コンテナファームとは。環境に左右されにくく、移動もできる注目の農法について  

コンテナファームとは。環境に左右されにくく、移動もできる注目の農法について  

英語でContainer farmiingと表されるコンテナファームは、輸送用コンテナを利用した室内農法を指します。Verical Farming、日本語で垂直農法と呼ばれることもあります。

コンテナ内には水耕栽培や養液栽培システム、光合成用LED照明、空調設備などが備えられ、これらの設備を用いた制御された環境で作物を栽培することで、小さなスペースで、外部環境に左右されない高効率な生産が可能になります。

 

 

コンテナファームによる栽培の利点

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第一に、小スペースで運用できる点があげられます。広大な土地を必要とせず、都市部の限られた空間でも農作物を生産することができます。都市部での農業が実現できれば、消費地への輸送距離が短縮されるので、輸送に伴う二酸化炭素排出量の削減にも役立ちます。

また、天候や季節に左右されず、年間を通じて安定した作物生産が可能となる点もメリットといえます。コンテナ内部の制御環境が整えば、従来の農法よりも水の使用量や農薬、除草剤の使用を大幅に削減することにつながります。

なお、世界有数のコンテナファームメーカーFreight Farms社が展開する「Greenery」は、最先端の環境制御システムを搭載し、農業生産工程のほとんどが自動化されています。Freight Farms社のコンテナファームは、地元産の新鮮な野菜を365日栽培・販売できるとして、小規模農家や企業など幅広い運営主体を魅了し、2024年11月時点で41カ国、600以上のコンテナファームが稼働しています。

コンテナファームが推奨される理由

コンテナファームは、現代のライフスタイルや環境目標に合った栽培方法であり、農業の持続可能性を叶える柔軟性の高い解決策として注目されています。

通年生産により収益性が向上

前述した通り、コンテナファームは気候や季節の影響を受けずに、葉物野菜やハーブ、マイクログリーンといった作物を一年中栽培できます。

栽培期間の制限をなくすことができると、レタスなどの作物を真冬に栽培することもでき、農業の生産量と収益性を最大限に高めることができます。

また、これら作物を栽培する際、農薬や除草剤の使用を大幅に減らすことができれば、食品の安全性の向上につながるだけでなく、高付加価値作物としてファーマーズマーケットやレストランなどに販売するといった収益性の高いビジネスを構築することにもつながります。

加えて、前述したFreight Farms社が展開する「Greenery」のような自動化技術を活用すれば、効率的な運営も可能になり、これまで農業に従事した経験のない新規就農者であっても簡単に高品質な生産を実現できると期待されています。

地域社会への貢献

土地空間の少ない都市部や農作物が育ちにくい寒冷地であっても、コンテナファームを利用することで農産物の生産が可能になります。

このことは、フードデザート対策に効果を発揮します。フードデザートとは、新鮮な食材へのアクセスが限られている地域を指します。食料供給に関する十分なサービスを受けていない地域にコンテナファームを設置できれば、食料へのアクセス問題の解決に貢献できます。

都市部であろうと農村部であろうと、コンテナファームは、食材を必要としている地域社会に新鮮な地元産の農産物を提供できるのです。

そのほか、土地や資源の使用を最小限に抑えられる、都市部で生産することで食品輸送による二酸化炭素排出量を削減できるといった持続可能性や環境に配慮できる点も、推奨される理由の一つとしてあげられます。

コンテナファームではどんな作物が育つのか

以下、コンテナファームで栽培できる野菜の具体例です。

  • レタス、ほうれん草、ケールなどの葉物野菜
  • バジルやミントといったハーブ類
  • イチゴ
  • エディブルフラワー(食用花)

そのほか、実証実験段階ではあるもののワサビの栽培事例もあります。

金沢工業大学は、コンテナ型水耕栽培方式、すなわちコンテナファームを採用した中規模ワサビ工場の実証実験を行っています。ワサビの生育環境条件は一般の葉菜・根菜類に比べて厳しく、そのうえ栽培期間が長いために採算性が悪いとされてきましたが、金沢工業大学はIoTセンサーや独自技術を駆使し、栽培に適した環境づくりと生育速度の促進を試みました。

なお、実証実験下では、在来種のワサビ可食部位の生育速度が、従来の露地栽培に比べて約3〜4倍となる結果が報告されています。今後、季節や生産地にとらわれない、品質の安定したワサビ栽培に期待が高まります。

 

 

コンテナファームの初期費用や維持費はどのくらいかかる?

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コンテナファームにかかる費用は、規模や導入する技術によって大きく異なります。

コンテナファームなどの製品を提供するカナダの農業テクノロジー企業FarmAnywhereはウェブサイトにて、コンテナファームの設立費用は数万ドルから数十万ドルに及ぶ場合があると示しています。

たとえばLED照明や環境制御システムなど、最新の設備を導入するほどに初期費用は高額になる傾向にあり、運用段階では電気代、水道代、植物の栄養分供給システムなどのランニングコストが発生します。これらの維持費も、設備の効率や農場の規模に応じて変動するのが現状です。

また、コンテナファームと同義語として扱われる「垂直農法」市場の調査結果によると、屋内型農場やコンテナ型農業の初期費用は従来の農業よりも高額であること、特に環境制御装置や特殊な設備の導入が大きなハードルとなっていることが指摘されています。

 

まとめ

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コンテナファームは現代のライフスタイルや環境目標に合った栽培方法ではあるものの、その導入には十分な資金計画が不可欠だといえます。

とはいえ、垂直農法市場は2035年までに約963.3億米ドル(日本円にしておよそ15兆円)に達する見込みです。有機食品への需要増加や都市型農業の革新が市場を支え、特に北米とアジア太平洋地域が市場の成長を牽引しています。

初期費用や維持費がかかるといった課題はあるものの、今後もコンテナファームは環境負荷を抑えた持続可能な農法として注目を集めることが期待できます。

 

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