渡り鳥が飛来する冬の時期に警戒しなければならないのが鳥インフルエンザです。
鳥インフルエンザとは
A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気です。
鳥インフルエンザの中でも、感染した鳥を高確率で死亡させてしまうものを「高病原性鳥インフルエンザ」といいます。致死性が高く、伝播性も強いので、これの感染が広がれば、鶏肉や鶏卵の安定的な供給に大きな影響を及ぼします。
鳥インフルエンザは、高病原性の場合、感染した鶏は症状が出ることなく、突然死んでしまうことが多いので、他の病気と間違われることがあります。低病原性の場合は、症状が出ないことがあったり、咳や鼻水、餌を食べたり水を飲んだりする量の減少、トサカや脚の色が紫に変色する、産卵率が下がるなどの症状を示します。
どのように広がる?
鳥インフルエンザウイルスが鶏に感染すると、その鶏の体の中で増えた大量のウイルスが、糞や鼻水等として排泄され、同じ鶏舎にいる他の鶏や鶏舎の床、水まわりなどに広がっていきます。人や物に付着し、鳥インフルエンザが発生した場所から周辺へと広がっていくことも少なくありません。
冒頭で“渡り鳥が飛来する冬の時期に〜”と書きましたが、2020年11月に発生し、まん延した鳥インフルエンザでは、感染し死亡した個体からのウイルスの遺伝子解析の結果から、渡り鳥を通じて、国外から国内へとウイルスが侵入したと見られています。
どのように予防すべき?
予防策の基本は、鶏舎内に、野生動物や人、物を介して、ウイルスを持ち込まないことです。そのためには
- 衛生管理区域を設定する
- 消毒を徹底する
- 野生動物が鶏舎に侵入しないよう防鳥ネットなどを設置する
などの方法が挙げられます。
予防策の具体例ですが、まず関係者以外の出入りは最小限に抑えましょう(上記1)。人や車輌等の出入りを少なくすることで、鶏舎外からウイルスが入ってくるのを抑えることができます。
人や車輌等が出入りする場合には、消毒を徹底します(上記2)。外来車輌の消毒や、鶏舎に入る前には衣服等についたウイルスが持ち込まれるのを抑えるために、衛生的な区画と非衛生的な区画を分け(上記1)、靴底を消毒する踏込消毒槽や手足消毒用の消毒薬、消毒薬噴霧器を用意します。人が鶏舎に入ったら、すぐ扉を閉めることも忘れずに。
鶏舎周辺や農場内道路などに消石灰を散布するのも効果的です(上記2)。
鶏舎は間隙を塞いで、ネズミが侵入するのを防止します(上記3)。また鶏舎は2cm角以下の網目の防鳥ネットで覆うように垂らし、ネズミの侵入を防止するのと同様、間隙を塞ぎます。防鳥ネットやネズミの侵入を防止する設備の破損が見つかったら直ちに補修すること、万が一ネズミが発生した場合には、侵入経路を探し出し、捕獲装置や殺鼠剤を使用して駆除しましょう。
野生動物の侵入を防ぐ方法は防鳥ネットなどの設置だけではありません。鶏舎内外の清掃や整理整頓、周辺の草刈りなどを行うことで、野生動物が繁殖する場所をなくすことも重要です。
また万が一、病気が発生した時にすぐ対応できるよう、定期的な健康観察が欠かせません。
鶏舎周辺で野鳥が死んでいるのを見かけたら……
野鳥の死因は鳥インフルエンザに限りませんが、ウイルスや細菌、寄生虫などをもっている可能性があります。死んだ野鳥には素手で触らず、また死んだ野鳥の処分については都道府県や市町村役場に相談しましょう。
参考文献