日本農業新聞2022年6月21日の記事に「『農機盗難』首都圏6割減」とありました。
2022年1月〜5月に東京都を除く首都圏7県でトラクターなどの盗難が、前年同期より63%減ったことが分かった。
背景には、各県警の盗難グループの逮捕や農家の防犯意識の高まりが挙げられています。盗難被害が減少したとはいえ、農機盗難の被害が自分に降りかからないとは限りません。本記事では、農機の盗難を防止するためにやっておきたい対策についてご紹介していきます。
農機の盗難が起こりやすい時期、盗難の状況について
一般社団法人日本農業機械化協会がまとめたデータによると、農機の盗難件数は2月〜5月の春作業と10月〜11月の秋作業の時期に多いといわれています。農作業で使い始める時期は盗難被害に要注意です。
なお、盗難被害に遭いやすいのはトラクターです。少し古いデータではありますが、同協会の平成25年度、平成26年度のデータによると、盗難の被害に遭った農機のうち、8〜9割をトラクターが占めています。
盗難の状況は
- 格納庫から 51 台(40.5%)
- 格納庫前・敷地内から 35 台(27.8%)
- 圃場・その他から 31 台(24.6%)
- 不明 9 台(7.1%)
となっています(平成25年度のデータより)。
やっておきたい基本的な対策を紹介
まず、使用後は必ず格納庫に入れましょう。
上記盗難の状況からもわかる通り、格納庫から農機を盗まれる事例もあります。ですが、畑に置きっぱなしにするのは盗難被害に遭いやすくなるので危険です。
使用後は、施錠のできる格納庫に入れてください。そしてエンジンキーは必ず抜き、車内に置いたままにせず、持ち帰りましょう。
格納庫からの盗難被害を防ぐためにも、格納庫へのセンサー付きのライト(防犯灯)や防犯カメラ、防犯警報機器等の設置をおすすめします。また盗難グループが敷地や格納庫に侵入するのを防ぐために、倉庫のシャッター前や敷地の出入り口などにトラック等の障害物を置くことも対策になります。
農林水産省が作成した農機盗難防止チラシには、盗難防止の3つの対策
- 農地に置いて帰らない
- エンジンキーは必ず抜く
- 鍵のかかる場所に保管
を行うことで被害に遭いにくくなる分析結果が記載されています。
盗難被害を分析したところ、全被害から、1.の対策を実施すると被害が約7割に、1.と2.の対策を実施すると被害が約4割に、1.〜3.すべて実施すると被害が1割未満になるとあります。エンジンキーを抜いて、施錠できる格納庫にしまうという基本的な対策だけで、盗難防止効果があることがわかります。
また各県警が盗難防止対策として勧めているのが、自動車のハンドルやタイヤを固定する「ハンドルロック」や「タイヤロック」の活用です。「シャッターガード」も農機具倉庫を守るアイテムとしておすすめです。近年、トラクタ自身にセキュリティ機能が搭載されているものもあります。株式会社クボタのトラクタ「Slugger(スラッガー)」にはエンジン始動セキュリティ機能がついています。エンジン始動の際、パスワード認証が必要になるため、盗難防止に役立ちます。
盗難被害に対する備えとして
所有する農機の車体番号や型番、特徴を控えておきましょう。
万が一、盗難被害に遭った時に備え、農機の盗難等を保証する共済や保険等への加入もおすすめです。「農機具共済」には「農機具損害共済」と「農機具更新共済」がありますが、「農機具損害共済」の対象となる災害に、「盗難による盗取・き損」が含まれます。
盗難被害に遭った場合には、まずは速やかに最寄りの警察署等に届け出てください。
農業共済組合や保険代理店に連絡し、農協や販売店に情報を提供してください。
参考文献