近年、厳しい暑さが続くと思えば、長雨が降って気温が急激に下がったり、豪雨に見舞われたり、急激な天候変化があらゆる地域で見られています。そこで本記事では、比較的取り組みやすい長雨対策について紹介していきます。
長雨対策の基本
まずは長雨に対する基本的な対策をおさえておきましょう。基本を簡単にまとめると以下の通りです。
- 圃場をこまめに観察する
- 耕種的防除※を取り入れ、病害が発生しにくい環境を作る
- 圃場が滞水しやすい場合は、明きょや暗きょなどを点検・整備し、速やかに排水されるよう整える
※耕種的防除とは、発病に好適な環境条件を排除することにより、病害の発生を抑制する
技術である。これには圃場衛生、栽培方法、肥培管理、湿度・土壌水分管理など多くの技
術が含まれる。引用元:8-2. 耕種的防除 – 奈良県
野菜の場合は、長雨と日照不足による養分が不足したり、土壌が過湿になったりすることで、草勢の低下や病害が発生しやすくなります。病害の防除は、草勢が低下している時に行うと薬害が起こりやすいので、まずは肥料を葉面散布するなどして、草勢の回復をはかります。また農薬等の防除は、気温の高い時間帯に行うと黄化などの薬害が発生しやすいので、気温の低い時間帯におこないます。
果菜類では、不良果を中心に間引いて、着果負担を軽減します。
長雨が原因で作物が病害虫被害を受けてしまった場合、発病した葉や果実などが伝染源となり、圃場全体に被害が広がる可能性が高まるので、発病した葉や果実などは見つかった段階で取り除き、圃場の外で処分しましょう。
長雨対策①雨よけを設置する
単純に思えるかもしれませんが、雨が直接当たらないよう雨よけを設置するのは効果的な方法です。泥はね防止も合わせて行いましょう。
- 畝にマルチフィルムを張る(泥はね防止)
- トンネル用支柱を設置する
- 2.の天井部分にビニール資材をかぶせる
この際、トンネル内が過湿になるのを避けるために、ビニール資材を被せるのは天井部分だけにします。開口部や両脇を開けておくと、風通しがよくなります。
もし、害虫がつきやすい作物や周辺に害虫が多く見られる場合には、トンネル全体を防虫ネットで覆い、天井だけビニールをかければ、風通しもよく、雨よけにもなり、害虫防除も叶う状態にできます。
長雨対策②長雨の時期に合わせて高畝を作る
『野菜だより 2021 9月[秋号]』(2021年8月3日、株式会社ブティック社)にユニークな対策法が紹介されていました。この方法は長雨が降ると水が引きにくい畑に効果的です。その対策法は「まずは普段通りの畝で野菜を育て、長雨や台風の時期が近づいてくる頃に高畝に仕立て直す」という方法です。
高畝に仕立て直す方法は、通路部分を掘り下げることで20cm以上の高畝にするというシンプルなもの。こうすれば、その時期がきても、畝の水没や畑が過湿状態になるのを避けることができます。
長雨の季節が近づいてきたら、長雨対策の基本を押さえた上で、雨よけの設置や高畝にする方法を試してみてください。
参考文献
- 長雨・日照不足に対する農作物等の技術対策について(第3報)
- 家庭菜園誌 野菜だより 2021 9月[秋号]、2021年8月3日、株式会社ブティック社