データで見る耕作放棄地

データで見る耕作放棄地

耕作放棄地とは?

データで見る耕作放棄地│画像1

以前まで田畑として耕していた土地で、過去1年以上作付されておらず、また数年の間に作付けをする意思のなくなった土地を「耕作放棄地」と呼びます。統計上の用語であり、作付けする予定のない田畑、果樹園が該当します。世界農林業センサスで定義づけられた用語です。

似たような言葉として「荒廃農地」がありますが、こちらは使用されていない農地を客観的に捉えたものと考えてよいでしょう。もっと言えば、耕作を放棄したことにより荒廃してしまい、その土地で従来の農作業を始めても、客観的に見て作物栽培が困難だとされる土地を指します。

「荒廃農地」には再生利用が可能なものと、再生利用が困難と見込まれるものがあります。再生利用が可能な荒廃農地であれば、区画整理や整地など農地として再生できるように努めれば、耕作できる土地へと復元できますが、それには手間と費用がつきものです。
これらの用語、定義を踏まえたうえで、データを見ていただければ幸いです。

 

日本全国の耕作放棄地の増加

まず日本全国の耕地面積から見ていきましょう。平成29年度までのデータを参考に見ていくと平成29年度の耕地面積は444万4,000haです。これは前年に比べ2万7,000ha減少、0.6%減少した数値です。

田畑別耕地面積の推移
年次 田畑計(ha) 田(ha) 畑(ha)
平成20年 4,628,000 2,516,000 2,112,000
平成21年 4,609,000 2,506,000 2,103,000
平成22年 4,593,000 2,496,000 2,097,000
平成23年 4,561,000 2,474,000 2,087,000
平成24年 4,549,000 2,469,000 2,080,000
平成25年 4,537,000 2,465,000 2,072,000
平成26年 4,518,000 2,458,000 2,060,000
平成27年 4,496,000 2,446,000 2,050,000
平成28年 4,471,000 2,432,000 2,039,000
平成29年 4,444,000 2,418,000 2,026,000

また耕地の増加・減少を表したデータは以下の通りです。

耕地の増加・減少要因別面積の推移(単位:ha)
年次 拡張(増加要因) かい廃(減少要因) 荒廃農地
平成20年 2,010 23,900 9,760
平成21年 1,570 21,200 9,770
平成22年 1,740 17,700 7,790
平成23年 1,900 33,400 7,870
平成24年 5,620 17,400 6,940
平成25年 7,140 19,800 9,530
平成26年 6,930 26,200 13,000
平成27年 4,380 25,900 13,500
平成28年 4,530 29,900 16,200
平成29年 6,060 32,500 19,300

わかりやすくグラフ化すると、以下の通りです。荒廃農地が緑色で、増加要因が青色、減少要因が赤色で示されています。

データで見る耕作放棄地│画像2

平成24年に一度耕地が増加し、減少要因が大幅に減少していますが、荒廃農地(すなわち客観ベースで見た時、農地として再生することがやや困難な土地)が増加しているのがわかります。単純計算すると、荒廃農地はここ10年で9,540haも増加しています。

なお減少要因である「かい廃」とは、田畑を農地以外の利用方法に転換し、農作物の栽培が困難となった土地を指します。自然災害、人為かい廃(植林する、宅地化するなど)によって生じるもので、耕作放棄地は人為改廃の一つです。

このデータからは“耕作放棄地”がどれほど増加したのかを得ることが出来ませんが、少なくともかい廃した農地はここ10年で8,600haも増加しているのです。

平成24年度の増加要因・減少要因の大幅変化
平成24年度の増加要因・減少要因の大幅変化について調べてみると、農地法が改正された年だということが分かりました。この法の改正は、一般法人、今まで農業に従事してこなかった個人事業主や株式会社が農業に参入しやすくなるよう、また農地を取得する際の下限面積を自由化しようという、農業参入促進を目的として行われました。食料自給率50%達成のために行われたこの施策は、耕作放棄地の発生抑制・再生も狙いとしてきました。しかし想定したよりも効果が得られなかったため、グラフの通り、大幅な変化が生じた平成24年度から、再び「荒廃農地」「かい廃(減少要因)」は増加してしまったのです。

 

