ほ場に生える雑草を取り除くために利用される草刈機にはさまざまな種類があります。本記事では代表的な草刈機の特徴と草刈機を使用する際の注意点について紹介していきます。
なお、下記に登場する用語「モア」とは、英語で「mower」と表し、「草刈機」「芝刈機」を指します。本記事で紹介するモアは「刈払機」以外の草刈機を指します。
ちなみに草刈機と刈払機の明確な区別はなされておらず、用途は草刈機と同一ですが、草刈機よりも刈り取る範囲が狭いものと考えることができます。少なくとも人が乗って動かす搭乗型のものを刈払機と呼ぶことはありません。
代表的な草刈機
乗用モア
果樹園などでよく用いられる、乗用型の草刈機です。人が乗り込み、ハンドルで方向を操作しながら、座席の下にある刃で草を刈っていきます。
人が乗り込む形をしていますが、基本的には公道で走ることはできません。ただし、一部の乗用モアには小型特殊自動車に区分されるものもあります。このタイプの乗用モアであれば、“小型特殊免許”を取得することで公道を走ることができます。
トラクタ用モア
走行以外の目的でエンジンの動力を使用する際に用いられるPTOで草を刈ります。
PTOとは「パワー・テイク・オフ」の略で、農耕用トラクターや耕転機など作業用装置を備えた車両において、エンジン動力を作業用装置の動力として取り出すための機構のことです。
草刈りを行う部分がトラクタより外にせり出しているタイプであれば、より広い刈り幅で刈ることができますし、リーチが長いタイプであれば、道路から離れた畦畔の草刈りも可能になります。ただし、リーチが長いタイプはバランスを取るためにトラクタの重量が必要になります。
自走式モア
おもに平地用の機種で、場所に合わせてさまざまな形状があります。肩掛け式の刈払機に近い形状のものもあります。
リモコン式モア
比較的新しいタイプの草刈機です。リモコン式にもさまざまな種類がありますが、走行部と草刈部に違いがあります。
走行部はクローラ(キャタピラ)式と車輪式に分類されます。クローラ式は走破性や傾斜地への適応性が高いのが特徴です。車輪式はクローラ式より安価に購入できます。傾斜地へ対応するため、タイヤ表面の凹凸やタイヤの種類で横滑りしないよう対策されている機種が多いです。
草刈部は刈り刃が走行部の間、すなわち機体の下にあるものと、機体前方にあるものに分類されます。機体下に草刈部があるものは後進でも草を刈ることができます。作業効率を上げたい人におすすめです。一方機体前方に草刈部があるものは法面の端で旋回する必要がありますが、走行部より前に草刈部があることで刈り取られていない雑草を踏みにくく、刈り残しが発生しにくいメリットがあります。
草刈機使用時の注意点
ほ場の広さや雑草の生え具合によって、ほ場に合ったものを選びたいところですが、いずれの草刈機を選ぶ場合も、安全に利用できるよう注意が必要です。
最後に草刈機の使用により発生した事故の事例を紹介します。
草刈機の使用により発生しやすい事故には
- 前進中の機械の横転、人の転落
- 前進中の機械本体との接触・巻き込まれ
- 後進中の構造物との接触
などがあげられます。
農業機械の事故事例を調べてみると、草刈機使用中の痛ましい事故の事例を知ることができます。たとえば自走式モアで作業中、電気柵を気にする一方で後方への注意が疎かになり、後ろに下がった際に草刈機とともに5m程下の川に転落し、左大腿骨を折る重傷を負った事例もあれば、作業中に自走式モアが溝に引っ掛かり、刃を回転させたまま引き上げたところ、後方に転倒し、刃に足を巻き込まれ、右足膝下を切断した事例もあります。
対策としては、作業時に適切な保護具を着用することで事故の軽減化を図ったり、刃が引っかかるなどの事態に対応する際には必ずエンジンを切ること、傾斜や段差のある場所ではできる限り後方移動を避けたり、作業を行わない選択をすることなどがあげられます。
作業中の集中力をきらさないためにこまめな休憩をとったり、複数人で作業を行ったりすることも重要です。
関連記事:草刈りの省力化を図るアイデア3選。草刈りロボット、大鎌活用、酢の力!
参考文献
- 草刈機について徹底解説します!|モア編 – ノウキナビブログ|今すぐ役立つ農業ハウツーや農機情報をお届け中!
- パンフレット(農業事故明日は我が身、我が家族、我が仲間楽しく農業を続けるために農作業時の安全対策について考えてみませんか)
- 農作業による健康障害 特に農作業事故と農業中毒
- 地域ごとの事故事例から学び、機械、環境、作業を 安全側に「変える」=効果のある対策
『現代農業 2022年8月号』p.84〜89(農文協、2022年)