ドローンやロボット、AI技術を活用した「スマート農業」は珍しい存在ではなくなりました。目まぐるしい変化は止まることを知りません。もうすぐ2020年がやってきますが、それから10年後、2030年の日本は、そして農業分野はどうなっているのか、その予測について紹介していきます。
2030年に考えられること
2030年の未来予測の中で、農業分野に関連するであろう項目をピックアップしていきます。
人口増加
世界の人口は増加し、平均寿命も延びます。世界人口は2015年には73億人でしたが、2030年には85億人に到達する予測です。2030年には65歳以上の人口が10億人に達するとも言われています。
ただし日本の人口は減少傾向にあり、2010年に約1億2800万人だった人口は、2030年には1億1600万人に減少すると予測されています。
世界の人口増加により、食糧供給の不足が危ぶまれていますが、日本はそれと同時に、食糧を生産する人口の減少についても考えなければなりません。人口増加をチャンスと捉え、生産物を輸出しようとしても、労働力が足りず、十分な生産ができない可能性も考えられますよね。
もちろん「スマート農業」の発展が、その課題を解決する糸口になるとも言えますが。
農業人口
農業人口も著しく減少することが予測されています。
日本農業新聞は「2030年の予測で、中国四国地方の8割の地域で農家減少が止まらない」という記事を出しています。
中国四国農政局が2019年10月にまとめた「2030年の基幹的農業従事者の増減率」によると、2015年と比較したとき、中国四国地方の2166地域(旧市町村単位)のうち1690地域、78%の地域で基幹的農業従事者が減少すると予測されました。徳島県においては、市内全域で40%以上の減少が予測された自治体もあります。
この予測結果は、農業従事者の高齢化と、後継者不足によるものです。また中国四国地方は中山間地が多く、農地集積や農業経営の規模拡大が難しい点も要因として挙げられます。
都市農業が発展する
2030年は、人々が都市に集中すると予測されています。人が集まると食料が必要になります。従来は、生産地から人々が暮らす都市へと農産物が運ばれていましたが、効率や流通コストの面から都市農業が発展することが考えられます。
都市化が進み、人気の都市に人々が集まるようになると、生活費が高くなります。また予測されている人口減少により、労働力が不足すると、流通にかかるコストが高くなっていくことでしょう。もちろんその頃には、人手を必要としない技術の発達も考えられますが、都市農業が発展すれば、より効率よく都市に暮らす人々に食料を供給することができます。
気候変動
2019年9月23日、ニューヨークで開催された国連気候行動サミットでのグレタ・トゥーンベリ氏のスピーチにハッとさせられた人は少なくないでしょう。
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球の平均気温の上昇を産業革命前から1.5℃に抑制する目標を掲げていますが、2030年には1.5℃上昇してしまうことが予測されています。
気候変動によって海面上昇や干ばつ、洪水、水源が変わってしまうなど、あらゆる影響が起こることが考えられます。
透明性が高まる
さまざまな情報が飛び交う世の中ですが、2030年になれば、よりいっそう情報がオープンなものになるでしょう。消費者が商品を選ぶ理由に「透明性の高さ」が加わるかもしれません。
牛や米などのトレーサビリティ(物品の流通経路が追跡可能な状態を指す。生産から消費あるいは廃棄まで追跡することができる)などのように、二酸化炭素排出量や雇用している人の最高賃金などの情報を開示する必要が出てくるかもしれません。
スマート農業の普及に期待されること
まずスマート農業は、農業人口の減少による担い手不足、後継者不足を解決する手立てとして期待されています。
植物工場のような、人の手を使わずに農作物を栽培する方法はすでに存在しています。ロボットやセンシング技術が、圃場の見回りや収穫作業を担っている事例もあります。AI技術が発展すれば、ロボットの自律的な動作も可能になるでしょう。そうなれば、人手不足に頭を抱える必要もなくなります。
また膨大なデータを集め、分析し、必要な情報を提示する技術は、「気候変動」への対応策にも、「都市農業化」や「透明性が高まる」ことにも役立つことでしょう。
スマート農業には、2030年に起こりうるネガティブな予測を跳ね返す力もあるはずです。スマート農業の発展は、未来予測とともに目が離せない重要なトピックになることでしょう。
参考文献