農業機具や農業機械を長く使うためには整備がかかせません。そこで本記事では、長持ちさせるための手入れの基本と身近な農具のサビを防止するアイデア、農業機械等のセルフメンテナンスを行う際に参考にしたいアイデアなどをまとめました。
長持ちさせるために覚えておきたい手入れの基本
まず、基本中の基本ですが、農具は使用の都度、丁寧に水洗いをし、天日で乾燥させましょう。サビ防止には、水気を切ることが重要です。ただし、農具を保管する際は、暗く乾燥した場所に保管しましょう。乾燥させるのに天日は効果的ですが、長い時間日光に当てたり、湿度が高い場所に置くと、機具の劣化につながります。
サビ止めを塗る際は、「水洗い→天日乾燥」後に行いましょう。
サビ防止に役立つアイデア
刃物類がぐんと研ぎやすくなる!?サビ防止アイデア
剪定ばさみや鎌などの刃物類を研ぐ際、砥石と水を用いている人は少なくないはず。この際、水の代わりに油を使うと、サビに強くなります。また使用した油がそのまま潤滑油の役割を果たし、ハサミなどの動きが軽くなり、切れ味もよくなります。
用意するものは
- 油(廃油でもよいが、食べ物を切る刃物を研ぐ際はサラダ油がよい)
- 油砥石(工具類の刃を研ぐための道具。金物屋等で取り寄せることができる)
- 歯ブラシ(使い古しでよい)
- 細かい粉(灰や歯磨き粉、クレンザーなど)
- 拭き取り用の布
です。以下、手順を記載します。
- 歯ブラシに油をつけてから粉をつける
- 1を研ぐ刃物の刃に塗る
- 片方の手で研ぐ刃物を持ったら、もう片方の手で油砥石を動かし、研ぐ
- 研ぎ終えたら、拭き取り用の布で刃物についた油を拭き取る
従来の砥石で研ぐ場合、剪定ばさみなどはネジを外さないと刃物部分を研ぐのが難しいのですが、コンパクトなサイズの油砥石であれば、剪定ばさみなどの研ぎにくいものも研ぎやすくなります。
設備や農具のサビ止めに油を塗る際に便利なアイテム
農文協編『農家が教える便利な農具・道具たち 選び方・使い方から長持ちメンテナンス・入手法まで』(農山漁村文化協会、2010年)に掲載されているアイデアの中に、サビ止めの油を設備に塗るための独創的なアイテムがありました。
その農家さんは、鳥獣害被害を防止するために、鉄パイプを使って防止柵のような設備を作りました。その際、合わせて購入した防錆塗料をパイプの表面に塗りましたが、パイプの内側がサビに無防備なことに気づきました。
パイプの内側にもサビ止めを塗ることができるように作り上げられたのが専用の筆です。
用意するものは
- 細竹
- 軍手(使い古しでよい)
- 針金
作り方は簡単で、細竹の先に軍手を針金でくくりつけるだけ。
軍手の部分をサビ止め用の油に浸し、鉄パイプの中に入れることで内側に油を塗ることができる、というものです。
これを使うと、有刺鉄線などにも油が塗りやすくなります。有刺鉄線に塗る際は、なでつけるように塗ると軍手部分が引っかかってしまうので、たたくように塗るのがよいのだとか。
サビ止めにしばしば活用される「廃油」に関する注意点
先で紹介した書籍やサビ止めに使えるアイテムとして、度々「廃油」を目にします。確かに廃油は、それ以上使い道のない廃棄物として扱われているため、タダでもらうことができ、その点では市販されている専用のサビ止め油を購入するよりも安く済むのは事実です。また固化しないので、ハケで塗ったり、スプレーで吹きつけたりしやすいので、隅々に塗ることができます。
ただ、固化しない分雨水に流れやすかったり、それにより室内に運び込むと床を汚したり、滑りやすくなる原因になったり、といったデメリットもあります。農具のプラスチック部分に付着したまま放置するとひび割れの原因になるとも言われています。
それからガソリンスタンド等でタダでもらえるかもしれませんが、廃油は産業廃棄物として処分されるものですから、使いきれずに余ってしまった時などは、産業廃棄物処理業者に連絡して処分を依頼する手間などがかかります。
油を使い切れなかった時等の処理にかかる手間は、市販の油だろうがタダで手に入れた廃油だろうが同じかもしれません。ですが、市販の油なら商品ラベル等に注意書きが記載されているはずですから、留意点等が把握しやすいでしょう。
専用のものを使い、適切な処理を行うことをおすすめします。
参考文献
- 農文協編『農家が教える便利な農具・道具たち 選び方・使い方から長持ちメンテナンス・入手法まで』(農山漁村文化協会、2010年)
- クワの手入れ|農作業のツボ|お知らせ・イベント情報|相談できる農業・園芸資材専門店 JAファーム
- 農機具の錆止めとして、廃油に灯油を混ぜたものを吹き付けると聞きました。実際はどうなのでしょう?もし可能としたら、何対何の割合でしょうか?|教えて!住まいの先生|Yahoo!不動産
- 農業に伴う廃棄物の適正な処理