本記事では、農家が知っておきたい節税対策についてご紹介していきます。
青色申告控除については『持続的な農業経営のために!農家が知っておきたい節税対策①』をご覧ください。
控除を利用する(続き)
青色申告控除以外では、「小規模企業共済」「農業者年金」への加入が挙げられます。
運営元 |
制度概要 |
控除について |
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小規模企業共済 |
(独)中小企業基盤整備機構 | 小規模企業の経営者、個人事業主のための退職金制度 | 掛金は「所得控除」の対象になる |
農業者年金 |
(独)農業者年金基金 | 農業者向けの積立方式・確定拠出型年金の制度 | 保険料は「社会保険料控除」の対象になる
農業者年金として受け取った年金は「公的年金控除」の適用が可能となる |
いずれも掛金、保険料を支払うことになるため、「加入する余裕はない」と考える人も少なくないかもしれませんが、現在の節税と将来の積立への上乗せにつながります。
税制を活用する
農林水産省は農業者への税制支援(一覧表)を公開しています。さまざまな目的とそれに関連する施策の資料を見ることができます。以下に、一部抜粋したものを記載します。
農地の取得に係る特例措置
農地を取得する際には
- 登録免許税(原則、固定資産台帳に登録された資産価格に対して2%の税率)
- 不動産取得税(〃4%の税率)
がかかります。
ですが、「農用地利用集積計画を利用して、農用地区域内の農地を取得する(注:農業用施設用用地は対象外)場合」には、
- 登録免許税 税率1%に軽減
- 不動産取得税 資産価格の1/3が控除
となります。
農地の保有に係る特例措置
一般的に、土地や建物などの固定資産を保有していると、その価格に対して固定資産税が課税されます。
- 固定資産税=固定資産の評価額(課税標準額)×税率(1.4%)
「農地」はその区分ごとに「評価」と「課税」が異なります。
まず「農地」は「一般農地」と「市街化区域農地」に区分され、「市街化区域農地」はさらに区分されます。
農地 |
一般農地 |
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市街化区域農地 |
生産緑地地区内の農地 | |
一般市街化区域農地 |
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特定市街化区域農地 |
「一般農地」とは、区分される「市街化区域農地」や転用許可を受けた(農地を農地以外のものにできる)農地などを「除いた」農地のことで、農村部にある農地など、いわゆる農業をするための土地をイメージするとわかりやすいです。
「市街化区域農地」の「市街化区域」とは“すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域(出典元:農林水産省 農業関連用語)”を指します。
例えば「一般農地」と「生産緑地地区内の農地」は、農地評価と農地課税になり、冒頭の固定資産税の算出方法と異なります。
評価額 農地売買価格×55%
課税 以下①②のいずれか低い額×税率
①当該年度の農地評価額
②前年度の課税標準額(農地評価ベース)×負担調整率
農地の譲渡に係る特例措置
一般的に、農用地区域内の農地を売り、譲渡益が発生した場合には、譲渡益に対して所得税または法人税がかかります。
ですが、
- 農業委員会のあっせん
- 農地中間管理機構の事業の特例
- 農用地利用集積計画
などを活用し、地域の担い手に農地を売った場合には、譲渡益から一定額が控除されます。
節税対策の参考に!おすすめのコラム&書籍
節税に役立つ情報としてぜひ目を通してほしいのが、参考文献にも記載している「節税への近道〜持続的経営のために〜」です。
日本農業新聞 連載記事「節税への近道〜持続的経営のために〜」相続税申告相談プラザ
(↑)日本農業新聞で連載されていた記事を読むことができます。文章ではなく、新聞記事の画像が表示されるので、一見すると読みにくく感じるかもしれませんが、節税に関する内容が簡潔にまとめられているので、必要な情報を得るのにとても便利です。
また鈴木武、林田雅夫、高久悟『新 農家の税金(第19版) 』(2021年、農山漁村文化協会)もおすすめ。農業に関する税金の基本事項と、その年の税制改正などが掲載されており、第19版は令和3年分の税制改正が織り込まれています。農業の確定申告をご自身でやっている人におすすめです。
参考文献