農業版BCP(事業継続計画)とは。農業版BCP策定のススメ。

農業版BCP(事業継続計画)とは。農業版BCP策定のススメ。

昨今、自然災害のリスクが高まっています。

農林水産省が公開する「農業経営支援策活用カタログ2023」では、自然災害への備えや減災、被災後の事業継続のために、「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」を活用した「農業版BCP(事業継続計画)」の策定を推奨しています。

 

 

BCPとは

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BCP(事業継続計画:Business Continuity Plan)とは、企業が自然災害や大事故などが発生した際、事業を継続させたり、なるべく短期間で事業を復旧させたりするための方法や手段をあらかじめ決めておく計画のことを指します。

BCPが想定する事業継続へのリスクは、台風や大雪といった自然災害に限りません。新型コロナウイルス感染症の感染拡大もまた、リスクの1つとしてあげられます。

たとえば新型コロナウイルス感染症がリスクとなる場合、感染拡大により人手が集まらなくなる、作業場所を閉鎖して消毒をしなければならなくなるといった事業継続の危機が考えられます。BCPはそういった危機を事前に防ぐための活動です。

BCPの具体例

内閣府が公開する防災情報のページには、地震を経験した企業によるBCPの取り組み事例が公開されています。

たとえば、あるスーパーマーケット企業は地震により店舗の商品や建物が被害を受け、壊滅的な被害を受けた店舗は閉鎖に追い込まれました。しかしその後、“「震災時においても店舗を開店する」という目標を設定し、事業継続への取組に着手”、以下の取組を行いました。

  • 被災地における需要の高い商品の洗い出し
  • 被災経験を反映させたマニュアルの改訂
  • 第二物流センターの設置 など

このような取組を行った結果、3年後に再び地震が発生しましたが、被災した店舗の迅速な営業再開につながっています。

 

 

簡易的な農業版BCPを作る

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農林水産省が公開するフォーマットを使うと、簡易的な農業版BCPを作ることができます。

1.自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト

「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」には「リスクマネジメント編」と「事業継続編」の2種類のシートがあります。そのフォーマットには、耕種用、園芸用、畜産用の3パターンが用意されています。

リスクマネジメント編では、防災・減災の観点から備えておくべき事項についてチェックできます。平時からリスクに備えるための項目と、台風等が襲来する直前対策のための項目があります。たとえば耕種用では以下のような項目があげられます。

  • 自身の地域の自然災害リスクについてハザードマップで確認したことはありますか?
  • 地方自治体等を通じて発信される気象情報や防災情報を確認していますか?
  • 災害時の停電に備え、非常用電源などを確保していますか?

直前の対策については以下のような項目があります。

  • 最新の気象情報、警報、注意報をチェックしましたか?
  • コンテナやプラスチックパレットなど飛来が予想されるものを片づけたり固定しましたか?また、燃料タンク・ガスボンベ等をしっかり固定しましたか?
  • トラクターやコンバイン等の農業機械や各種農機具などを事前に高台や屋内に移動させましたか?

事業継続編では、事業継続の観点から事前に想定しておくべき事項についてチェックできます。たとえば園芸用では以下のような項目があげられます

  • 緊急事態時において一番優先して復旧を行う業務(重要業務)は決まっていますか?
  • 重要業務の目標復旧時間を明確にしていますか?
  • 農業用ハウス、トラクターやスピードスプレイヤー等の事業に不可欠な施設・設備・農業機械等が損壊等により使用できなくなった場合に、重要業務への影響とその対応(代替手段等)は想定していますか?
  • ほ場や作物に重大な被害があった場合に、重要業務への影響とその対応(復旧手段等)は想定していますか?

2.農業版BCP

チェックリスト「事業継続編」の各チェック項目に、具体的な内容を記載することで農業版BCPが策定されます。もちろん、チェックリストの「事業継続編」を使用せずに、農業版BCPを作成することもできます。農林水産省のウェブサイトには、ご自身で記入できる様式「農業版事業継続計画ブランクシート」も用意されています(以下の資料のスライド9枚目に掲載されています)。

「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」 と 「農業版 BCP(事業継続計画書)」を策定しました

 

 

重要なのはBCPを作りっぱなしにしないこと

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農業版BCPを作成したから安心、ということはありません。BCPを機能させるためには、少なくとも年に1度見直しを行い、防災やリスクへの備えが十分かどうか確認することが重要です。

なお、三重県のウェブサイトでは、BCP策定の解説動画や農業用防災事例集など、リスクマネジメントに役立つ情報が多数公開されています。特に、「確認テスト・シミュレーション」のBCPや防災の理解度テストでは、現時点での自分の理解度をはかることができます。ぜひ一度試してみてください。

 

参照サイト

  1. 参考資料 「BCP(事業継続計画)とは」
  2. 農業経営支援策活用カタログ2023:農林水産省
  3. 農業経営の様々なリスクに備えたい
  4. 知る・計画する : 防災情報のページ – 内閣府
  5. 企業の事業継続への取組事例
  6. 「自然災害等のリスクに備えるためのチェックリスト」 と 「農業版 BCP(事業継続計画書)」を策定しました
  7. 自然災害等のリスクに備えるためのチェックリストと農業版BCP:農林水産省
  8. 三重県|担い手・新規就農:農業版BCP(事業継続計画)策定のススメ

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