地球温暖化が深刻化しています。地球温暖化による気候変動を抑えるためには、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出量を削減する必要があります。
日本では、農林水産省が京都議定書の6%削減約束を達成させるため、
- 森林吸収源対策
- 農林水産分野の排出削減対策
- 地球温暖化による農林水産業への影響に対応するための適応策
などを推進しています。
地球温暖化はその規模の大きさから、私達一人一人が取り組みにくい印象もあります。しかし、身近なもので地球温暖化対策をはかることはできます。本記事では地球温暖化対策に着目する農業資材として、物流容器「パレット」に着目します。
現在、パレットは物流課題だけでなく、地球温暖化対策にも関わっているのです。
物流で必要になるパレットの課題について
パレットは、物品の積み下ろしや輸送などに使われる荷役台のことです。パレットを使うことで、一度にたくさんの荷物を移動することができます。パレット単位で輸送する方法を「パレット方式」や「パレチゼーション」と呼び、作業の効率化からこの輸送方法が導入されるようになってきました。
ただパレット活用にはいくつもの課題があります。
例えば「標準化」。効率のいい輸送に役立つパレチゼーションですが、JIS(日本工業規格)が規定した「T11型」という1100mm×1100mmサイズのパレットの使用率は、日本の生産から消費までの一連の流れの中で、全体の3割程度です。他は各社が独自の規格のパレットを使っています。サイズが違うと積み込む際にすき間ができ、輸送効率が下がってしまいます。
また「地球温暖化対策」につながる課題もあります。
パレチゼーションが発展したことで、レンタカーを乗り捨てするような形で、納品先にレンタルパレットを乗り捨てする仕組みができ、パレットを回収したり返却したりする手間が省かれるようになりました。
しかし近年、あらゆる生産体系が「大量生産」から「多品種少量生産」に変わったことで、使うパレットの量がどんどん増えている現状があります。
農林水産省は「流通に伴う環境負荷低減策」として、パレットを反復して利用する方法を推進していますが、使うパレットの量が増える、すなわちパレットそのものの製造が増えてしまっては、温室効果ガスの発生量を削減する取り組みにはつながらないと考えられます。
不要プラスチックパレット回収の取り組み
流通と環境負荷低減において課題があるパレット。そんな中、不要になったプラスチックパレット回収に取り組む企業があります。
株式会社新日本リプラスは「リサイクル事業を通じて環境保全に貢献したい」と、不要になったプラスチックパレットを回収しています。買取するだけでなく、粉砕・洗浄加工からリサイクル材としての販売まで一貫して行っています。
日本のプラスチックごみリサイクル率は84%と高い数値ですが、その大半は「サーマルリサイクル」。 焼却炉でプラスチックごみを燃やし、その熱をエネルギーとして回収しているという意味合いですが、海外にはこの「サーマルリサイクル」という言葉はありません。
海外のリサイクルの主流は、廃棄されたプラスチックがモノに生まれ変わる「ケミカルリサイクル」や「マテリアルリサイクル」であり、「エネルギー回収」にあたる日本の「サーマルリサイクル」はリサイクルとして扱われていません。
そんな中、株式会社新日本リプラスはプラスチックパレットを生まれ変わらせる事業を行っているのです。
またレフォルモ株式会社も、リサイクル製品に携わり、循環型社会に貢献しています。一般消費者が廃棄したプラスチック性の包装容器を回収し、それらを原料に「エコ素材パレット」を製造しています。
プラスチックのマテリアルリサクルに取り組むだけでなく、それらリサイクル技術を海外に紹介したり、リサイクル工場の立ち上げ、運営のバックアップも行っています。
レフォルモ株式会社が運営する「リユース・パレット・ドットコム」は、新品パレットだけでなく、中古パレットも販売されています。JISが規定する1100×1100サイズの中古パレットの取り扱いもあります。
農業資材以外でできるCO2削減、地球温暖化対策
本記事ではパレットにおける地球温暖化対策について紹介しましたが、農業資材以外でもCO2削減、地球温暖化対策は行うことができます。物流と関わる内容においては「地産地消」が挙げられます。
環境に優しい農業への取り組みとして「エコファーマー制度」などが挙げられます。この制度は、国が制定した「持続性の高い農業生産方式の導入の促進に関する法律(持続農業法)」に基づいた認定制度です。認定には、土づくりや化学肥料・農薬の使用量の低減などに配慮した農業計画を都道府県知事に提出する必要があります。
関連記事:農業で注目されている認定制度。エコファーマー制度とは?
「エコファーマー」の認定を受けて、環境に優しい農業に取り組むのも大切ですが、ここで扱われるのは生産まで。そこで「地産地消」を心がければ、生産物が流通される際、輸送などで排出される二酸化炭素の量を削減することができます。
もちろん、ここまで徹底した農業を行うのは、まだまだ現実的ではないでしょう。ですが、当事者としての意識をもち、地球温暖化対策に関心をもつことはとても大切なことです。
まずは地球温暖化対策に着目した農業資材に関心をもつことから始めてみませんか?
参考文献