全国農業地域別の耕作放棄地の増加

全国の田畑合わせた耕地面積は444万4,000haで、前年より0.6%減少でした。増加要因としては

・荒廃農地の開墾
・東日本大震災の復旧
・熊本地震からの復旧

が挙げられている一方で、

・耕地荒廃
・工場、宅地などへの転用
・自然災害

が減少要因として挙げられています。
全国農業地域別で見ると、

田畑計の耕地面積及び増加・減少要因別面積
全国農業地域 面積(ha) 前年対差(ha) 拡張(ha) かい廃(ha) 荒廃農地
全国 4,444,000 Δ27000 6,060 32,500 19,300
北海道 1,145,000 Δ1000 507 1,720 592
東北 838,100 Δ5100 1,440 6,540 5,340
北陸 311,100 Δ1200 180 1,390 456
関東・東山 719,000 Δ5900 1,330 7,200 3,520
東海 257,700 Δ2200 360 2,600 897
近畿 223,400 Δ2300 176 2,420 1,280
中国 240,000 Δ1600 571 2,170 1,390
四国 136,700 Δ1300 68 1,390 911
九州 535,100 Δ5500 973 6,440 4,390
沖縄 38,000 Δ200 454 644 479

となっており、耕地面積の減少が顕著な「関東・東山」、「九州」「東北」は、前年に比べてそれぞれ0.6%、0.8%、1.0%減少したことが分かります。東北と九州の要因は、増加要因として“復旧”と挙げられているものの、やはり自然災害によるものではないかと考えます。

一方、関東・東山における耕地面積の減少は、2022年以降に訪れると予想される生産緑地問題により加速するのではないかと考えられます。

生産緑地
生産緑地とは、都市における生活環境の保全や、都市災害の防止対策などを目的として、市街化地域内の農地を対象に指定された地区を指します。
1974年当時、深刻な住宅不足により農地の宅地化が促されました。この時施工された「生産緑地法」では、農地の多くが宅地へと転換されていきます。1992年に同法が改正。農地として保全される「生産緑地」と宅地転用される農地が分けられました。都市農地が、住宅のためになくすものから、都市環境のために残すものへと変わっていったのです。
しかしこの法の適用期限は30年後の2022年。現状、農業従事者の高齢化や後継者不足などの理由から、生産緑地を所有しきれなくなる人がいます。この場合、市区町村の農業委員会に土地の買取を申し出るのですが、市区町村の予算不足などの理由で、生産緑地の買取実績はほとんど見られていないと言われています。生産緑地を他に買う者がいないと、この指定は解除されます。
すなわち現在の日本が抱える問題が解消されぬまま2022年を迎えると、所有しきれなくなった「生産緑地」が次々に手放され、農業経営の規模が小さくなるのではないでしょうか。

 

具体的な数字に置き換えると

データで見る耕作放棄地│画像3

耕作放棄地の広さをhaで表してきました。が、haはいまいち馴染みのない単位です。そこで東京ドームで換算し、平成20年から29年までの耕地面積の現象を表してみました。
東京ドーム(0.047 km²)で換算すると、ここ10年で増加した「かい廃(減少要因)」は8,600haなので、およそ1839個分です!なかなか膨大な数ですね。

 

食料で置き換えてみると

田限定になりますが、減少した面積でどれくらいのお米を作れるかを見てみましょう。
田んぼの場合1haで6000kgとして計算すると、51,600,000kg=51,600t・・・規模がどんどん大きくなっていきますが、1tは人間の体重で約17人分。となると、数にして約87万人強。もはや何で置き換えても、大きすぎる数値となります。

米俵で換算すると860,000俵。

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1俵=60kgで計算

日本人1人あたりの米の年間消費量を現在約55kgと換算すると
51,600,000÷55=938,181.888
となるため、約1万7千人分(年間)の米に換算されます。

データで見る耕作放棄地│画像5

まとめ

食料自給率が年々下がっている日本において、耕作放棄地の増加がどれくらい致命的な事かイメージ出来たでしょうか。もちろん耕作放棄地を有効活用すべく、ソーラーパネルを置いてエネルギー事業に着手し、パネルの日陰でも生育良好なシソなどの作物を育てて、一石二鳥な取り組みを行う農地もあります。農業の衰退に歯止めをかける工夫が必要になりますね。

 

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