2019年末から国内で報道され始めた新型コロナウイルス。2020年7月現在も終息の兆しは見えていません。あらゆる業界が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けていますが、農業界も例外ではありません。
そこで本記事ではアフターコロナの農業のあり方について調べてみました。
世界と日本のコロナウイルスによる影響
外出制限や営業制限、世界中で行われた都市封鎖は、食料供給の流れに大きな混乱を引き起こしました。
新型コロナウイルスが世界中で猛威を奮い始めた時、イタリアは2月下旬から急激な感染拡大に見舞われました。この際、厳しい外出制限や飲食店等の営業制限が行われたことで、家庭での食材需要は急激に増加しましたが、HORECAビジネス(ホテル・レストラン・カフェなどの飲食事業)に流通していた高価格帯製品(ワインや高級肉など)の市場は縮小したと言われています。
「家庭向けの需要が伸びた」と聞くとポジティブにも捉えられますが、家庭向けの需要の割合が市場全体の5%に過ぎない商品もあり、HORECAビジネス向け商品の供給が止まったことによる打撃の方が大きいようです。
また「6次産業」に該当するような事業形態、例えば農業従事者自らが農作物の加工を行ったり、観光ビジネスを行ったり、青空市などの直販ルートを構築したりすることが、イタリアの農家ではビジネスとして成り立っていましたが、厳しい外出制限により、それらの収入源がなくなりました。
スイスでも、3月中旬に外食業界等の全店舗・商業施設の営業停止が始まり、農作物を供給する場が一夜にしてなくなりました。供給の場がなくなった生鮮食品は、破格で直売するか廃棄するしかありません。
2〜4月頃に世界中で起きた都市封鎖、外出制限、営業制限などは徐々に解除されていきましたが、事態が終息したわけではないため、すぐに以前のような生活に戻れるわけではありません。
日本でも外出自粛や営業自粛の動きがあり、外食産業への供給が止まりました。
スーパーマーケットや直売所などで販売される農作物の売り上げは前年比プラスになっていると言われていますが、外食産業向けに契約栽培を行っている生産者や学校給食に卸している生産者の場合、営業自粛や休校措置により売り上げが激減。また観光農園を行っている生産者も外出自粛による影響を受けています。
アフターコロナで農業はどう変わる
「新型コロナウイルスの影響で食料サプライチェーンは壊れた」とも言われています。しかしこのことが、新たな価値観や農業のあり方を生み出すかもしれません。
アフターコロナに期待される持続可能な農業の形
今後、世界中で都市人口が増加すると推測されています。新型コロナウイルスの影響で食料サプライチェーンが壊されたことで、都市への食料供給ルートについて考える必要が出てきました。
そこで期待されているのが「地産地消」や「都市農業」の発展です。
食料生産を農村部に依存するのではなく、都市で生産し、消費する方法です。近年、人工的な条件で農作物を育てる植物工場が注目されています。中には人手を必要としない、機械化が進んだ植物工場もあります。従来の露地栽培のような環境は必要としないため、都市部でも取り組みやすい農業の形といえます。
現在の制約条件が新しい流れを生み出す
営業制限や営業自粛を余儀なくされた外食産業がテイクアウトに目を向けたように、外出自粛や営業自粛などの制約条件が新たな流れを生み出すかもしれません。
これまでもインターネット通販(以下、EC)は存在していましたが、新型コロナウイルスの影響で、EC活用は加速していると考えられています。実際に、外食産業や給食向けに農作物を卸していた農業者がECやクラウドファンディングなどを活用し、破格で販売するか廃棄するしかなかった農作物の新たな行き先を作り出しています。
国産の価値が高まる
世界中で新型コロナウイルスへの対策がとられる中、輸出制限措置を導入する国もあります。海外から輸入される農作物が減少することで、国産の価値が高まることが期待されています。先で紹介したようなEC活用で、消費者の目が国産農作物に向けば、国産の価値を高める良い機会になるかもしれません。
参考文献