日本では毎年約600万トンもの食べ物が廃棄されています。食べられるのに捨てられてしまう「食品ロス」の話題となると、「食べ残し」や「売れ残り」など、消費者の近くで起こる食品ロスの例がよく挙げられますが、生産者側でも不本意な廃棄が発生しています。
年間の食品ロス量643万トンのうち、352万トンは事業系、291万トンは家庭から出るものです。事業系のロスの原因にも「食べ残し」や「売れ残り」はありますが、事業系は主に「規格外品」や「返品」などから発生しています。
食品ロスにより
- ごみ処理にコストがかかる
- 可燃ごみとして処理することでCO2排出など、環境負荷が考えられる
- 多くの食糧を輸入に頼っているのに、食べずに廃棄するという経済的な無駄
など、さまざまな問題が発生します。
そのため家庭だけでなく事業でも、食品ロスを減らす取り組みを行う必要があります。
そこで本記事では、事業系の食品ロスの原因の一つ「規格外品」に着目しました。海外の「規格外野菜」活用事例と日本の事例を紹介していきます。
規格外野菜の現状
野菜には市場で定められた「規格」があり、それらによって「優・良・並」などと振り分けられています。
規格外野菜は、定められた規格にあてはまらないものを指します。味に違いがなくても、大きさや色や形などの定められた規格を外れれば、「規格外」として扱われます。
規格外野菜の一部はカット野菜や加工食品として流通することもありますが、そのほとんどは店頭に並ぶことなく廃棄処分されます。驚くのがその廃棄率。なんと生産量の約40%が廃棄されています!
規格化自体が悪なわけではありません。出荷や取引を簡素化したり、流通をより合理的に行うことで、どの産地のものであっても、同じように小売店に並べることができます。
ただ、消費者や小売店が商品に安心・安全・安価だけでなく、「見た目の良し悪し=商品の良し悪し」を強く求めてしまっていることが、大量の規格外品を生み出していると言っても過言ではありません。
規格外野菜を活用する海外の事例
最近よく目にするSDGs(持続可能な開発目標)の中にも、食糧廃棄の削減について目標が設定されています。
上記で、規格外野菜が廃棄される現状について紹介しましたが、食品ロスにつながる「規格外野菜」の現状を改善しようとする動きが世界各国にあります。
イギリスの場合
イギリスでは、規格外野菜をスーパーマーケットが積極的に並べ始めています。
安売り志向のスーパーでは、規格外野菜の詰め合わせを販売。中身を選ぶことはできませんが、たっぷりの野菜を安く手に入れることができます。
また高級志向なスーパーでも、規格外野菜が売り出されています。高級志向なスーパーの場合、「環境問題を考える運動」の一環として規格外野菜を宣伝。そうすることで、特級や一般規格の野菜を買う余裕のある消費者層を取り込めると考えたようです。
規格外野菜は廃棄されずに消費され、販売する側は新たな顧客を得ることができる。規格外野菜が生産者と小売業と消費者をWIN-WINの関係につなげてくれた例です。
アメリカの場合
アメリカでは「規格外野菜」を格安で販売し、自宅まで届けてくれるサービスがあります。
「Imperfect Produce(インパーフェクト・プロデュース)」は規格外野菜を農家から買い取り、スーパーで販売されている定価の30~50%引きした価格で販売しています。
生産者は規格外野菜を売ることができ、消費者は野菜を手頃な価格で手に入れられます。このサービスで消費者は、必要なものを選んで買うことも、中身がランダムなものを注文することもできるので、「買う・選ぶ楽しむ」もきちんと残されています。
フランスの場合
フランスの大手スーパー「カルフール」の事例はユニークです。出荷する野菜のサイズに対する厳しい法律に「反した」規格外野菜だけを売る、ブラックマーケット(闇市)を演出しました。
厳しすぎる規格により生産物の97%が「違法」扱いになっている現状を知ったカルフールは、生産物に関する法律改正を請願するために、「違法」な野菜を売るブラックマーケットを開催、法律改正のための署名活動を行いました(なお、この活動は、EUの法律を改正するに至りました)。
規格外野菜を活用する日本の事例
上記のような事例を見かけたことがない消費者もいるかもしれませんが、日本にも「規格外野菜」の活用事例はあります。
まずは日本全国にある道の駅や直売所で販売されている事例です。道の駅や直売所に行くと、規格外野菜が販売されているのを見ることができます。新鮮な野菜や地域ならではの特産品が安価に手に入ることから、すぐに売り切れてしまう人気商品になっていることも。
また有機野菜の通販「オイシックス」は、味も栄養価も変わらないのに廃棄される規格外野菜に着目し、規格外の商品を低価格で販売しています。
日本の大手スーパーも、規格外野菜の販売に動き始めています。例えば「規格外野菜シール」を貼った商品を販売したり、規格外野菜を使った加工食品などの商品化を進めるなどの事例があげられます。
6次産業化が推進されている昨今、生産者自ら販売してしまうのも手です。販売元を広げ、カット野菜として販売したり、飲食店向けに販売するのもいいですし、自らECサイトを開設し、訳あり品として売るのもおすすめです。
参考文献