農林水産省は日本を”輸出途上国”と表現しています。日本は世界第1位の農産物純輸入国だと言われています。輸出額は輸入額に比べ少ないのが現状です。そんな中、日本政府は2019年までに「農林水産物・食品の輸出額を1兆円に伸ばす」という目標を掲げました。農産物の海外輸出を目指す農家や食品製造業者等の連携を促すため、「グローバル産地」の育成に力を入れています。
そこで本記事では、輸出額を向上させようと目標を掲げている日本の現状を紹介していきます。2018年版、日本の農作物輸出ランキングです。
日本の農作物輸出実績
本記事でご紹介するのは、平成30年1〜6月(上半期)の「農林水産物・食品の輸出実績」です。結論から言うと、輸出額は4,359億円と、前年同期と比べて15.2%増加しました。目標の1兆円には遠く感じますが、増加傾向にあるのは喜ばしいことですね!
農産物:2,628億円(前年同期比15.1%増)
林産物:185億円 (前年同期比7.1%増)
水産物:1,546億円(前年同期比16.4%増)
主な輸出先は
1位:香港
2位:中国
3位:アメリカ
となっています。
日本の農作物輸出ランキング
主な品目の輸出量・輸出額(平成30年6月)によると、ランキングは以下の通りです(金額ベース、平成30年1月〜6月累計)。
農産物品目分類だと、
順位 | 品目名 | 金額(百万円) |
1 | 加工食品 | 143,012 |
2 | その他農産物 | 53,088 |
3 | 畜産物 | 30,591 |
4 | 穀物等 | 18,736 |
5 | 野菜・果実等 | 17,345 |
細分化すると、
順位 | 品目名 | 金額(百万円) |
1 | ソース混合調味料 (加工食品) |
15,447 |
2 | 清涼飲料水 (加工食品) |
13,565 |
3 | 牛肉(畜産物) | 10,827 |
4 | 日本酒(アルコール飲料) | 10,530 |
5 | 植木等(その他農産物) | 8,451 |
6 | 菓子類 (米菓を除く・加工食品) |
8,153 |
7 | たばこ(その他農産物) | 8,152 |
8 | 牛乳・乳製品(畜産物) | 7,271 |
9 | 緑茶(その他農産物) | 6,948 |
10 | りんご(野菜・果実等) | 5,949 |
輸出額1兆円を目指す日本への追い風
日本政府が2019年までに輸出額1兆円を伸ばすのには、世界の食事情が関係しています。
と言うのも、世界の食市場の規模は年々増加傾向にあります。2009年には340兆円だった食市場の規模は、2020年には680兆円に倍増すると予測されています。アジア全体に関する予測では、2009年に82兆円だった食市場は、2020年に229兆円になると予測されています。
加えて、世界各国での日本食レストラン需要の増加も追い風となっています。2006年には約2.4万店だった日本食レストランは、2013年には約5.5万店、2015年には約8.9万店になっています。
東日本大震災で起きた原発事故の影響で、日本から輸出される食品の輸入規制がかかった時期もあります。しかし2016年以降から、輸入規制が徐々に撤廃・緩和されつつあるのも事実です。震災を乗り越え、農作物輸出で世界と競争できるようになれば、”輸出途上国”という現状を打破することもできるのではないでしょうか。
今注目されている農作物とは
コメ
コメの輸出額は増加傾向にあります。世界各国の日本食レストランやスーパーマーケットの需要の高まりから、コメの輸出に目を向ける人も増えてきたと言われています。減反政策の廃止もあり、今後は自由にコメをつくれるため、新規参入者の中には「輸出第一」に考えるコメ農家さんも登場するかもしれませんね。
乳製品
「粉乳」の輸出額が増加傾向にあります。伸びがある輸出国はベトナムやカンボジアです。経済成長に伴い、女性の社会進出が進んだことで、粉ミルク需要が急増しているのです。日本では少子化で需要は縮小傾向にあります。しかし世界に目を向ければ、これから需要が伸びる国もたくさんあります。また農林水産省は、この需要の高さについて「日本製であることによって安全性が信頼されているのではないか」とも推測しています。
植木
主に中国やベトナムに輸出される植木。富裕層のステータスシンボルとして日本風の庭が人気と言われています。そのためマツやツツジといった植木の需要が高いのです。日本では庭付き戸建てが年々減少傾向にあり、それに伴って植木需要も減少していました。が、世界に目を向けたことで実績につながりました。
参考文献