世界の有機農産物市場は拡大を続けています。欧州は2030年までに有機農業の面積率を25%にする目標を掲げており(From farm to fork)、デンマークや韓国の学校では有機農産物を使った給食が広まっています。
日本でも有機農産物市場は広まりつつありますが、欧州に比べるとまだまだ小さいとされています。そこで本記事では、日本の有機農産物市場の現状についてご紹介していきます。
有機農業の拡大の推進
農林水産省は、有機農業の拡大を推進しています。2021年に策定された「みどりの食料システム戦略」では、2050年までに有機農業の取り組み面積の割合を25%(100万ヘクタール)まで拡大する目標を掲げています。
農林水産省は2022年12月8日にオーガニックビレッジ全国集会を開催しました。オーガニックビレッジとは、有機農業の生産から消費までを一貫し、農業従事者だけでなく関連事業者、地域以外の住民なども含めて、地域ぐるみでの取り組みを進める市町村を指します。
農水省は2050年までの有機農業の取組面積の割合を25%まで拡大するという目標達成に向け、モデルとなる産地、オーガニックビレッジの創出への支援を進めています。
しかしその現状は、2020年で有機農業の取組面積の割合が0.6%と厳しく、目標の達成は容易ではありません。
日本の有機農業の課題
農水省が打ち出した「みどりの食料システム戦略」が動き出したことで、有機農業はますます注目を集めることになりましたが、有機こそがあたりまえという認識は、生産者にも消費者にもまだまだ足りていません。
また、日本では有機農産物の規格である有機JAS制度が2001年から導入されましたが、有機農業を実施している農家全てが有機JAS認証をとっているわけではないという現状もあります。
総合情報誌「Wedge」2023年1月号で紹介されている、埼玉県比企郡小川町の多くの有機農家の場合、少量多品目で生産しているため、品目ごとに認証をとろうとすると、事務作業などが煩雑になるため、有機JAS認証をとっていないといいます。
それでも求められる有機農業
とはいえ、今後ますます有機農業が求められることが考えられます。
たとえば昨今、グローバリゼーションの時代に終わりが見え始め、ローカルな価値を見直す時代に入りつつあります。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で海外からやってくる労働者の数が減ったこと、ロシアによるウクライナ侵攻の影響による肥料代や飼料代の高騰などから、世界各国でタネや肥料などを国内、地域内で確保する動きがあります。
有機農業に取り組む農家の事例
総合情報誌「Wedge」2023年1月号で紹介されていた茨城県龍ヶ崎市にある横田農場は徹底的な効率化で生産を行っています。
商品ラインアップを増やすために有機栽培を始めた横田農場では、減農薬、減化学肥料で生産する特別栽培も行っています。従業員と機械の数を少なくすることで最も高いコストである人件費と機械費用を削減し、その結果、1人あたり25ヘクタールを担当することになるものの、作期の異なる数種類のコメを生産することで作付けと収穫を分散させるなど、徹底した効率化でコストダウンを行っています。
記事内のインタビューでは、有機農業は慣行農業に比べると手間が増え、収量も減るが、農薬や化学肥料を使わないためコストダウンにつながり、バランスさえうまくとることができればメリットは十分ある、と答えています。
参考文献