近年、カット野菜の需要が増加しています。
その理由として考えられるのは共働き世帯が増えたこと。働いて帰ってきたときに、簡便に調理できる食品、簡便に済ませられる食事の需要が高まっていると言われています。そのため、購入したらすぐに食べられるカット野菜の需要が増えているのです。
その需要を見込み、「カット野菜用」の野菜を出荷する農家も増えているようです。カット野菜用に野菜を出荷することで安定した収入が得られることもあります。
カット野菜の需要が高まっている
カット野菜を取り扱っているのは小売店だけではありません。外食産業やコンビニエンスストアで販売される商品のために業務用として取り扱われる場合もありますし、給食や介護食への需要もあります。
そんなカット野菜は、増加傾向にある共働き世帯だけでなく、消費量が少ない単身世帯や高齢の家庭からも求められています。
消費者から見たカット野菜の魅力には
- 調理の手間が省ける
- 使い切りやすい
- 価格が安定していて安い
- どこでも購入できる
などが挙げられます。必要なときに必要な量だけ食べることができ、洗ったり切ったりする必要もないので生ゴミも出ません。簡便に食事を済ませたい人にとって、これほど便利なものはありません。
カット野菜に注目しているのは消費者だけではない
そんなカット野菜に注目しているのは消費者だけではありません。カット野菜の原料を生産する生産者も注目しています。規格外野菜を活用するのにもってこいの流通先だからです。
規格外野菜が活用される
青果物市場では生産した農作物が等級によって評価されます。そしてその評価軸は“形”によって定められ、同じ圃場で作られたものであっても、“形”によって価格も等級も変わってしまいます。
消費者が購入を決める基準となる“形”。農作物で着目されるべきは見た目ではなく味や栄養価だとも思うのですが、いまだにいびつな形や汚れ・傷がついているもの、形の小さなものは購入されにくい傾向にあるのが現状です。
ただカット野菜であれば、野菜そのものの見た目が購買意欲を左右することはほとんどありません。市場で低い評価をつけられてしまった規格外野菜であっても、加工されてしまえば「規格外」の評価が消費者の購買意欲に影響することはありません。
もちろん規格外野菜を加工する際の難点もあります。加工する際には機械調理が多いため、規格外野菜を積極的に取り入れる業者であっても、不揃いのものは使いにくいと感じることは多いようです。また、青果物は品質や価格が日によって変動するもの。安定供給を臨むカット野菜事業にとっては、原材料の価格の安さや安定した供給の観点から、国内野菜ではなく輸入野菜に優位性を感じるところも少なくありません。
とはいえ、卸業者や小売店と連携することで、それらの難点をカバーする取り組み事例もあります。
例えば、ある仲卸業者はスーパーマーケットが求める安定した供給と低価格を実現するために、畑買い契約(契約農家が栽培した作物を全て買い取ること)をしました。農家と連携し、スーパーマーケットへの安定供給と低価格を実現する代わりに、選果・調製作業などを業者側が行うなどして生産・出荷の省力化も行います。また加工時の機械調理に伴う「不揃いのものは使いにくい」という難点も、取引先が求める規格に応じて
- 生鮮販売用
- 加工用(カット野菜、温野菜、ピューレなど)
と組み合わせることで無駄をなくしました。
コンビニと連携した農家の事例でも畑買い契約を実施。均一価格を実現するために、畑ごと買い取りました。生鮮向けのものか加工向けのものかを業者側が使い分けることにより、仕入れコストを削減するだけでなく、無駄なく野菜を販売することができます。
規格外野菜を活用した海外の事例
カット野菜の需要に応える規格外野菜。海外にも、カット野菜を供給する業者と規格外野菜を結ぶ取り組み事例があります。
アメリカのカリフォルニアで誕生したFull Harvest(フルハーベスト)社が提供しているのは、農家と企業を直接結ぶオンラインプラットフォームです。これを活用すると、農家は規格外野菜や余剰分の野菜を企業に直接販売することができます。加工されるのに利用されるのであれば、形を気にする必要はありません。
直接やりとりすることにより、企業側は仕入れコストを抑えることができますし、生産者は市場で販売できなかった規格外野菜等が売れれば、追加の収益を得ることができます。
新たな需要を活用しよう
規格外野菜の行く先として注目されているカット野菜。
もちろんカット野菜事業そのものには難しさもあります。規格外野菜が活用できるとはいえ、原料は品質・価格が日々変動する青果物ですから、品質面や経済面から問題を抱え、撤退せざる得ない業者も多々いるようです。
ですが「カット野菜」という新たな需要のおかげで、今まで廃棄されるだけだった野菜に使い道ができることは、生産者にも加工業者にも、そして消費者にもメリットがあると言えるでしょう。
規格外として評価された小さなじゃがいもが、お弁当や惣菜製造には使いやすいかもしれません。小売業者が望むサイズのネギではなかったとしても、加工して使う外食業者には価値あるものになります。
食品ロスを解消するきっかけにもなり、流通の効率化をはかれます。これからは、ただただ生産するだけでなく、消費者に届くまでのつながりを意識した生産が注目されるかもしれませんね。
参考文献