近年、局地的で突発的な集中豪雨が多発しています。集中豪雨を要因とする湿害の発生も多く見受けられます。集中豪雨から田畑を守るためにも、ほ場の排水対策が欠かせません。
本記事では、地表からの排水対策を基本として、水はけのよいほ場にするためにやっておきたいことをご紹介していきます。
地表からの排水対策
ほ場が冠水してしまうと、農作物が大きな被害を受けてしまいます。地下での水の移動は非常にゆっくりしているので、まずは地表からの排水がほ場の排水対策において重要です。
地表排水のポイントは「明渠の設置」「高畝栽培」「ほ場の傾斜」の3つです。
明渠の設置
明渠とは
地上に出ている部分を開け放した水路。主に排水を目的とし、圃場の過剰に含まれている水分を暗渠(あんきょ)で集め、農業用水路に排出する水路として使われる。水田を繋ぐための用水路や、洪水を防ぐための放水路に明渠が多い。明渠は別名、開渠と呼ばれる。
という意味です。
明渠の基本となるのは「額縁明渠」と呼ばれるもので、これはほ場の周囲に沿って20〜30cmの深さに溝を掘るものです。この額縁明渠を基本として、ほ場の広さや土質(粘土、シルト、砂、礫)などに応じてほ場内を貫く形の「ほ場内明渠」を設置したり、排水条件が悪い場合にはほ場内に適宜排水溝を設けたりすることで、効果的に排水できます。
地表排水は排水の約7割以上を占めるとされており、地下排水が難しい場合には明渠の設置のみでも十分な排水効果が得られたという事例もあることから、明渠の設置がいかに重要であるかが分かります。
畝立てや播種などの作業を円滑に進めるため、額縁明渠は前作が終わったらすぐに行うことが推奨されています。また降雨などの影響で明渠が崩れた場合には、すぐに修繕を行います。
高畝栽培
水はけの悪いほ場では排水性のよい根域を確保するために畝立てを行います。畝間と額縁明渠を確実につなぐことで、畝間の湛水をすぐに取り除くことができます。
ほ場の傾斜
ほ場に凹凸があり、用水路側の高さが排水路側よりも低い場合は、ほ場をならして平らにするレーザーレベラーを用いてほ場全体に傾斜をつけることで、地表排水を良くすることができます。
地下からの排水対策
地下からの排水対策には暗渠排水と心土破砕が挙げられます。
暗渠排水は「土壌中の過剰な水分を土中に埋設した管に集め排水路に排除する方法」で、本暗渠と補助暗渠があります(出典元:暗渠排水 – ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA)。
本暗渠は「地表残留水の排除及び地下水位の低下を図る目的の給水管と、排水の流入を容易にし、かつ、その持続性を図るための疏水材」からなる構造をしており、多くの本暗渠は公共事業等で整備されています(出典元:あんきょ – 暗渠排水についての豆知識)。“疏水材”はモミガラなどの透水性資材が用いられます。
しかし敷設後、時間の経過によって疏水材が劣化し、渠構内に泥が入り込むと本暗渠の排水性は低下していきます。その場合には、本暗渠の排水性を維持するために、暗渠の真上を採掘して疏水材を追加充填することで排水性の維持を図ることができます。
補助暗渠は、農家が営農作業として簡便に整備できる地下排水対策です。排水効果を高めるため、本暗渠に直交した方向に施工する場合が多いです。
補助暗渠の種類と施工方法は多岐に渡ります。
農林水産省の資料「26.補助暗渠の種類と施工」に補助暗渠の詳細が紹介されています。
心土破砕は「作土の下にある盤層や心土など水の浸透に妨げになる層を破砕し,浸透を増やすことによって排水を促進する方法」です(出典元:暗渠排水 – ルーラル電子図書館―農業技術事典 NAROPEDIA)。
縦穴排水も効果的
農業情報誌『現代農業』でも特集されていましたが、「縦穴排水」にも注目が集まっています。縦穴排水は耕盤層ができたことによる排水不良に効果を発揮します。これはほ場に垂直方向に直径10cm程度の穴を深さ50〜60cmまで掘ることで耕盤層を壊し、排水性を向上させる方法です。水が溜まりやすい場所に1カ所掘るだけでも効果を発揮します。
排水対策作業時の転倒事故に注意!
明渠や、暗渠の疎水材が経年劣化して腐食するなどして生じる地中の空洞は、農業機械等の転倒につながる可能性があります。作業を行う際は、作業機の経路を確認や農業機械が十分旋回できる場所の確保など、転倒事故防止に努めましょう。
参考文献