コクのある味わいと、ネットリとした独特の食感が人気の高い「アボカド」。今や日本の食文化に溶け込んでいるアボカドは、1970年代後半から輸入量が増え始め、1990年には2163トン、2005年には28,150トン、2018年には73,915トンと増加し続けています。日本で販売されているアボカドのほとんどが外国産ですが、近年「国産アボカド」が注目を集めています。
アボカドについて
99%が輸入
今や日本の食文化になくてはならない存在となった「アボカド」。しかし、そのほとんどが輸入であり、日本国内で販売されているアボカドの99%は輸入と言われています。
日本へ輸入されるアボカドのほとんどがメキシコ産です。また農林水産省のデータによれば、輸入されるアボカドのほとんどがメキシコ産とのこと。2018年に輸入されたアボカドは、
- メキシコ産 88%
- ペルー産 7%
- その他(アメリカやニュージーランド、チリ産など) 5%
となっています。
旬
日本で販売されているアボカドのほとんどを占めるメキシコ産はほぼ通年輸入されているため、目立った旬はないといえます。
ですが、ニュージーランド産が9月~12月頃、国内産アボカドが10~2月頃などに出回ることを考えると、10~11月頃の秋口が旬の季節といえるのではないでしょうか。
栽培に適した環境
中央アメリカ原産のアボカドは「熱帯果樹」に分類されます。生育適温は15~33℃で、暖かい気候を好みます。その一方で耐寒温度が-2~7℃と強いため、生育旺盛で育てやすいのも特徴です。
「熱帯果樹」のため、日本では育てられないのかと思いきや、アボカドの種を水栽培することで簡単に育てることができます。
とはいえ、基本的には熱帯の植物です。耐寒性があるとはいえ、寒い地域で育てるのに向いているというわけではありません。そのため、主に温暖な西日本で栽培されています。
国内の主な産地
国産アボカドの主な産地は和歌山県と愛媛県です。
少し前のデータにはなりますが、2015年時点での収穫量を見ると、
- 和歌山県 約4トン
- 愛媛県 約1トン
和歌山県産が全体の80%以上を占め、残りの約15%を愛媛県産が占めていました。
国産アボガドの種類について
アボカドの品種
アボカドには1,000種以上もの品種があると言われていますが、輸入されているアボカドの品種のほとんどが「ハス」という品種です。
いくつか代表的な品種をご紹介します。が、これはほんの一部に過ぎません。
ハス
卵形で果皮がザラザラとしている品種。未熟なときは果皮が緑色で、熟すと黒っぽくなる。果肉は薄緑色をしている。
ベーコン
ハス種に比べると少し大きい。果皮は濃い緑色をしており、追熟した果肉はクリーム色。ハス種との違いは、熟しても果皮の色があまり変化しないこと。熟しているかどうかの判断はやわらかさではかる。
フエルテ
西洋ナシのような形。表面はなめらかで、果皮は薄い緑色。香りがいいのが特徴。
ピンカートン
果皮が緑色で少し厚く、ゴツゴツしている。種が小さい。
グエン
ハスによく似ていた形と色をしている。ハスより少し大きめ。熟すと暗い緑色になる。
メキシコーラ
果皮が非常に薄く、果実も100gほどでアボカドの中でも小ぶり。数あるアボカドの品種の中でも耐寒性が強い。
国産アボカドの品種
国産アボカドとして取り扱われている品種で人気が高いのは、
- ベーコン
- フエルテ
- ピンカートン
です。
輸入されているアボカドの品種「ハス」と比較すると、
- 油分の多さ
- トロッとした食感
- アボカド特有のえぐみや苦味が少ない
などの特徴から、好まれているようです。
おそらく「日本人好みの味」をウリにしているのではないでしょうか。
流通している(購入できる)アボカド
愛媛県松山市の「のうみん株式会社」が生産・販売する国産アボカドは、農薬は使わず、自然な状態で栽培しているのが特徴です。そのため、公式サイトの購入ページには「中身に影響のないキズのあるもの、擦れのあるもの、変形したものなども入るご家庭用となります」という注意書きがあります。しかし12月に収穫されたものは、テレビで放映されたこともあり、すぐに完売したようです。
「のうみん株式会社」のアボカドは、栽培が始まったきっかけにも注目です。元々松山市の農家は温州みかんなどの柑橘類を育てていましたが、価格が低迷し、耕作放棄地なども増えつつありました。そんな中、柑橘類が台風被害を受けた際に教訓として植えたアボカドの木が、特に手入れもしていないのにスクスク育っているのを見て、柑橘類に代わる新しい特産品として栽培が始められました。
香川県三豊市にある「安藤果樹園」が生産・販売する国産アボカドは、まだ収穫量が少なく、果樹園と隣接したカフェでの販売と、東京、大阪、高松の取引先にのみ流通しています。
が、「安藤果樹園」のオーナー・安藤貫介吉さんは、アボカドの栽培のしやすさに魅力を感じています。アボカドは、さまざまな品種を栽培することで収穫期間を長くすることができます。9月~翌年6月くらいまで、いわば夏以外はずっと収穫が可能です。安藤さんはマンゴーとアボカドを育て、夏はマンゴー、それ以外の季節はアボカド栽培で、コンスタントに出荷しています。加えてアボカドはこまめな手入れを必要としない作物のため、管理や育成に手間のかかるマンゴーを栽培している間にも、すくすく成長します。
アボカドは、耐寒性があるものの寒さには決して強くないため、栽培できる地域は限られてしまいます。しかし比較的育てやすく、さまざまな品種を植えれば、長い間収穫できます。気になる人は、ぜひチェックしてみてください。
参考文献