バイオマスとは「化石資源を除く、木材や生ゴミ、紙や動物の糞尿など、動植物由来の再生可能な有機性資源」を指します。
バイオマス活用は地球温暖化を防ぐ仕組みとして注目されています。その背景には「カーボンニュートラル」という概念があります。これは「何かを生産するなどして排出される二酸化炭素と吸収される二酸化炭素が同じ量である」ということ。バイオマスを用いて生じた二酸化炭素は、バイオマスのもととなる植物が育つ際に吸収されるため、空気中の二酸化炭素が増えないと期待されているのです。
バイオマス活用は環境問題の解決や持続可能な社会において期待されていますが、あまり活用が進んでいないのが現状です。そこで本記事では、バイオマス活用が抱えている課題について紹介していきます。
バイオマス活用の課題
まずバイオマスのエネルギー量について。
再生可能な有機性資源として期待されているバイオマスですが、植物が光合成によって固定するバイオマスのエネルギー量は、地上に届く太陽光エネルギーのごく一部だと言われています。光合成で得られたエネルギーは植物が成長するために消費されます。そのため、バイオマスとして残るエネルギー量は地上に届く太陽光エネルギーの総量の1%未満だと言われています。
またバイオマス資源のつもりで植物を栽培していなかったとしても、栽培や収穫、運搬等にはかなりのエネルギーが必要です。例えば稲の場合、年間10トン/ヘクタールのバイオマス量がありますが、畑をトラクターで耕し、田植えを行い、稲刈り機で収穫して、運搬するのに相当量のエネルギー量が必要になります。かつ、先で紹介したように光合成で得られるバイオマスのエネルギー量はごくわずか。コメや稲わらに固定されるエネルギー量は春から秋の約1年間降り注ぐ太陽光エネルギー総量の0.6%ぐらいにしか満たないのです。
バイオマスを持続的に確保できないという問題も挙げられています。例えば木材でバイオマス発電を行う場合、木々が数十年かけて光合成により固定したエネルギーを利用するため、稲わらに比べるとエネルギーのロスやマイナスは少なくなりますが、森林を管理し、木材を持続的に利用するためには、その地域で必要となるエネルギー量をあらかじめ見積もる必要があります。
それから間伐材や果樹を剪定した枝、稲わらやもみがらといったバイオマスの中には、バイオマスとしてまだ利用されていないものがあるのですが、それらが未利用バイオマスとなっている背景には、以下のようなものが挙げられます。
現状 | 課題 | |
間伐材の場合 | ・搬出や輸送が困難な場合、山林内に残置されることも | ・運搬に労力がかかる
→林道や作業道などを整備する必要がある |
果樹を剪定した際に生じる枝 | ・農家が個々で破砕し、堆肥として活用 | ・剪定枝の収集や運搬に労力がかかる
→収集や運搬方法の効率化が必要 |
稲わらやもみがらなど | ・農地にすきこまれた利、土壌改良剤や畜産用飼料、敷料用として活用 | ・収集、運搬、管理に手間がかかる
・比重が小さく、運搬と貯蔵の効率が悪い |
参考:未利用バイオマスの活用状況と課題|飯豊町バイオマス産業都市構想より
なお2012年7月1日から、再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)※が始まり、バイオマスの再生可能エネルギー源もその対象となっています。2019年9月末の時点で、バイオマス発電の買取電力量は最も多い太陽光発電に続く2番手なのですが、原料となるバイオマスは海外輸入が中心。FITでは国産の材料を中心とした間伐材利用を推進する意思が見られており、今後海外から輸入された材料・燃料がFITの対象外となるのでは?という声もあります。ですが先で紹介したように、国内のバイオマス資源は、収集や運搬の手間がかかることから活用しきれていないのが現状です。
※太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度。(引用元:固定価格買取制度(改正FIT法)|環境用語集|環境ビジネスオンライン)
参考文献