地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは

地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは

 

近年、猛暑日や暖冬などの異常気象が世界各国で観測されています。異常気象や気候変動について理解を深めていくと、おのずと地球温暖化の問題が目に入ることでしょう。地球温暖化は、世界各国が意識しなければならない環境問題のひとつです。これらの問題は、人の生活に悪影響をもたらします。農業分野においても、農作物がうまく育たなくなる原因となりますから、問題を無視することはできません。

 

 

地球温暖化問題の現状

【地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは|画像1】

 

1880年から2012年までの間に、世界の平均地上気温は、陸と海上を合わせて0.85℃上昇しています。0.85℃と聞いただけでは、大した温度変化に感じられないかもしれません。しかし1880年に地上気温の観測がはじまってからというもの、地上気温は上昇傾向にあり、2015年には過去最高気温を記録するまでになりました。

もしもこのまま温暖化対策をとらず、上昇を食い止めることができなければ、2081年~2100年頃には2.6℃~4.8℃に上昇すると言われています(なお温暖化対策をとったとしても0.3℃~1.7℃上昇すると言われています)。

また地球温暖化の原因と呼ばれる二酸化炭素排出量についてですが、日本は世界第5位の排出国です。

※世界の二酸化炭素排出量ランキング

  1. 中国
  2. アメリカ
  3. インド
  4. ロシア
  5. 日本(世界全体の約3.5%を排出)

ランキング上位の国と比べると、日本は国土が小さい割には大量の二酸化炭素を排出しているということになります。環境問題を意識するうえではあまり好ましくありませんね。

 

 

地球温暖化による農作物への影響

【地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは|画像2】

 

地球温暖化の影響は、人の生活だけでなく農作物へも大きな悪影響を及ぼします。地球温暖化がもたらす農作物への影響として将来起こりうるものの例としては、

  • 気温上昇により水稲の収量が変化
    北海道での収穫量は増加するが、東北以南での収量は減少が予想される
  • リンゴの栽培適地が北上する
    北海道のほぼ全域が適地となるが、関東以南では適地外となる
  • ウンシュウミカンの栽培適地が拡大する
    西南暖地沿岸域が適地のミカンは、南東北沿岸部まで適地を拡大する

気温が上昇することで、その地域特有の農作物が、その地域”以外”の特産品となる可能性が考えられます。

 

 

高温耐性の稲について

【地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは|画像3】

 

農作物の生育や栽培適地に大きな影響を及ぼす地球温暖化。日本農業新聞によると、日本政府は地球温暖化による農作物被害を軽減するために「気候変動適応計画」を閣議決定したとあります。この計画では、地球温暖化による影響を受けにくい高温耐性品種の開発、普及、また果樹では気温変化による影響を受けにくい優良着色系統の導入を進めることが目的です。

特に水稲は、高温耐性種や温暖化により発生増加が予想されるイネ特有の病害軽減技術の開発めどを2019年に設定するなど、開発が急がれているようです。

稲は、出穂から成熟期まで(登熟期)の気温が適温を超え高温になることで、品質や作柄、収量が低下してしまいます。もちろん品質や収量への影響は、品質によって差があります。そのため高温耐性がある品種改良は1990年代末ごろから実施されてきました。しかし近年、高温耐性種である「ヒノヒカリ」の作柄低下が頻発していることから、それに代わる新しい高温耐性種の開発が進んでいます。

例えば「元気つくし」と呼ばれる品種は、高温登熟性が強いだけでなく、出穂期と成熟期が「ヒノヒカリ」よりも6~10日程度早い、早生という特徴があります。

 

 

地球温暖化に対する農業の課題と展望

【地球温暖化の現状と高温耐性稲をはじめとする地球温暖化への対策とは|画像4】

 

高温耐性の水稲開発が進んでいることを紹介しました。地球温暖化によって農作物がうける被害を軽減するためには、高温耐性品種の開発や農業技術開発を進めていく必要があると言えます。

農作物がうける影響に注目するだけでなく、ハウスを用いた施設園芸等では、野菜の生育を管理するための栽培装置や冷房システムなどを省エネ化し、地球温暖化の原因のひとつである温室効果ガスの発生を少なくするような技術開発も進められています。施設園芸で利用する装置等々を意識するだけでも、農業分野から発生する地球温暖化の原因を軽減することができるので、地球環境にやさしい農業に意識を向けていきたいものです。

また高温耐性種の開発からも分かるように、徐々に変化していく環境に適応することもできるとわかります。少し極端にポジティブな考え方かもしれませんが、地上気温の上昇によって、施設栽培のハウス内部をより高温にすることで、日本では育てにくい熱帯地域の農作物を栽培できるのでは?という意見もあります。この考え方そのものが、地球温暖化への適応策にも感じますね。

とはいえ、地球環境における問題は、解決するのに膨大な時間がかかります。長い年月をかけて上昇してきた気温を一気に下げることは、現実的な話ではありません。そのため農業に従事している人には、ご自身の農作物が地球温暖化等で影響を受けたとき、農作物に対する適応策をとりつつ、どうすれば地球温暖化問題を解決できる行動が起こせるか、考えていただけると幸いです。

 

参考文献

  1. 地球温暖化の現状 COOL CHOICE
  2. 日本の現状 全国地球温暖化防止活動推進センター
  3. 地球温暖化が農林水産業に与える影響と対策
  4. 温暖化「適応計画」決定 高温でも育つ稲開発 政府 日本農業新聞
  5. 高温に強い品種(西日本向けの品種を中心に)みんなの農業広場
  6. 高温条件下でも玄米品質が優れる極良食味水稲新品種「元気つくし」 農業温暖化ネット
  7. 地球温暖化が日本の農業に与える影響 新電力ネット

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