耕作放棄地の活用で新たなビジネスがスタート!?耕作放棄地の活用で注目の事例2選

耕作放棄地の活用で新たなビジネスがスタート!?耕作放棄地の活用で注目の事例2選

耕作放棄地とは、かつては作物が育てられていたが今は利用されていない土地を指します。

農林水産省では

以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地

引用元:農林業センサス等に用いる用語の解説

と定義されています。

農業従事者の高齢化や後継者不足などが原因で、耕作放棄地は増加傾向にあります。農地の減少にもつながるため、食料自給率低下の原因にもなります。

しかしそんな耕作放棄地に価値を見いだし、新たな取り組みを始めている人たちがいます。本記事では、耕作放棄地の活用で注目を集めている2つの事例を紹介していきます。

 

 

活用事例①耕作放棄茶園を再生する

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近年、茶畑の耕作放棄地も増加傾向にあります。たとえば宇治茶の主産地として知られる京都府和束町では、茶農家の数がここ10年間で約100戸減少し、10年前には約9.4ヘクタールだった耕作放棄地も、2018年度には38.5ヘクタールに拡大しています。

しかし耕作放棄地を活用した人たちは、耕作放棄茶園に「自然栽培ができる」という共通の価値を見いだしていました。というのも、耕作放棄地は長く人の手が入らなかった分、農薬飛散もなく、自然と無農薬栽培状態になっていたのです。

また耕作放棄茶園には「在来種」が残っていることもあるようです。在来種は、収穫時期や品質をそろえることが重視されたことで、市場価値が下がり、それが茶園が放棄された要因として考えられていますが、現代では在来種の、環境ごとに味わいが異なる特徴が付加価値になります。

京都府和束町の茶農家は、耕作放棄したことで生まれた価値を利用し、肥料なしでも味の良い微発酵茶「白茶」を作っています。

奈良県宇陀市は、耕作放棄地の活用事例だけでなく「循環型農業」の事例として見ることもできます。自然栽培で作物を生産する際、必ずといっていいほど雑草とりの作業が生じるのですが、その作業や冬場の刈り取り、焙煎作業を働く場として提供しています。また焙煎には、化石燃料ではなく、奈良県内の山林で出た間伐材を利用することで、地元の林業を支えながら、二酸化炭素排出の抑制につとめています。

 

 

活用事例②化粧品用アルコールをつくる

 

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株式会社ファーメンステーション(以下、ファーメンステーション)は、放棄された休耕田を利用して化粧品の原料となるエタノールを製造しています。

多くの化粧品にはエチル・アルコール(エタノール)が使用されています。日本ではほぼ100%輸入に頼っており、また原料(トウモロコシやサトウキビなど)の栽培方法、加工方法はあまり意識されていないのが現状です。

このような現状といまの環境に対する意識の高まりから、ファーメンステーションは「無農薬、無化学肥料で育てた米で作る国産エタノール」にニーズがあると考えました。そして放置された休耕田に対し「田んぼを生き返らせたい」という農家の声をうけ、エタノール製造を始めたのです。

現在では、エタノール製造のみならず、それを利用した商品開発も行われています。

また従来廃棄物とされていた、米を発酵する過程で生まれる「米もろみ」を飼料として卸したところ、それを食べた鶏の卵が「おいしい」と評判になり、地元で大人気に。これを筆頭に、ファーメンステーションは未利用資源を活かす企業等と連携し、地域の資源を循環させています。このサステナブルな取り組みは、国内外から注目を集めています。

活用事例は他にもたくさんあります。農林水産省の耕作放棄地対策事例集 荒廃農地の再生利用に向けた取組主体別事例には幅広い事例が掲載されています。興味のある方はぜひチェックしてみてください。

 

 

耕作放棄地の活用のために知っておきたいこと

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耕作放棄地に価値を見いだし、新たなビジネスをスタートさせた事例を紹介しました。

実際に、耕作放棄地を活用したい場合には、以下の点を確認しておく必要があります。

  • 現地を事前調査し、再生作業を計画する
  • 再生した耕作放棄地の状態などを考慮して、品目を考える

耕作放棄地は長年の放棄により、排水不良など、その環境が耕作に適さない場合があります。そのため、まず土づくりや排水対策などを行う必要があります。

もし耕作放棄地を再生しても圃場の条件が悪い場合には、日陰でも栽培できる作物のような、悪条件でも栽培しやすい品目を選ぶのがおすすめです。その他、手間がかからない品目(ソバやイモ類など)や保全管理用の品目(レンゲや菜の花など)、条件がよければ野菜や果樹など収益が上がる品目を植えるのがおすすめです。

また耕作放棄地での農業再開を支援する補助金制度があります。「荒廃農地等利活用促進交付金(平成30年度の内容)」や地方自治体が独自に用意する補助金制度を確認してみましょう。

支援を受けるには条件を整える必要があります。対象者であるかどうか確認し、実施要件などをしっかりと確認しましょう。また営農計画書などの具体的な内容を用意する必要もあります。何事も事前準備が大切です。

 

参考文献

  1. 美しい茶畑景観「守りたい」 耕作放棄園で茶摘み、発酵茶作る 京都新聞
  2. 耕作放棄地を宝に変える!お茶が持つ1000%の可能性 WEDGE Infinity
  3. 川内イオ, 『農業新時代 ネクストファーマーズの挑戦』, 2019年10月20日, 文春新書
  4. 株式会社ファーメンステーション
  5. 耕作放棄地再生利用のすすめ(解消に向けたポイントと実践事例) 岡山県

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