卸売市場に出荷するメリットについて。生産に専念したい人におすすめ!

卸売市場に出荷するメリットについて。生産に専念したい人におすすめ!

インターネットやSNSを活用することで、消費者とつながりやすくなった昨今、農協や市場への出荷以外で直売したり通信販売を行ったり、さまざまな販路が広がっています。

直販や通信販売は消費者と直接やりとりできるため、商品の特徴を説明した上で販売できたり、付加価値をつけて高く売ることができたりといったメリットがありますが、一方で、生産だけでなく出荷作業やクレーム処理を自分で行わなければならない、企業が運営する販売サイトで販売した場合、手数料や配送料の負担がかかるなどのデメリットも挙げられます。

本記事では、さまざまな販路が広がる今だからこそ見直したい、卸売市場に出荷するメリットについて紹介します。

 

 

卸売市場に出荷するメリット

卸売市場に出荷するメリットについて。生産に専念したい人におすすめ!|画像1

 

「全量引き受け」という機能

卸売市場には「全量引き受け」という機能があります。

「全量引き受け」は、生産者側が基本的に価格決定に参加できない「委託集荷」が6割を占めているため、“価格決定に参加できない”という部分だけ見ると、デメリットのようにも思えるでしょう。豊作時、希望通りの価格で売れないことも十分考えられます。

ただ、生産量をコントロールすることが難しい農業において、できた生産物を全量買い取ってもらえるということは、生産量と消費者の要望(求められる商品や規格、量)が合わなくても、在庫リスクを抱えずに済み、売上が0になることはない、といえます。

経費や事務処理の負担を減らせる

また物流費を加味した場合、通信販売と比較すると卸売市場に出荷したほうが手取りが多くなる可能性も。

農林水産省が実施した「青果物流通段階調査」によると、主要な野菜14品目、果実2品目における「最終小売価格に対する農家の手取り価格の割合」は45.1%、「卸売市場などの流通経費」は54.9%となっています。

「手取り<流通経費」となっていますが、この54.9%には

  • 流通の各段階にかかる手数料
  • 生産地から卸売市場までの物流費
  • 卸売市場から小売店舗までの物流費

が含まれています。

卸売市場に出荷した場合、最終小売価格が1ケース3000円だったときには、流通経費が1647円、手取りが1353円になります。

消費者に直接販売する場合、流通経費がなく、手取りが3000円になる…ように見えますが、実際には生産者側が配送料を負担することが多く、結局配送料に1647円以上かかることも。また商品の受注も配送手配もクレーム対応も全て自分でやらなければならないため、生産以外の負担が増えます。

売上がなければ利益は得られません。卸売市場に出荷することで、最低限の売上を確保できますし、流通経費にさまざまな事務処理が含まれていると考えれば、生産に集中できるというメリットがあります。

複数の販路を確保するのもリスク軽減には効果的

先では卸売市場への出荷のメリットについて紹介しましたが、卸売市場だけに絞るのではなく、複数の販路を確保するのもリスク軽減には効果的です。もちろん、売れるか売れないかわからない販路を選ぶことはおすすめできませんが…。

卸売市場は生産に集中できる点ではメリットがありますが、価格がコントロールできないため、市場価格が大幅に下落してしまうと、売上がガクンと下がってしまいます。しかしそんな時、他の販路を組み合わせておけば、そのリスクを回避することができます。

関連記事:農業従事者が販路を複数確保すべき理由。複数の販路をもつメリットとは。

 

 

販路開拓のポイント

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まずはさまざまな販路の特徴を知りましょう。

メリット デメリット
卸売市場 ・全量販売できる
・市場相場によっては高値で販売できる
・価格のコントロールができない(供給過剰になると安価になってしまう)
直売所
道の駅
・価格や規格を決められる ・全量買取ではないため、売れ残った場合には回収する必要がある
・会費が必要になる場合も
業務用 ・取引条件を設定することで、安定的に販売することができる
・一般消費用だと売れない規格が売れることも
・契約取引となる場合が多く、取引条件を遵守する責任が生じる
通販サイト等 ・品質や付加価値によって高単価に販売することが可能 ・生産者自らが運営する場合、受注、配送、クレーム処理等を自分で行う必要あり

そして「誰に売るか」「どのくらいの労力でどのくらいの利益が欲しいか」を考え、販路を選ぶようにしましょう。生産物に付加価値をつけたとしても、それを求める消費者の元へ届く販路を選ばなければ、売れるものも売れません。

生産に集中したいのか、付加価値をつけて高い利益を得たいのか、こだわりを消費者に伝えたいのか、自分が目指すあり方に適した販路を探してみてください。

 

参考文献

  1. 『農業ビジネス ベジ 2019 vol.25 春号』,2019年5月30日,イカロス出版
  2. 流通・加工総論
  3. 卸売市場の更なる機能・役割の強化に向けて 農林水産省
  4. 農作物の販売チャネルを選ぶこと – 株式会社流通研究所
  5. 農産物の市場外取引における成功のキーワードは「産地化」と「個人ブランド」|シンジェンタ ホットニュース|シンジェンタジャパン

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