農作物の販路の一つである直接販売を行う際、販売する側が商品を選んで提供する「おまかせ」セットの販売を考える人は少なくないはずです。確かに「おまかせ」セットの販売は販売する側、特に小規模農業を行う人にとってはメリットがありますが、ただやみくもに商品を詰め込めば売れる、というものでもありません。
そこで本記事では、小規模農業に取り組む人が直販する際に取り入れやすい「おまかせ」セットの「売れる」工夫について紹介していきます。
「おまかせ」で販売するメリット
一人〜少人数で農業を行っている人の場合、農作業や出荷作業を手伝う人がいない、または少ない状況に置かれるかと思います。「おまかせ」で販売すれば、販売する側が商品を選択することができるので、商品を選んだり梱包したりといった出荷作業にかかる負担が減ります。また、ある野菜が不作だったとしても、他の野菜でセットを組んで販売を続けることができます。
「売れる」セットにするための工夫
畑の都合で送ることができる「おまかせ」セットは、こちらが選んだ商品を気に入ってくれたお客さんが取引相手になることもあり、販路先として心強く感じられることでしょう。
ただし当たり前のことですが、「おまかせ」セットが売れなければ取引は続きません。
『農業ビジネスベジ 2021 vol.32 冬号』(2021年2月、イカロス出版)に掲載されていた記事では、一人で生産から販売までを切り盛りしている都市近郊の直販農家と直販ECサイト2社が、売れる商品について触れていましたが、そこには共通点がありました。
売れるための工夫として力を入れるべき項目は、商品選定と値付けです。
商品選定
売れる「おまかせ」セットの特徴として挙げられていたものの共通点は、普段使いの野菜に1〜2割少し変わった野菜を加えるというものです。
取引をする相手の中には、高価なものや希少なものを求める、こだわりをもったレストランなども挙げられるかと思いますが、ここではほとんどが一般消費者であるとします。
となると、高価なものや珍しい分、料理にどう使えばよいか分からないもの「だけ」のセットは、一般消費者には手が届きにくく、扱いにくいものとなり、簡単には売れません。ですが、スーパーでは手に入りにくい、直販だからこそ購入できるようなちょっと高価なものや珍しいものは人気がないわけではありません。
それをふまえて、普段使いしやすい野菜の中に1〜2割珍しい野菜を加えると、一般消費者の関心を引くようです。
実際に上記のような組み合わせでセット販売する際、珍しい野菜の調理がしやすいよう、おすすめの食べ方や調理方法などを伝えるよう心がけましょう。対面で販売する際には一言添えて、送る場合には珍しい野菜に関する説明書きを添えて送ってみてください。
値付け
一般消費者が購入しやすい「おまかせ」セットの平均販売単価は、野菜だけのセットであれば2,000〜2,500円です。
ただ、実際に値付けを行う際は、ここで挙げた平均販売単価だけでなく、一般的な野菜の相場や販売したい消費者層がどのような購買行動をとっているのかなどを考え、「自分の商品が売れる価格帯」を探ることが大切です。
参考文献:『農業ビジネスベジ 2021 Vol.32 冬号』(2021年2月、イカロス出版)