なくするとのこと。ぜひご活用ください。

参照サイト:「98円」や「2,980円」などの中途半端な価格設定が多いのはなぜでしょうか?

 

参考文献

  1. 田中満『まだまだ伸びる農産物直売所 地域とともに歩む直売所経営』(2009年、農山漁村文化協会)
  2. 勝本吉伸『いま知っておきたい!農産物直売所で稼ぐ70の極意』(2022年、家の光協会)

参照サイト

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