突然ですが「昆虫」についてどのようなイメージが湧きますか?
農業分野で「昆虫」といえば、農作物を荒らす害虫や、それを食べてくれる益虫などの存在が浮かぶのではないでしょうか。しかし今回着目する「昆虫」につながるキーワードは「食糧危機問題」です。
現在の日本は人口減少が課題となっていますが、世界全体で見ると人口増加が問題視されています。なぜ問題視されているかというと、人口に対する食糧が足りなくなる可能性が高まっているからです。そしてそんな食糧危機問題の解決策のひとつとして「昆虫」に注目が集まっています。
昆虫食に注目が高まる
世界の巨大食品生産企業が、動物用飼料や人間用の食料として、代替タンパク質となる昆虫に注目しています。
例えば「エンテッラ・フィード」は昆虫養殖企業です。ミズアブの幼虫を利用して、魚などの飼料をつくっており、今後はペットフードの生産を予定しています。幼虫は、炙って乾燥させ、袋詰めにする場合もあれば、圧搾・粉砕し粉状にして使用する場合もあります。
有名ファストフードチェーン「マクドナルド」も、養鶏飼料の大豆タンパク代替品として昆虫を活用する研究を行なっています。
人口増加により、1人あたりの肉消費量は過去50年で50%増加したと言われています。
これにより、人に必要な栄養であるタンパク質の供給源が圧迫される可能性が高まっています。
例えば食肉需要が拡大すると、食肉を育てるための飼料の量は、食肉量を上回る必要があります。1ポンド(約0.45kg)の鶏肉には、約2ポンド(約0.9kg)の飼料が必要になるのです。
そこで昆虫の出番です。飼料に含まれるタンパク源を昆虫に置き換えることで、資源が節約されることが訴えられています。もちろん、我々が直に昆虫を消費することを提唱する栄養学者や科学者もいます。
昆虫食メリット・デメリット
もしも重要なタンパク源として、私たちが直接昆虫を食べることになったときのメリット・デメリットをご紹介します。
メリット
・タンパク質含有量が肉や魚より豊富
・他の栄養分も豊富に含まれる
・安価
・環境に優しい
・環境適応力が高く、どのような場所でも飼育がしやすい
ダイヤモンドオンライン「『昆虫食』は栄養価の高さで食料資源不足を救うか」では、「昆虫食の栄養価などの研究データはまだほとんどないのが現状だが、多くの昆虫でタンパク質が乾燥重量の50%以上あり、良質な食品である」ことが記されています。良質な食品であり、かつ鶏や豚など代表的な家畜類に比べて、水を必要とせず低コストで育てられるとなれば、こんなに効率のよい食物はないと言えるでしょう。昆虫自体の種類も多く、繁殖力も高い、人の食料と昆虫のエサが競合しないという点もメリットとして挙げられています。
デメリット
・野生の昆虫を捕獲する=乱獲につながる→環境にどのような影響を及ぼすかわからない・昆虫のエサとなる穀物が大量に必要になる→持続可能性があるとは言えない
・食べる時の見た目の問題、嫌悪感
昆虫食の持続可能性がメリットとして謳われていますが、元となる昆虫を手にする際、野生種を捕獲することがどのように環境に影響するのかあまりわかっていません。
また人の食料と競合しないとはいえ、大量に昆虫を生産する場合、昆虫のエサも大量に用意する必要があります。エサづくりに大量の原材料が必要になるのは本末転倒なのではないかという声もあがっています。
そしてやはり「見た目」や「味」がデメリットとして挙げられます。
昆虫食が文化的に根付いている場所であれば問題のないことですが、抵抗がある人も少なくないでしょう。粉砕し、「見た目」をクリアしてもなお、昆虫が含まれることに抵抗を感じ、食べたくないと思う人がいるのも事実です。
実は身近な昆虫食
食べることに嫌悪感を抱く人も少なくない昆虫ですが、実は身近に存在しています。
恐らく口にした人も多いのではないでしょうか。天然着色料「コチニール」を聞いたことはありませんか。赤色の色素で、カニかまぼこや、赤色のお菓子などに含まれています。これはサボテンに寄生するカイガラムシと呼ばれる「昆虫」を使った色素です。
また日本でも昆虫食の文化がある地域はあります。かなり古い資料ではありますが、1919年に行われた調査では、ハチやガなど全部で55種類の昆虫が食用とされており、47都道府県で昆虫が食べられていたという報告があります。
今でも「イナゴの佃煮」や「蜂の子」などを耳にする人も多いでしょう。
昆虫農業は世界を救う?!
世界的に見ると人口は増加傾向にあり、食料がそれに追いつかない現状が予想されています。現在地球にある農地の70%が家畜生産のために使われています。
しかしこれは家畜を育てるだけでなく、家畜が大きくなるための飼料、流通のための土地も含まれている数です。今後人口増加に伴い、生産量を増やそうとしても、これ以上農地を広げることはあまり現実的とは言えないですよね。
「昆虫農業」はそんな世界の危機を救うものになるかもしれません。直接虫を食べることに抵抗があっても、家畜飼料として昆虫が利用されれば、野山を切り開き広大な農地を増築する必要はなくなります。もしかすると今後は「味」にも品種改良が加えられ、美味しい昆虫が登場するかもしれません。新しい農業のかたちとして、今後の発展が楽しみです。
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