近年、短期間に激しく降る大雨が増加傾向にあったり、各地で地震が頻繁に発生していたりと自然災害の脅威が目につきます。本記事では、農業における防災対策と題し、国の政策と農業従事者自身で心がけておきたい防災対策について紹介していきます。
自然災害による被害の現状
令和3(2021)年度食料・農業・農村白書によると、平成28(2016)年に発生した熊本地震、平成30(2018)年に発生した北海道胆振(いぶり)東部地震、令和元(2019)年に本州へと立て続けに上陸した台風により、これらの年の自然災害による農林水産関係の被害額は過去10年で最大級となった、とあります。
なお、令和3年は同年7月と8月に発生した大雨の影響で、河川の氾濫による被害が発生しました。7、8月の大雨の影響による農林水産関係の被害額は1,296億円です。このほか、台風や地震の発生により、令和3年の主な自然災害による農林水産関係の被害額は総額1,955億円となりました。
農林水産省が推進する対策
農林水産省は、国土強靭化対策と、農業保険への加入等、農業者自身が行うべき災害への備え等を推進しています。
国土強靭化対策
「国土強靭化基本計画」に基づいて行われている対策の内容には以下のものがあげられます。
- 農業水利施設※等の耐震化
- 排水機場の整備・改修
- ため池の改修
- 地すべりの防止
- ハザードマップの作成
- 流域全体で行う治水対策(流域治水※2)など
※
農業水利施設とは、農地へのかんがい用水の供給を目的とするかんがい施設(ダム等の貯水施設や用水路など)と、農地における過剰な地表水及び土壌水の排除を目的とする排水施設(排水路・排水機場など)があげられます(出典元:用語の解説:農林水産省)。
※2
流域治水とは「気候変動の影響による水災害の激甚化・頻発化等を踏まえ、堤防の整備、ダムの建設・再生などの対策をより一層加速するとともに、集水域(雨水が河川に流入する地域)から氾濫域(河川等の氾濫により浸水が想定される地域)にわたる流域に関わるあらゆる関係者が協働して水災害対策を行う考え方」(出典元:「流域治水」の基本的な考え方)
また、農村地域の防災力強化のため、脆弱化した農業水利施設の整備や災害の発生を未然に防止する事業に「農村地域防災・減災事業」があります。これは農業従事者が直接働きかけるものではありません。ですが、大雨後にため池の水位が異常に上昇している場合や、地震後にため池の堤体に亀裂が入るなどの異変が見つかった場合には、最寄りの市役所や町役場に連絡を入れるようにしてください。「農村地域防災・減災事業」は農業関連施設の補強や災害の未然防止を図るためのものであり、異変の早期発見が重要だからです。
農業保険への加入
国は、災害の備えとして農業保険への加入を勧めています。
農業共済の中に「園芸施設共済」があります。これは農業用ハウスが自然災害等で被害を受けた際、その損失を現在の資産価値に応じて補償する、というものです。この園芸施設共済は令和元(2019)年6月から、地域の農業者が集団で加入した場合、共済掛金を最大3割以下に減額できるパッケージが導入されました。農業保険への加入を促すのが狙いです。
農業者自身が心がけておきたい防災対策
農業保険への加入も農業者自身で心がけておきたい対策の1つですが、自然災害による被害を未然に防ぐために、都道府県で実施されている防災に関する講習会への参加や、農業用ハウスの補強、防風ネットの設置も重要といえます。農業用ハウスの補強方法はハウスの形状や地域によって多岐に渡るので、講習会や助成金等の情報を集める機会を得るのも兼ねて、市区町村やJAに相談することもオススメします。
農林水産省ウェブサイトのトップページには、災害に関するサイトが解説されています。こちらの情報もぜひ活用してみてください。
最後に、災害が発生した際は安易に見回りに行かないようにしてください。災害発生時には、あなた自身の命を守ることを最優先に行動してください!
参考文献