農業倒産が急増!?農業の倒産動向と今一度知っておきたい農業経営のリスクと対策

農業倒産が急増!?農業の倒産動向と今一度知っておきたい農業経営のリスクと対策

日本農業新聞は2024年4月17日に「農業倒産が過去最多更新 23年度 資材高止まり響き小規模経営に打撃」という記事を公開しています。

民間の企業信用調査会社、株式会社東京商工リサーチによる日本の「農業の倒産動向」調査によると、農業倒産は増加傾向にあります。この調査では負債1,000万円以上の倒産から“日本産業分類の「農業」を抽出し、分析した”ものです。

同調査によると、2022年(1月〜12月)の「農業」倒産は75件で、前年の1.8倍(前年は42件で78.5%増)となりました。なお、2023年は、4月〜2月までの累計が77件に達しており、前年を上回っています。なお、この水準は、2003年以降の20年間で、2020年の80件に次ぐ高水準となっています。

「農業」の分類を細かくみていくと、米・野菜・果樹作などの「耕種農業」が最も多くなっています(2022年では75件中43件、2023年は4月〜2月までの累計77件のうち48件)。

 

 

農業倒産増加の背景

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2019年度に前年比65.1%増と急増した農業倒産の背景には、長年指摘されている後継者不足や人手不足のほか、収益低迷などがあげられます。

コロナ禍に見舞われた2021年度は、コロナ関連支援などで農業倒産の数は減少しましたが、2022年度は深刻な燃料高・飼料高によってコストが増加し、経営を圧迫。2023年度は大手業者の経営破綻は減少しましたが、燃料費や飼料費が高止まりし、コロナ関連支援が縮小したこともあいまって倒産が増加しています。

 

 

農業経営のリスクと対策

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農業経営だけに限りませんが、新型コロナウイルス感染症の拡大や天候不順、自然災害や社会情勢の変化による生産資材の高騰など、予見できない事態に対応しなければならないところに経営の難しさがあります。

言うまでもなく、農業経営にはさまざまな資金が必要です。農地の維持や種苗の購入、農作物を収穫するための設備を設置、維持するための費用などのほか、自然災害への対応費用も必要といえます。これらの費用は自己資金で対応できる場合もありますが、借入を行う必要が生じる出費もあるはずです。

しかし、施設園芸などでは、初期投資の金額が大きいにもかかわらず、収益の安定化がはかれず、資金繰りに行き詰まるといった事例があります。露地栽培の場合、上記と違い、大型の設備投資は不要なことが多いものの、天候不順や自然災害、病害虫などの発生で収益性が悪化し、マイナス分を取り戻せなかったり、そのまま収益性が回復しなかったりして経営破綻に追い込まれるケースがあります。

農業倒産を避けるためにも、起こりうる経営上のリスクを把握し、事前にその回避策を備えておくことが大切です。

栽培体系に限らず、考えられるリスクには以下のものがあげられます。

  • 地震、台風等の自然災害
  • 火災等の人為災害
  • 病害虫の発生を含む技術不足
  • 市場価格の下落
  • 取引先の破綻(販売メイン先の倒産など)
  • 農業経営に携わる者の病気、事故、死亡

そしてこれらリスクへの対策には、たとえば自然災害や人為災害、病害虫の発生に伴う経済損失に対する保険制度や共済制度の活用があげられます。またこのようなリスクに対して、発生時にどのように対応すべきかといった計画書を作成しておくことも効果的です。

そのほか、農業従事者がコントロールできない市場価格の変動に関するリスクに対しては、収穫時期を分散させたり、複数品目あるいは品種の作付のほか、信頼できる取引先と生産・販売契約を結ぶことなどがあげられます。

また日本政策金融公庫は、金融機関が経営が一時的に悪化した経営体への支援方針などを判断する際、その経営体と金融機関の関係が大きな影響を与えるため、融資者である金融機関と良好な信頼関係を築くことも大切であるとしています。

日本政策金融公庫は、ある経営体が資金繰りが逼迫しているにもかかわらず、メインバンクに相談せず、資金調達を消費者金融から行う中、経営改善の見通しがないことからメインバンクからの支援を打ち切られてしまった、という事例を紹介しています

自然災害や新型コロナウイルス感染症などのような一過性の要因で経営が悪化する前から、金融機関担当者を生産現場などへ案内し、生産工程などのイメージを持ってもらったり、実績の報告や経営課題とその改善策を説明することで相互理解を深めたりと、信頼関係を構築することでリスクヘッジの強化につながるといえます。

 

参照サイト

(2024年5月10日閲覧)

 

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