火山大国日本での、農業への被害と対策について

火山大国日本での、農業への被害と対策について

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近年、日本の火山の活動が活発化しています。
2018年3月6日には、宮崎・鹿児島の県境にある霧島連山・新燃岳(しんもえだけ)が7年ぶりの爆発的噴火をしました。狭い国土でありながら、世界でも有数な火山大国である日本。

「概ね過去1万年以内に噴火した火山及び現在活発な噴気活動のある火山」は「活火山」と定義されるのですが、2017年現在、111もの活火山が日本に存在しています。
小規模な噴火は度々発生しており、「大規模な噴火が起きない」とは決して言い切れないのが現状です。

火山の噴火は天災なので起きてしまっても仕方のないことなのですが、農業従事者にとっては絶対に起きてほしくない災害のひとつです。

 

火山の噴火が農業に与える影響

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火山噴火で発生するのが降灰です。降灰による被害には、
 ・作物の生育不良
 ・品質低下
 ・農業機具の故障
などが挙げられます。

例えば2018年3月の新燃岳で発生した噴火により、野菜や原木シイタケ農家は大きな痛手を受けました。灰が野菜の葉の間などにたまってしまうと出荷することができなくなると言います。
火山噴火によりハウス一面が灰に覆われてしまい、除去作業に追われる農家も少なくありません。

被害を受けた原木シイタケ農家の場合、灰を落とせば品質に影響が出ない商品ではあるものの、灰を落とす作業が加わることで生産効率が著しく落ち、頭を抱えています。
収穫最盛期にも関わらず、2万本あるうちの3分の1しか収穫が叶わないため、農業収益が半減することが予想されます。

また降灰は、作物以外にも被害を及ぼします。灰が降り積もったがゆえに、800万円もの農機が故障してしまい、頭を抱える農家も少なくありません。天災のため、誰のせいでもないのですが、収穫間近の野菜やすくすくと成長している過程の野菜が被害に遭うことを考えると、とても歯がゆい気持ちになります。

 

降灰の対策について

農業従事者にとって、起きてほしくない天災である火山噴火。
そんな天災で歯がゆい思いをしないために、降灰への対策法をご紹介します。

・対策1 火山灰が直接つかないような栽培方法を
火山灰が農作物の葉や茎につくのを防ぐために、あらかじめ被覆資材を用い、直接付着するのを防ぎましょう。農作物にトンネルなどの被覆資材を被せる、また、大規模な被覆栽培を行う場合には、灰が降り注ぐのは防げても、大量に降ってきた灰で施設時代が倒壊する可能性があります。ハウスを補強することで、灰の被害に耐えられるように準備しておきましょう。

・対策2 灰が付着した場合には、迅速に除去する
農作物も農機具も、灰が付着したままにするのはNGです。ブロワーによる送風や高圧散水で落とします。もし灰により茎葉の一部が枯死していた場合には、早めに刈り落とし、周辺に影響が出ないように追肥などを行い、回復に努めましょう。なお、降灰下で作業する場合には、自分の体を守るために、防護めがねや防塵マスク、長袖、長ズボン、を着用するなど、火山灰に触れないよう注意しましょう。

・対策3 積極的に情報収集を
噴火予測は、まだ100%ではありませんが精度が上がっています。
そのため、噴火情報(予報、警報等)に注意を向け、被害を回避する心がけをしましょう。また火山灰による土壌の酸度変化も不安かと思いますが、灰の成分分析を行い、強酸性の場合は石灰などで中和すれば対応はできます。

 

JAや国が行う火山対策

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噴火の影響で農業用水が使えなくなってしまった地域では、400haの水田で水稲の作付けが中止となりました。しかしこのままでは農業収益が減少する一方です。
そこでJAグループが行なった支援が、「食用作物」から「飼料用作物」などへの転換です。極端な収益減を抑える取り組みが行われていたのです。

ただし降灰被害による影響が大きいと、「飼料用作物」にすら使うことができない場合もあります。お茶や牧草においては、噴火が長引き、降灰被害が拡大すると飼料用にも活用することができません。
この課題が、火山噴火における一番の難題と言えるでしょう。
なおJAは「火山噴火後に流通している農畜産物は、問題のないものである」ことを、流通関係者や消費者に正しく知ってもらうために呼びかけています。

国は、活火山法に定める

 ・防災営農施設整備計画
 ・防災林業経営施設整備計画
 ・防災漁業経営施設整備計画等

に基づいた対策を実施しています。
分かりやすく説明すると、これらの計画に基づき、国と被害を受けた県とが連携しながら、

 ・石灰資材や有機資材を投入して行う土壌矯正
 ・人工的に水を供給する施設の整備
 ・被覆対策や洗浄対策
 ・避難施設の緊急整備

を実施します。

 

まとめ

世界でも有数の火山大国・日本ですが、活火山の噴火を私たち人間がコントロールすることはできません。
噴火予測も昔と比較すると精度は上がってきていますが、予測が100%当たることはありません。火山対策も噴火した後のものがメインとなっており、事前対策をたてておきにくいのが現状です。
しかし大切なのは、「いつ噴火が起こるのか誰もわからない」という前提を心に留めておくことと、噴火が起きたときにどうすべきか情報をあらかじめ把握しておくことではないでしょうか。噴火対策のために、設備を万全にすることは難しいと思いますが、情報や知識を増やすことで、対応しやすくなります。
噴火に対する事前シミュレーションを、考えておいてもいいかもしれません。

 

 

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