病害に対する植物の抵抗性とは。静的抵抗、動的抵抗とは何か。

病害に対する植物の抵抗性とは。静的抵抗、動的抵抗とは何か。

温暖化の影響などによる生育環境の悪化や病原菌、害虫による被害など、植物はさまざまなストレスにさらされています。植物がさらされるさまざまなストレスの中でも、植物は病原体の侵入・感染に対して抵抗することが知られています。

植物が病原体に抵抗する手法には、静的抵抗と動的抵抗の大きく2つに分けられます。

 

 

静的抵抗と動的抵抗とは

病害に対する植物の抵抗性とは。静的抵抗、動的抵抗とは何か。|画像1

 

静的抵抗とは、植物がもともともっている性質を表します。これは病原体が侵入したり蔓延したりするのを防ぐ抵抗性で、詳細は後述しますが、たとえば表皮の厚さや硬さ、植物の成分としての抗菌物質の含有などがあげられます。

一方、動的抵抗は病原体に感染することで発生するものを表します。植物体を攻撃してくる微生物やウイルスに対して積極的に反応する防御反応で、病原体の攻撃を受けることで、健全な植物には見られない生化学的な変化などが生じます。

静的抵抗の具体例

病害に対する植物の抵抗性とは。静的抵抗、動的抵抗とは何か。|画像2

 

先述したように、表皮の厚さや硬さは静的抵抗の代表といえます。よく知られているのはクチクラ層です。クチクラ層とは、「表皮細胞の外側に分泌されたロウ質の層のこと」で、「水の蒸発を防ぐ、葉を保護する、などの役割」があります(出典元:「クチクラ層(クチクラそう)く | 農業・園芸用語集 | タキイ種苗株式会社)。

これは病原体の胞子が付着したり、菌糸が侵入したりするなど、病原体が植物体内へ貫通するのを防ぐ物理的な障壁として機能しています。

また、いくつかの植物体内に含まれるカテキンやポリフェノールなどの物質は抗菌性を示します。たとえば、タマネギ皮の色が黄色のものは白色のものに比べ炭疽病や灰色かび病にかかりにくいといわれていますが、その理由は、黄色の皮には多くのカテコールやカテキン酸といった抗菌性物質が含まれていることがあげられます。

動的抵抗の具体例

植物の動的抵抗には物理的な反応と化学的な反応があります。

まず物理的な反応には、細胞の硬化があげられます。たとえば病原体が植物体内への侵入を始めると、その感染の刺激により、細胞内にリグニンなどの多糖類が合成されて、植物の細胞壁に付着します。それにより細胞壁が厚く固くなり、細胞全体の強度が高まります。このことで、病原体のさらなる侵入や感染を阻止します。

また、病原体に侵入された表皮の細胞壁内部に、その病原体の侵入糸を取り囲むように乳状突起が生じます。この突起はパピラと呼ばれています。パピラによって細胞内部への侵入を妨害します。

化学的な反応の中で代表的なものにはファイトアレキシンの合成があげられます。ファイトアレキシンとは、病気に罹っていない植物の組織にはほとんど存在していないが、病原菌の感染を受けると多く産生される抗菌性物質のことを指します。この抗菌性物質は病原体の侵入や増殖をおさえる働きがあります。

また植物が病原体に感染した時、病原体と接触した植物の細胞や周辺の細胞が急激に壊死することがあります。これは「過敏感反応」と呼ばれるもので、壊死した細胞は物理的な障壁となって病原体の拡散を阻止します。

ほかに、「感染特異的タンパク質」と呼ばれる、身を守るために生成されるタンパク質があります。これは病原体に感染した時のほか、高温にさらされた時や傷を負った時などにも同様のタンパク質が作られることがあります。

 

参考文献:夏秋啓子『植物病理学の基礎』p.16〜19(農山漁村文化協会、2020年)

参照サイト

(2024年7月22日閲覧)

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