畜産業において、飼料にかかる費用は経営にかかる費用の約4〜7割を占めると言われています。またそれらの飼料の約7割は海外からの輸入に依存しているのが現状です。
そんな中、農林水産省が定める「食料・農業・農村基本計画」において、飼料自給率目標が、平成24年度には26%だったものが、令和2年度は38%に設定されました。この施策の一環として期待されているのが「エコフィード」です。
エコフィードとは「食品残さ等を利用して製造された飼料」を指します。食品を製造する際に生じる副産物や売れ残りや食品として利用されなかった余剰食品、加工や調理の際に発生する野菜くずや非可食部位などを利用することで、食品資源を有効利用できるだけでなく、飼料自給率を向上できるとして注目されています。
エコフィードのメリット・デメリット
メリット
畜産業がエコフィードを活用することで得られるメリットには
飼料費のコスト削減
生産性向上
エコフィードの原料を提供する食品産業側のメリットには
廃棄物処理にかかるコストの削減
CSR(企業の社会的責任)としてアピールできる
などが挙げられます。
独立行政法人農畜産業振興機構の「調査・報告 畜産の情報 2018年11月号『エコフィードによる生産コスト低減などの取り組み』」によると、配合飼料のみで肥育した豚とエコフィードと配合飼料を混合した飼料で肥育した豚では、経営全体で飼料コストを約25%削減できた事例や配合飼料の約16%をエコフィードで代替したことで、生産コストを約15%削減した事例が取り上げられています。
また畜産業と食品産業の連携等により、エコフィードによって生産される畜産動物のブランド化につながり、付加価値を与えることができるのではと期待されています。
デメリット
とはいえメリットがあるものには、デメリットもつきものです。
エコフィードのデメリットには
飼料成分や栄養価の変動が大きい
→適正に給与するために技術が必要
畜産動物の嗜好性により、エコフィードが思うように活用できない場合がある
が挙げられます。
エコフィードは一般的に高水分、高蛋白質、高脂肪なことが多いのが特徴です。高蛋白質、高脂肪は栄養成分として重要なものではありますが、高水分や高蛋白質は微生物汚染が起きやすく、貯蔵中に風味が悪くなるなどして食用に適さなくなったり、腐敗が起きる可能性があります。また高脂肪という特徴は、与えるタイミングを間違えると、例えば豚の場合、肥育後期に与えることで厚脂や軟脂になる、といった畜産物の品質低下の原因となる場合があります。そのため、先で紹介した事例のように、既存の配合飼料と組み合わせて使うなどして、量を調製する、飼料特性を把握した上で適正に与えるといった、技術が必要になります。
畜産動物がエコフィードを好まない可能性もあります。エコフィードを与えることで畜産動物が飼料を食べなくなってしまっては意味がありません。エコフィードそのものに、風味が変わるなどの変敗や腐敗が起きていないのであれば、エコフィードの配合量を低くすることで飼料摂取量の低下を抑えることはできると言われています。しかしその結果、飼料費のコスト低減というメリットが感じにくくなる可能性も。
こんな課題も
また、エコフィードの需要に対し、食品リサイクル工場の製造能力が追い付いていないという課題もあります。エコフィードの製造には、飼料に適さない物を除去したり、高水分を解消するために脱水作業を要したりと、手間がかかります。せっかくエコフィードに取り組みたくても、原料調達が難しいという地域もあります。
参考文献