Cold Plasma(低温プラズマ)とは。低温プラズマが植物の生長を促進させる!?

Cold Plasma(低温プラズマ)とは。低温プラズマが植物の生長を促進させる!?

化学的に合成された農薬を用いずに済むという点で、農業分野においてCold Plasma(低温プラズマ)の技術が注目を集めています。

 

 

Cold Plasma(低温プラズマ)とは

Cold Plasma(低温プラズマ)とは。低温プラズマが植物の生長を促進させる!?|画像1

 

結論からいうと、低温プラズマは「電子温度のみが高いプラズマ」です。

そもそもプラズマとは

まず「プラズマ」を辞書で引くとこう書かれています。

高温加熱または電気的衝撃などによって正、負の荷電粒子に乖離された電離気体の総称を一般にプラズマと呼び、空間を自由に運動する荷電粒子の集合状態をいう。物理学でいうプラズマは、ほぼ同数の正の電荷と負の電荷を内在する電気的な伝導媒体であり、気体中の原子が電離することで生成される。この状態は、固体、液体、気体状態とは区別される物質の第四の状態ともいわれる。

出典元:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

 

1 高度に電離した物質の正イオンと電子とが混在している状態。特に、超高温において電子をはぎ取られた裸の原子核が飛び回っている状態。
2 血漿けっしょう。
3 原形質。

出典元:小学館 デジタル大辞泉

アメリカ合衆国で発行されている科学雑誌「サイエンス・ニュース」の記事では、プラズマを「マイナス電荷を持つ電子、プラスイオン、中性原子のスープである」と表現しています。

プラズマは、熱や電流などによって気体が超高エネルギー状態になり、原子から電子が解放されたときに発生します。またプラズマは電磁場や紫外線、赤外線を発生させます。

Hot PlasmaとCold Plasma

プラズマは大きく2つに分けることができます。

太陽のような高温で発生するものを「Hot Plasma(ホットプラズマ、熱プラズマ)」と呼びます。熱プラズマは数千℃以上のガス温度を有し、電離したイオンや電子とガストは熱平衡(物体間あるいは物体中の熱の移動が止まった状態。温度平衡|出典元:小学館 デジタル大辞泉)に近い状態となっています。

一方、本記事で紹介する「Cold Plasma(コールドプラズマ、低温プラズマ)」は常温・低圧の環境で発生するものを指します。イオンや電子の温度とガスの温度は非平衡な状態であることから「非平衡プラズマ」とも呼ばれています。

“イオンや電子の温度とガスの温度は非平衡な状態”について、アメリカ合衆国の農業メディア「Modern Farmer」の記事では「低温プラズマも加熱されてはいるものの、熱プラズマと違い、構成要素である電子、中性子、陽子が同じ温度になっているわけではなく、電子だけが過熱された状態である。またその電子の密度が低いので、室温でプラズマを作ることができる」と解説されています。極端な熱を必要とする熱プラズマと違い、低温プラズマは研究室で簡単に作ることができます。

身近なプラズマの事例を挙げると、雷やオーロラはプラズマの自然現象であり、ネオンサインや蛍光灯が光るのはプラズマのおかげです。

 

 

プラズマが農作物の生長を促進させる!?

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「サイエンス・ニュース」の記事によると、19世紀後半にはプラズマが植物に与える影響が研究されていました。

19世紀後半、フィンランドの物理学者カール・セリム・レムストロムは北極圏付近のモミの木の年輪の幅がオーロラの周期に従って広がり、オーロラが最も強いときに幅が広がることを発見し、オーロラが植物の成長を促進しているのではと考えました。オーロラを人工的に再現するため、植物に金属製の金網をかぶせて電流を流すという実験を行ったところ、適切な条件においてより多くの野菜の収穫が可能になりました。

同記事には、現在の農業分野におけるプラズマ研究についても記されています。アメリカ・オークウッド大学の生化学者アレクサンダー・ボルコフは、プラズマがインゲンマメの種子にどのような影響を与えるか研究を行いました。ボルコフはインゲンマメの種子にプラズマジェットを照射し、その後1日浸水を行いました。その結果、2日後にプラズマ処理した種子は根粒(種子を苗にする根の小さな突起)が2.7cmと、未処理の種子の1.8cmより50% 大きくなっていることがわかりました。

中国にある科学技術分野の最高研究機関・中国科学院でも、大豆の種子をプラズマに当てる実験を行っており、2014年の研究報告によると、プラズマに当ててから7日後に、根は未処理の種子の根よりも最大27%重くなったとあります。

プラズマによる影響は収量や発芽率を低下させる場合も……

しかしプラズマによる影響は処理を行うタイミングや方法によっては、収量や発芽率を低下させる場合も報告されています。

アメリカの物理学会が主催するガスエレクトロニクス会議で、日本の研究が発表されました。愛知県の水田で行われた幼苗へのプラズマ処理の結果が報告され、生育初期に処理した苗は未処理の苗に比べて収量が最大で15%増加したものの、生育後半に処理を行うと収量が減少したとあります。

韓国の研究者が『Journal of Physics D』誌で報告した内容によると「大麦の新芽にプラズマを6分間照射したところ発芽率が向上したが、18分間、3日間照射すると生育に効果はなく、植物全体の重量が減少した」とあります。

今後の課題

農業分野でのプラズマ活用において、大規模な栽培にプラズマを供給できるかどうかが課題として挙げられています。実験室で報告された効果を圃場レベルで確認すること、プラズマ活用の優位性を示すこと(現在用いられている方法より優れた方法かどうか示すこと)、プラズマの電荷が植物にどのように作用しているのかを解明することなどが求められています。

 

参考文献

  1. Cold plasma could transform the sustainable farms of the future
  2. What Is Cold Plasma and How Can It Be Used in Agriculture? – Modern Farmer
  3. Is Cold Plasma the Next Big Technology Breakthrough in Indoor Ag? — AGRITECTURE
  4. 低温プラズマを用いたウイルスの不活性化
  5. 熱プラズマの利用と局所熱平衡

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