「日本の食料自給率が低い」という話題を耳にしたことはありませんか?
食料自給率とは、国内における食料消費が、国産のものでどれだけまかなえているかを示す指標として挙げられています。2017年度の日本の食品自給率は38%という低い数値が発表されました。
が、実はこの数値、食品自給率を算出するための基準によって低く算出されているのではないか?と言われています。日本の食料自給率は主に、熱量で換算するカロリーベースだと言われています。本記事では、日本の食料自給率がカロリーベースになっている理由について調べてみました。
日本の食料自給率とは
日本の食料自給率は、供給熱量(カロリー)ベースと生産額ベースの方法で算出されています。カロリーベースの場合、「日本食品標準成分表2015」に基づき、重量をカロリーに換算し、各品目ごとに算出しています。
カロリーベースとは
カロリーベースは「食料のカロリー」で計算しているということを表しています。もし「食料の重さ」で計算しているのであれば「トンベース」、「食料の個数」なら「個数ベース」というわけです。
カロリーベースに対する指摘
日本の食料自給率は、畜産物において「輸入飼料を使って生産されたものは国産として算入されない」とあります。どういうことか卵を例に考えてみましょう。
カロリーベースの場合、卵のカロリーを算出するわけですが、その卵を産んだ鶏の餌に輸入品が50%混ざっていたとします。となると、”輸入飼料を使って生産されたものは国産として算入されない”が適用され、卵のカロリーが1/2の数値となります。これが個数やトンベースで自給率100%だったとしても、カロリーベースで換算するだけで食料自給率は低くなります。
そう、国産と見なされないことで、消費が増えても自給率が下がるという構図が出来上がるのです。そのためカロリーベースに対する指摘や疑問の声が上がっているというわけです。
なぜ日本の食料自給率はカロリーベースなのか
食料自給率は
- 重量で計算する方法
- 生産金額で計算する方法
- 消費カロリーで計算する方法
とさまざまな方法で算出することができます。
結論から言うと、なぜ日本はカロリーベースで算出しているのかについて具体的に説明している資料を得ることはできませんでした。
しかし「農業経営者2008年10月号」に興味深い記事を見つけました。
その記事によると「そもそも食料自給率を計算しているのは日本だけだ」と書かれています。比較対象として記載されている主要先進国の自給率は、FAO統計(世界の食料・農林水産業に関するオンライン統計データベース)から導き出されており、計算根拠は未公開だと言われています。
なお経済価値を重視する場合には、生産額ベースで算出します。カロリーベースで算出すると生産費用や労働力を正当に評価しにくいからです。野菜や果実と米やイモを比べると理解しやすいです。同じ重量やコストでみたとき、野菜や果実のほうが米やイモに比べると低カロリーになってしまいますよね。生産背景が見えにくい場合には、生産額ベースで算出したほうが分かりやすいのです。
もしカロリーベースで算出されている理由が「分かりやすさ」なのだとすれば、納得しやすいかもしれません。食べることは生きること、健康の維持に必要不可欠ですよね。その生きるために必要なエネルギーをどのくらい国がまかなえているかを算出するためなのだとしたら、納得できるかもしれません。
さまざまな算出方法がありますが、どのような観点から自給率を算出したいかによって使い分けることができます。カロリーベースについて疑問視する声もあるようですが、食料自給率への関心を生み出すためには効果的な算出方法なのかもしれません。食料自給率の数値がきっかけで、食に関するあらゆる課題への関心が高まるといいですね。