輸入肥料・飼料高騰の打破に期待高まる「耕畜連携」について

輸入肥料・飼料高騰の打破に期待高まる「耕畜連携」について

ウクライナ危機や円安の影響を受け、輸入肥料や飼料の高騰が続いています。それに加え、近年では農業の環境負荷低減も求められる中、注目を集めているのが「耕畜連携」の取り組みです。

 

 

耕畜連携とは

輸入肥料・飼料高騰の打破に期待高まる「耕畜連携」について|画像1

 

耕畜連携とは「米や野菜等を生産している耕種農家へ畜産農家から堆肥を供給したり,逆に転作田等で飼料作物を生産し,畜産農家の家畜の飼料として供給する等,耕種サイドと畜産サイドの連携を図ること」です(引用元:耕畜連携とは | 広島県)。

耕畜連携のメリット

畜産農家から供給される堆肥は、高騰が続く輸入肥料の代替となります。耕種農家が生産した飼料作物もまた、輸入飼料の代替となり、年々需要が減っている主食用米の作付け転換にもつながります。また飼料と堆肥を循環させることは、環境負荷軽減にもつながります。

耕畜連携の課題

地域資源を有効活用できるのが耕畜連携の利点といえますが、畜産農家と耕種農家の生産が盛んな地域が点在していると連携が取りづらいという課題もあります。効率的に地域資源を活用するためには、まず、その地域での飼料作物や堆肥の需要を把握する必要があります。そして畜産農家、耕種農家の双方にメリットが生じるよう、資材の価格や配送にかかる費用など、連携を行う上で必要な情報を公開することも重要です。

 

 

耕畜連携で取り入れられている作物、堆肥について

輸入肥料・飼料高騰の打破に期待高まる「耕畜連携」について|画像2

 

飼料用稲

代表的な発酵粗飼料(ホールクロップサイレージ、WCS)用稲の品種には「クサノホシ」「ホシアオバ」「たちすずか」が挙げられます。飼料用稲を栽培する際は、主食用米の転作田を水田として利用できます。

WCS用大豆

2023年1月4日に公開された日本農業新聞の記事で紹介されている、岩手県雫石町・中屋敷ファームの事例では、WCS用大豆の栽培が行われています。WCS用大豆は、国産の飼料用作物だけでは不足しがちなタンパク資源となります。同記事によると、WCS用大豆を農家が栽培するのは全国的にも珍しいとありますが、輸入飼料の高騰が続き、国内供給への方向転換が促されている現状から、今後の需要増加が期待されます。

堆肥

同上の日本農業新聞の記事には、耕種農家に向けたユニークな取り組みが紹介されています。「くまもと堆肥ネット」は、地域や畜種別に堆肥を探すことができる堆肥情報検索サイトです。登録された情報には、畜産農家の連絡先や配達料、肥料成分や水分量などの成分結果、堆肥製造に使用する副資材などの情報が公開されています。

堆肥の中でも、速効性が高く、比較的安価で、化学肥料の代替として使いやすいのが鶏ふん堆肥です。発酵させた肥料の他、乾燥させた鶏ふんは窒素量が多く、鶏ふんを燃焼させた「鶏ふん燃焼灰」は窒素成分はほとんどなくなりますが、リン酸やカリ、カルシウムの割合が高いので、土壌の状態による使い分けがしやすいといえます。

下水汚泥

畜産農家が直接供給するものではありませんが、下水処理時に発生する下水汚泥も循環可能な地域資源といえます。下水汚泥とは「下水を処理する際に発生する泥状の物質で、下水中の汚れ(有機物)を分解した後の微生物の塊」(引用元:[高騰打破]耕畜連携ススメ広域流通 地域資源フル活用実践)です。下水処理施設から出る廃棄物を用いた肥料ですが、「下水」や「下水汚泥」から連想されるような臭いはほとんどしません。肥料化の過程で病原菌や雑草の種は死滅し、安全性において懸念される重金属の含有量も安全基準値を大きく下回る水準(1/5〜1/10程度)となっているので、安心して利用できます。

 

参考文献

  1. 耕畜連携とは | 広島県
  2. 地域内で耕畜連携 資源循環の輪広げよう
  3. [高騰打破]耕畜連携ススメ広域流通 地域資源フル活用実践

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