近年、日本は温帯に分類されているにも関わらず、30℃を超える「真夏日」や35℃を超える「猛暑日」が続いています。猛暑日は熱中症などの被害を引き起こす可能性が高まりますが、被害を受けるのは人だけではありません。強すぎる日光は農作物にも悪影響を及ぼします。
そこで本記事では、猛暑から農作物を守る農業用資材のひとつである「遮熱塗料」について紹介していきます。
遮熱塗料について
遮熱塗料は、太陽光による温度上昇を防ぐ塗料のことです。
ビニールハウスなどに使用する遮熱塗料であれば、ビニールに直接塗布することで効果を得ることができます。遮熱を目的とする農業用資材にはネットやシートなど、張ったり貼ったりすることで効果が得られるものもありますが、遮熱塗料であればハウス内を覆うことがないため、ハウス内の明るさを保つことができるというメリットがあります。
遮熱の仕組み
物体に当たることで発熱する近赤外線。例えばハウス内で感じる高温は、近赤外線によって地面が熱され、空気が温まることで生じます。遮熱することで、近赤外線がビニールハウス内を透過する量を抑えることができます。そのため、ハウス内の温度を下げることができるのです。
断熱との違い
遮熱に似た言葉で「断熱」があります。
遮熱は「熱を反射することで熱を通しにくくすること」です。ビニールハウスの外に遮熱塗料を塗布した場合、ハウスの外側に当たった熱線を反射させることができるため、ハウスの内側に熱が通りにくくなります。
一方、断熱は「熱が伝わりにくい素材を利用し、熱の移動を遮断すること」です。遮熱とは違い、屋外の熱から屋内を守ることに適しています。そのため、屋内に熱がこもってしまうと、その熱を屋外に逃しにくい性質があります。
太陽光による温度上昇を避けたいのであれば、近赤外線を反射し、熱が生じるのを抑える「遮熱」の方が適しています。
「断熱」は夏場には適していませんが、冬場のハウス内の温度低下を避けたい場合にはおすすめです。
遮熱塗料の使い方
噴霧する場合
ビニールハウスなどに噴霧する場合には、まず
- 遮熱塗料
- 水
- 大型のバケツ
- 噴霧器
を用意します。
- 大型のバケツに遮熱塗料を入れ、定められた量の水で希釈する
- 希釈した遮熱塗料を噴霧器に入れ、ビニールハウスなどに吹きつける
噴霧する際の注意点は以下の2点です。
- 晴れた日に行う(塗料が流れ落ちるのを防ぐため)
- ビニールハウスに噴霧する場合は、ビニールハウス内に塗料が吹き付けられないよう開口部分を閉めてから作業を行う
塗布する場合
屋根などに塗布する場合は、
- 遮熱塗料
- 希釈用の液剤(遮熱塗料の裏面に記載されているものを使用)
- ハケやローラー
を用意します。
- 遮熱塗料を指定されている希釈用液剤で希釈する
- ハケやローラーを用いて、希釈した塗料を塗る
遮熱効果が薄れてしまうので、塗る面についた汚れやサビは事前に取り除きましょう。しっかりと遮熱塗料を定着させたい場合には、下塗り材をあらかじめ塗っておくと、塗料の付着がよりよくなります。
遮熱塗料のメリット・デメリット
メリット
遮熱塗料のメリットは
- 遮熱できる
- 節電効果がある
- 一度塗ると効果が長く続く
- 塗布した屋根等の寿命が長くなる
ことが挙げられます。
遮熱塗料一番のメリットは、その名の通り「遮熱できる」ところでしょう。夏場の強すぎる日光から農作物を守ることができるので、猛暑日でも太陽光による農作物への悪影響を防ぐことができます。また遮熱することでハウス内の温度が下がりますから、光熱費の節約にもつながります。
遮熱塗料の耐用年数にも注目です。遮熱塗料の耐用年数は15〜20年と長いのが特徴です。他の塗料に比べると割高ですが、メンテナンスの手間を考えると、コストパフォーマンスの悪い資材ではないはずです。
遮熱塗料を塗布することで、熱による屋根素材への影響も低くすることができます。金属性の素材の場合、温度差によって熱膨張を起こすこともありますから、塗布することでそれを防ぐことができます。施設そのものの寿命を長くするという点でもメリットがあるのです。
デメリット
一方、遮熱塗料には
- 扱いにくい
- 塗料の価格が高い
- 塗膜が汚れてしまうと遮熱効果が発揮しにくくなる
といったデメリットが挙げられます。
遮熱塗料は塗膜表面をきれいに保つことが、遮熱効果を発揮させるポイントです。塗布した表面に汚れが生じると、その部分が近赤外線を反射しにくくなってしまうため、遮熱効果は薄れます。しかし施工の際、ムラができることもある遮熱塗料は「扱いにくい塗料」としても知られています。
確かな効果を得るためには、遮熱塗料を扱ったことのある業者などに頼むのもひとつの手です。とはいえ、遮熱塗料の価格は一般的な塗料より高く、業者を頼むにもコストが発生します。遮熱塗料の塗布によって、コスト面で頭を悩ませることになる可能性が。
また遮熱効果は夏場には最適ですが、冬でも赤外線を反射しますから、冬場はハウス内温度を下げてしまうことも。冬が長い、冬の寒さが厳しい地域では、遮熱「塗料」ではなく、ネットやシートといった取り外し可能な資材を活用することをおすすめします。
参考文献