「ワーケーション」と呼ばれる新しい働き方が注目を集めています。
ワーケーションとはワーク(仕事)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語で、旅先で休暇を過ごしながら働くこと。新型コロナウイルスの影響で、「3密」を避けるために職場以外で働く「テレワーク」などの働き方が浸透したことや、長期休暇をためらう人が多い日本であっても仕事をしながら休暇先に足を運ぶことができるので取り組みやすいなど、魅力的な面が数多くあります。
そんな中、ワーケーションの一つとして、農業と休暇を組み合わせたアグリワーケーションが登場しています。
アグリワーケーションの事例と期待されている効果
北海道石狩市が企画したアグリワーケーションプログラムは、参加者が約10日市内に滞在し、週4、5日はプログラムに参加した農家のもとで農作業を行い、残りの時間を休暇やテレワークに充てるというもの。このプログラムを実施することで「関係人口※」を増やし、将来的に地域農業を担う新規就農者を確保することが狙いです。
実際にプログラムに協力した農家の声を見ると、「収穫時期に人手が足りないときに助かる」とあり、人手不足解消に期待が高まります。
和歌山田辺市では、農業体験などができる宿泊施設が新型コロナウイルスの影響でインバウンド(日本を訪れる外国人観光客)などの需要が減少したことに伴い、ワーケーション向けに、仕事ができるような環境を整え、利用を呼びかけています。利用者は農業体験などができる宿泊施設を仕事場として利用しながら、農業など、地域のさまざまな体験を楽しむことができます。
植物工場で行われるアグリワーケーションの事例も紹介します。
元々、農業への新規参入を推進するために、植物工場のレンタルを行っていた会社が始めたもので、トレーラーに積んで移動できる移動型の植物工場に机や椅子を設置し、ワーキングスペースを併設しています。新型コロナウイルスの影響で職場以外で働く機会が増え、働き方改革により副業が解禁された企業もあるので、今後、「空いた時間に農業」という選択肢ができることも十分考えられます。レンタルの植物工場でアグリワーケーションを行うことで、自身に農業の適性があるかどうかを知るきっかけになるのでは、と考えられています。
アグリワーケーションを通じて兼業農家が増えれば、農業に携わる人口を増やすことができるかもしれません。
※その地域と何らかの関わりがある人の数。以前住んでいた、ふるさと納税制度を通じて寄付をしたなど、さまざまな形でその地域とのつながりをもつ人の総数。(出典元:小学館 デジタル大辞泉)
まとめ
ワーケーションは、働き方改革と感染症対策の観点から、地域と都市の両方で注目と需要が高まっていると言われています。新型コロナウイルスの収束が見込めない中、人々が求める感染しない環境、ストレスのない居場所として、地域に広がる豊かな自然は注目されているのです。
農業や食との関わりを加えたアグリワーケーションとなれば、利用者のみならず、企画に参加する農業従事者などにとっても、人手不足解消や認知活動においてメリットがあるはずですし、地域活性化につながることも考えられます。
アグリワーケーションと銘打った企画はまだまだ数が少ないですが、「ワーケーション自治体協議会」の会員は、設立当時の2019年11月には65自治体だったのが、2020年10月29日時点では125自治体に広がっています。JA全中がまとめた「21年度農業関係予算」にも、地域活性化対策としてワーケーションが例に挙げられており、今後も注目が続くと考えられます。
参考文献