いま一度、基本的な対策で省エネルギー化(節油)を図る!

いま一度、基本的な対策で省エネルギー化(節油)を図る!

昨今、さまざまな要因から、重油や軽油、ガソリンなどの原料となる原油の高騰が続いています。農業分野で行われている省エネルギー化(節油)は、原油の高騰だけでなく、地球温暖化対策としても行われていますが、いま一度、基本的な対策で節油を図りましょう。

 

 

原油高騰について

いま一度、基本的な対策で省エネルギー化(節油)を図る!|画像1

 

原油高騰は、地球温暖化対策である脱炭素化の動きを加速する要因にもなっています。そして直近では、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻により、世界のエネルギー価格は急上昇しています。

日本は化石燃料のほぼ全量を海外から輸入しています。2021年の資料によると、原油は中東への依存が約9割で、ロシアからは約0.4割、天然ガスは原油に比べると調達先が多角化しており、中東への依存度が約2割、ロシアからは約1割となっています。

2022年5月9日、G7=主要7か国はロシア産の石油を禁輸することで一致し、日本も原則禁輸する方針を表明しています。

ロシアへの依存度は低いものの、世界中でロシアからの輸入が止まることで原油価格が上がることへの懸念は高まっています。

 

 

節油のための基本的な対策を復習!

いま一度、基本的な対策で省エネルギー化(節油)を図る!|画像2

 

原油高騰が続けば、施設園芸等での生産コストの増大が懸念されます。コスト削減と二酸化炭素の排出削減を兼ねた節油のため、今できる対策を行いましょう。

そこで便利なのが、農林水産省の「施設園芸省エネルギー生産管理マニュアル」です。

施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル – 農林水産省

定期的な点検や清掃を!

「省エネのための機器利用技術」の中で注目したいのが「メンテナンス」です。原油を利用する機器のメンテナンスを定期的に行うことで、加温に使用する機器の熱効率を高めたり、故障などのトラブル発生リスクを抑えたりすることができます。

機器の汚れを放っておくと、熱効率が悪くなったり、消費電力が増加したりする可能性があるので、機器を長持ちさせるなら、週1回程度点検し、汚れがあればブラシなどで汚れを落としましょう。

適切な利用をしているか確認を

興味深かったのが「暖房機のメンテナンス」に記載されていた「⑤適切な燃料の使用」です。

燃油暖房機の主な燃料であるA重油は⽇本⼯業規格(JIS)により品質が規定されていますが、夏期に⽣産されたA重油を冬期に使⽤すると、セジメント(A重油中に含まれる残
炭分が析出してできる⽣成物)が増加してフィルターの⽬詰まり等を引き起こす可能性
があります。

引用元:施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル – 農林水産省 p.4

3ヶ月以上保存したA重油は使用しないことが推奨されています。長期間使わなかった重油は産業廃棄物の許可を受けた専門業者に廃棄を依頼し、利用しないようにしましょう。

燃油以外のエネルギー源を利用する機器の導入

たとえば燃油式の暖房機で発生した熱を有効利用する装置として「排熱回収装置」が挙げられます。燃油式暖房機で発生した熱のうち、排気ガスとして室外に排出されてしまう熱を回収することで、3〜5%程度の燃油削減効果が見込まれます。

省エネ機器として度々目にするのが「ヒートポンプ」です。ヒートポンプは電気等のエネルギーによって外気など低温の熱エネルギーを高温の熱エネルギーに変換し、加温できるというもの。燃油式の暖房機に比べると高価なため、全ての機器をヒートポンプに置き換えようとすると原油高騰とは異なる理由で生産コストが増大してしまいますので、複合的に利用するのが一般的です。

機器そのもの「以外」のアイテムの導入など

燃油や電気を利用して生じた熱が、温室のフィルムの破れや隙間が原因で逃げてしまうのはもったいないですよね。保温性を向上させるために、破れが隙間がないか点検すること、可能な場所は目張りをして熱を逃さないようにすることなども、節油につながります。

管理方法も節油につながる

たとえば作物の生理機能や天候に応じて、温度管理を実施するのも節油につながります。ただし節油を心がけるあまり、温度が作物の生育適温を下回ってしまうと品質の低下につながります。害虫対策として天敵資材などを利用している場合は、それら生物の活動温度も考慮する必要があります。

 

 

燃油の代替となる木質バイオマス……でも課題がいっぱい!?

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燃油に依存しない機器として挙げられるのが木質バイオマスを利用したものです。

⽊質バイオマスを利⽤した暖房機は、燃焼で発⽣する CO2が⼤気中に放出されますが、排出するのは樹⽊の時に吸収した CO2だけで、⼤気中の CO2を増加させるものではない(=カーボンニュートラル)ことから、地球温暖化対策としても有効な暖房⽅法です。

引用元:施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル – 農林水産省 p.13

燃料として薪、木質チップ、木質ペレットなどが利用されます。

燃油式の代替設備として利用できるものの、課題は多々あります。まず設定温度に達するまでに時間がかかります(燃料に着火してから安定燃焼に入るまで5分程度かかる)。それから燃料となる木質バイオマスはエネルギー量あたりの体積が大きく、燃料の運搬コストがかかることも課題です。木質バイオマスは水分を吸収しやすく、吸湿すると品質の低下につながるので保存管理にも注意が必要です。上記マニュアルには他に、

  • 木質バイオマスを利用した暖房機のサイズが大きいために生じる、設置スペースの問題
  • ⽊質バイオマス燃料が燃焼する際に生じる灰を清掃する必要性

などが挙げられています。

「地球温暖化対策としての」省エネルギー対策にはなりますが、農林水産省は「農業機械の省エネ利用マニュアル」も公開しています。

農業機械の省エネ利用マニュアル – 農林水産省

また「農林水産省地球温暖化対策計画の概要」の中では、農業機械の省エネルギー対策として

  • 自動操舵装置について普及
  • 農業機械の電化・水素化等の推進

を掲げ、2050年のカーボンニュートラルの実現に向け、農業機械の電化・水素化等を推進しています。

原油高騰がいつまで続くのか、先行きは不透明なままです。省エネ関連のマニュアルを活用して、今できる対策を行いましょう。

 

参考文献

  1. ウクライナ侵略等を踏まえた 資源・燃料政策の今後の方向性
  2. ウクライナ侵攻で「過去50年で最大の価格ショック」=世銀 – BBCニュース
  3. ウクライナ侵攻によるエネルギー高騰、アジアの脱炭素化を後押しするか – BBCニュース
  4. ロシア産石油の禁輸でどうなるの? – NHK
  5. 燃料タンクを使用する農業・漁業などの事業者の皆さんへ|南房総市ホームページ
  6. 原油高騰下の園芸 基本技術徹底で節油を/日本農業新聞
  7. [節油対策 ひと工夫]朝、夕、夜で変温管理 多段サーモ使い5%省エネ/日本農業新聞
  8. 原油の高騰に伴う施設園芸の省エネ対策について
  9. 施設園芸 省エネルギー生産管理マニュアル – 農林水産省
  10. 農林水産省地球温暖化対策計画の概要 大臣官房環境バイオマス政策課 地球環境対策室

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