インバウンド向け農産物とは。新たな販路としてのインバウンド需要に注目

インバウンド向け農産物とは。新たな販路としてのインバウンド需要に注目

近年、インバウンド需要が急速に増加しています。インバウンドとは、外国人が旅行で日本を訪れることやその旅行客を指します。2018年には年間3119万人が訪日し、特にアジアからの旅行者が多数を占めています。彼らは日本食や自然・景観地を楽しみ、これらの体験を次回の訪日でも再び体験したいと考えていることが調査でも明らかになっています。

このインバウンド需要は、日本の農業における新たな販路として注目されています。国内市場が縮小する中、日本農業の成長には海外市場へのアプローチが不可欠とされており、そのためには輸出だけでなく、インバウンド需要やインバウンドツーリズム(訪日外国人旅行、日本へ旅行に来る外国人による観光活動全般を指す)も大きな役割を果たします。

日本政府は訪日外国人数や旅行消費額の目標を掲げており、たとえば2020年には訪日外国人数4,000万人、旅行消費額8兆円超えを目標としていました。旅行消費額のうち、飲食費が20%を占めており、そこで日本の農産物の消費拡大も期待されています。

 

 

インバウンドに人気な日本の食

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ちなみに、訪日外国人に人気な日本の食にはどんなものがあるのでしょうか。外国人が日本に旅行した時に食べたいものについて書いたブログ(参照サイトに記載)をいくつか検索してみたところ、こんな食べ物が取り上げられていました。

  • ラーメン
  • 寿司
  • 天ぷら
  • とんかつ
  • そば・うどん
  • 牛丼
  • 自動販売機で買えるもの
  • コンビニの食品(サンドイッチ、スナック菓子など)
  • 屋台で買える食べ物
  • キャラクターカフェ
  • 懐石料理 など

そのほか、日本の朝食文化やさまざまなおかずが少量ずつ提供されるスタイルに注目する人もいました。

インバウンドに人気な農産物

ブログには、ミカンやサクランボなど季節ごとの特産品が市場に並ぶ光景が新鮮で魅力的だったという反応も。

日本の農産物は訪日外国人に高く評価されています。日本産農産物の品質や食味の高さは絶賛されており、和牛や緑茶、米、ブドウ、イチゴ、メロンなどが人気の品目としてあげられます。日本農業新聞の調査によると、特に抹茶や米が高い評価を得ており、抹茶は「抹茶フレーバーでない本物は日本にしかない」「日本にしかない独特な風味が面白い」、米は「短粒種が珍しい。品質が高くておいしい」といった声があげられています。

これらの農産物は、日本の食文化を体験する上で欠かせない要素となり、インバウンド需要の拡大に寄与しています。高品質な農産物を海外市場に広めることは、日本農業にとって重要な成長機会となります。

また「日常食」への関心も増加しています。訪日外国人が観光地だけでなく、スーパーや直売所などの小売店舗に足を運び、果物や惣菜など、手軽に食べられる商品を購入する姿が見られています。

特に生鮮果実が人気を博していることから、総合スーパー「イオンリテール」(千葉県)では免税対応を進めたり、店舗内で多言語のPOPを展開して日本産の果物をアピールしたりといった対応を強化しています。

インバウンド需要の高まりを受けて、対応を強化しているのは都市部のスーパーだけではありません。JA紀の里(和歌山県)の直売所では、英語や中国語のPOPを掲げて外国人客に対応しており、訪日外国人に向けて接客に工夫を凝らすことで売上の増加につなげています。

 

 

消費促進の一つとして注目される「個人携行輸出」

インバウンド向け農産物とは。新たな販路としてのインバウンド需要に注目|画像2

 

さらに、インバウンドツーリズムによる消費促進の一つが「個人携行輸出」です。

これは、訪日外国人が帰国する際、日本で購入した農産物を自ら持ち帰るといったもの。これは鮮度が重要な農産物の輸出に大きな効果があります。個人携行輸出は複雑な流通を経ることなく短期間で農産物を持ち帰ることになるため、鮮度を保ちつつ、輸送費の高騰も回避できます。

このシステムは、農水省の支援のもと、ICTを活用して簡便化されました。

【参照サイト】個人携行輸出を促進する生産・流通システムの構築

訪日外国人が1人あたり2,500円分の農産物を購入すれば、輸出額が1,000億円を押し上げるといった効果も期待されています。

このように、インバウンド需要は日本農業にとって新たな成長機会を提供し、農産物輸出の隠れた推進力となっています。

 

参考文献

  • 三輪泰史『図解よくわかるスマート農業-デジタル化が実現する儲かる農業-』(日刊工業新聞社、2020年)
  • 八木宏典『図解知識ゼロからの現代農業入門 最新版』(家の光協会、2019年)

参照サイト

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