近年、少子高齢化や少人数世代の増加、女性の社会進出などの社会変化に伴い、消費者の生活スタイルが変わってきています。特に外食や中食(惣菜や弁当など)の需要が高まり、その結果、業務用野菜の需要が外食・中食業界に増えつつあります。
とはいえ、安さや安定した供給が求められる業務用野菜は、国産ではなく輸入野菜がその力を強めているのが現状です。
しかし小売や外食、中食や食品加工等のバイヤーを指す「実需者」への意向調査によると、「国産を利用したい」という声が5割以上という結果も出ています。また農林水産省では、業務用野菜の生産を支援する事業が立ち上がっています。
そこで本記事では、業務用野菜を生産するメリットと業務用野菜生産に取り組みたい人が知っておくべき助成金について紹介します。
業務用野菜を作るメリット
まず、先でも申し上げた通り「国産を利用したい」という声は上がっているため、ニーズはあります。
実需者が今後国産食品・原材料を購入するかどうかの意向を調べた農林水産省の調査によると、
増やしていきたい | 現状維持 | 減らしたい | わからない | |
加工業者 | 60.9% | 34.9% | 0% | 4.3% |
食品卸業者 | 52.5% | 39.9% | 1.3% | 6.3% |
流通業者 | 52.6% | 38.8% | 1.7% | 6.9% |
外食産業等 | 54.1% | 41.9% | 0.0% | 4.1% |
引用元:22ページ 加工・業務用野菜をめぐる状況 令和元年12月 農林水産省
となっています。
また生産視点からのメリットを簡潔にまとめると
- 新規就農者でも多収できる
- 少ない労力で済む
などが挙げられます。
家庭消費用と違い、業務用野菜はカットなどの加工が施されるため、大きく育っても、不揃いに育ってもさほど影響がありません。
また収穫効率をアップさせるために収穫機を導入すれば、少人数で大規模な生産を行うことも可能です。農林水産省の資料には、収穫機を導入することで、人手を使う収穫より2倍以上、生産物によっては10倍以上も効率があがった事例が報告されています。
なお気になる反収ですが、『現代農業5月号』に収録されている業務用ホウレンソウ農家の場合、反収は「6万円/1t」。記事中には“ものすごく儲かるわけではない”と書かれていますが、播種も防除も収穫も機械作業で行うことで大規模栽培も可能になるため、いかに生産効率を上げるかが、満足いく反収のヒントになるのではないでしょうか。
続く後編では、業務用野菜生産への支援事業についてご紹介します。
参考文献
- 加工・業務用野菜をめぐる状況 令和元年12月 農林水産省
- [ゆらぐ基 広がる危機](2) 増える加工・業務野菜 需要取りこぼす国産 日本農業新聞
- 『現代農業5月号』, 2018年5月1日, 農山漁村文化協会