農業技術を学ぶ方法はさまざまですが、効率的な方法として挙げられるのが「農家のもとでの研修」です。そしてこの農業研修の場は、日本国内のみならず、農業先進国である海外にもあります。
コロナ禍の今、残念ながら、海外での農業研修がすぐに実現できるわけではありません。ですが、興味のある方にはぜひ、海外農業研修「アグトレ」について知っていただきたいです。
海外農業研修「アグトレ」
公益社団法人 国際農業者交流協会の海外農業研修「アグトレ」は、他の国で実際の農作業に携わりながら学ぶことができるプログラムです。
他の国で学ぶ農業技術は、日本の農業技術とは異なる面が多々あるでしょう。そのため環境や考え方の違いから、日本国内で他国で学んだ技術をそのまま活かすのは難しいかもしれません。ですが「アグトレ」の公式ホームページに
今、海外で農業を学ぶ意味がある
近年は、自然環境の保護、温暖化対策、人口増加による食糧不足の懸念から、農業の課題、義務は大きくなってきています。国際間での農産物流通も重要な意味があり、気候変動による収穫高の変動、途上国の消費拡大など、他国の情勢が日本の農業に与える影響もだんだん無視できないようになってきています。
とあるように、今後、他国の情勢が日本の農業に与える影響が大きくなることが予想されます。他国で学ぶからこそ得られた技術が、今後の日本の農業に影響を与えるのでは、と期待が高まります。
「アグトレ」の研修先には
- アメリカ
- デンマーク
- ドイツ
- スイス
- オランダ
- オーストラリア
6つの農業先進国への長期滞在コースが用意されています(公式ホームページには“それ以外の国での研修もチャンスがあります”ともあります。上記6カ国以外で気になる国がある場合には相談窓口等に問い合わせるといいかもしれません)。
参加資格条件について
全研修生に共通するものと、各国別の参加資格条件があります。本記事では、簡潔にまとめていますが、参加したい人は必ず公式ホームページに記載されている参加資格条件をご確認ください。
全研修生に共通する内容をまとめると、
- 日本国籍を持つ独身男女である
- 心身共に健全である
- 明確な研修目的がある
- 外国語を学ぶ強い意欲がある
- 海外農業研修で専攻する業種について、十分な農業経験がある。または、渡航までに十分な農業経験を積むことができる(およそ2か月以上)
- 渡航までに普通自動車運転免許を持っている(AT限定はNG)
- 犯罪歴がない
- その他、各国の資格条件に該当する者である
となります。
また各コースごとの参加資格条件は以下の通りです。
生年月日 | 資格条件 | |
アメリカ | 1992年4月2日~2003年4月1日の期間内であること | ・高等学校卒業、または同等以上の学力を有する ・農業の基礎知識や経験がある |
オーストラリア | 1992年4月2日~2003年4月1日の期間内であること | ・高等学校卒業、または同等以上の学力を有する
・農業の基礎知識や経験がある ・ワーキングホリデービザの発給条件を満たす |
デンマーク | 19歳~29歳 | ・専攻業種に関する科目を大学等で2年以上履修している在学生である
・IELTS(general)のテストでband score 3.0以上である ・専攻業種の十分な農業経験を有する |
ドイツ | 19歳~30歳 | 専攻業種に関する科目を大学等で2年以上履修している在学生 または 高度農業教育を2年以上受け、卒業後、18か月以内の者 |
スイス | 19歳~29歳 | 専攻業種に関する科目を大学等で2年以上履修している在学生 または 高度農業教育※を2年以上受け、卒業後、1年が経過していない者 |
オランダ | 19歳~26歳 | 専攻業種に関する科目を履修し、学士号以上の学位が取得可能な大学の農業教育を2年以上受けている または 卒業後2年経過していない者で、基礎英会話力がある者 |
カナダ、フランス、アイルランドなど その他の国々 | 概ね18歳~30歳(要確認) | ・高等学校卒業、または同等以上の学力を有する
・農業の基礎知識や経験がある ・研修先国で日常会話が可能な語学力を有する ・研修先国のワーキングホリデービザ発給等の要件を満たす |
※農業大学校、農業専科大学、大学農学部あるいはそれに準ずる学部、専門学校等の教育機関における履修のこと。
出典元:応募資格と募集人数(海外農業研修平成30年度ガイドブック)
参加費用について
令和3年度の海外農業研修に関する費用によると、研修参加申込金はどの国であっても一律30万円、研修費は国によって異なり、合計でかかる費用は大きく見積もって約120万円〜150万円となります。
研修参加申込金 | 研修費 | 合計 | |
アメリカ | 30万円 | 98万円 | 128万円 |
オーストラリア | 30万円 | 118万円 | 148万円 |
欧州・その他の国々 | 30万円 | 〜85万円 | 〜115万円 |
これら費用には、国内講習参加費や渡航前、渡航時にかかる費用(往復航空運賃等)、事務管理費などが含まれています(海外旅行保険料は含まれていません)。また、欧州・その他の国々の研修費は、期間や研修コースの内容によって変動する場合があります。
申し込みの流れ
- プレエントリー(オンライン仮申し込み)
- 一般応募または推薦応募
- 選考または面談
プレエントリー(オンライン仮申し込み)を行うと、数日以内に(公)国際農業者交流協会のスタッフから確認の電話、またはメールが届きます。その後、メールアドレスもしくは郵送先に申込用紙が届くので、必要事項を記入します。
必要事項を記入した申込用紙を郵送します。
一般応募、ヨーロッパ・その他の国々に申し込む場合は、応募書類を(公)国際農業者交流協会宛に「各自で」送ります。
推薦応募の場合は、必要事項を記入した申込用紙を推薦してくれる都府県の担当課窓口に郵送します。推薦を受ける場合には、そのための書類審査や試験などが行われることもあるので、担当課窓口や審査、書類の有無などは事前に確認しておきましょう。
担当課窓口一覧(2021年1月現在)
アメリカ、オーストラリアの長期滞在コースに申し込んだ人は、選考会が行われます。内容は書類審査、口頭確認、英会話です。選考の合否通知は、選考会後、書面で送られます。ヨーロッパ。その他の国々へ申し込んだ場合は、面談が行われます。
コロナ禍での状況について
2021年1月14日に公開されていた最新情報をまとめます。
- アメリカコース
2021年3月の渡航は6月下旬まで延期 - オーストラリアコース
2021年3月の渡航は2022年3月まで延期 - ヨーロッパコース
各国の状況を加味しながら各研修生の意向に合わせた渡航日程を計画
気になる人はぜひ!
海外農業研修説明会は、新型コロナウイルス感染予防等のためオンラインで実施されています。Zoomアプリの準備と、事前登録申込フォームにて事前登録が必要になりますが、無料で参加することができます。海外農業研修が気になる方は、実際に研修生として海外で農業技術を学んだ人の声も掲載されている『海外農業研修平成30年度ガイドブック』に目を通したり、オンライン説明会に参加してみてください。