10月12日から13日にかけて長野県内を通過した台風19号は、100年に1度とも言われる記録的豪雨をもたらしました。その影響で、長野市内を通る一級河川・千曲川の堤防が決壊。そのポイントは、りんごの樹や観光農園が建ち並ぶことから『アップルライン』の愛称で親しまれていた国道18号線のすぐ近くでした。
浸水被害によって存続の危機に瀕したこの地域の果樹産業を立て直し、未来へと繋がる持続的かつ創造的な復興を目指すため、『長野アップルライン復興プロジェクト』を発足。2019年11月12日(火) 9:00より同団体の活動資金を募るクラウドファンディングを開始しました。
台風19号で浸水した信州りんごの名産地。創造的な復興を皆様とともに目指したい。|GoodMorning(グッドモーニング)
https://camp-fire.jp/projects/view/205630
このたび浸水被害を受けた長沼地区(大町、穂保、津野、赤沼)は、歴史的にも千曲川の氾濫に悩まされてきた地域です。明治時代には養蚕が盛んでしたが、先人達が知恵を絞り導入したのが、水害に強いとされるりんご栽培でした。りんごの木は比較的、水害に強いとされ、徐々に栽培が広がりました。2018年産のリンゴ収穫量は長野県が14万2000トンで青森県に次ぐ全国2位でしたが、そんな長野でも、りんご畑や観光農園が建ち並ぶアップルラインは象徴的な存在です。
しかしながら、無残にも堤防が決壊した周辺地域の約200ヘクタール(東京ドーム43個分)が浸水。浸水域以外にも長野県内全域の農地に大きな被害を及ぼし、長野県内のりんご被害額は約7億3000万円(10月24日現在)とされています(農地や樹木、農機具などへの被害は除く)。
『長野アップルライン復興プロジェクト』代表の徳永 虎千代(とくなが とらちよ)と申します。曾祖父の徳永初太郎は旧赤沼村の村長を務め、明治時代にりんご栽培を先駆的に取り入れた一人でした。それから100年以上のときが経ち、私は当農園(現・フルプロ農園)の4代目にあたります。
再び皆様のもとへりんごを届けていくためには、当然ながらまずは農家それぞれの自宅や畑のいち早い復旧が必要です。長野はすでに冬が訪れつつあり、気温が低く日照時間の短いこれからの時期の復旧作業は困難を極めます。継続的な人的支援と資金的支援、それらを受け入れる体制整備が急がれます。
しかしながら、私たち農業従事者が向き合わなければならないのは、手前にある災害復旧だけではありません。高齢化、耕作放棄地の増加、担い手不足…。災害以前に取り組んできた農業課題は変わらず存在します。いや、被災によってこれらの解決はより難しくなったと言えるでしょう。事実として、被害を受けた農家さんのあいだでは「もう農家を辞めるかもしれない」という声も出ています。
辛い現実が目の前に広がっていますが、この困難に立ち向かわなければ、皆様にりんごを届けることも、アップルラインの復旧も叶いません。この地域の未来を切り拓いた徳永家の人間として、山積する課題へと向き合う覚悟を固めました。このたび立ち上げた『長野アップルライン復興プロジェクト』を通じて、災害復旧と農業課題の両面に立ち向かいます。
『長野アップルライン復興プロジェクト』では、当農園がこれまで取り組んできた農業課題への着手に加え、災害に強く、また持続可能な農業生産地を目指すべく、法人を立ち上げて創造的復興を目指します。具体的には ①台風被害からの復旧 ②元々抱えていた課題解決 ③未来に向けた取組の3段階に分けて、活動していこうと考えています。
まず取り組むべきは ①台風被害からの復旧。来年以降も栽培するために、畑に散乱した漂流物や堆積した土砂の撤去、りんごの樹についた泥水の洗い流しなど。もちろん、生活再建のため自宅の復旧も欠かせません。そして、これらを行うための農業ボランティアを募集・派遣する体制づくりです。
当プロジェクトが目指す農家の活動復旧サポートに対して、すでに県内大手の青果卸売業「長印」様より賛同いただきました。地域のりんご農家の未来や天災に負けない新しい農業の在り方について、強い理解を示してくださいました。長印様からノウハウや人脈といった部分で手助けしていただくと同時に、幅広い支援者の皆様と一緒に、既存の枠組みを超えた形での復興を描いていきます。それが、②元々抱えていた課題解決 , ③未来に向けた取組 への着手です。
高齢化や耕作放棄地の増加に歯止めをかけると同時に、新技術の導入などのアイディアが必要です。例えば、今回の水害では多くの農家がスピード・スプレイヤーと呼ばれる薬剤散布車を失いました。本プロジェクトではシェアリング・エコノミーの概念を導入し、農機具を農家間でシェアするような体制も整えていきたいです。こうした新しい農業の推進も「創造的復興」であると考えています。
今回のクラウドファンディングの目標金額は1,000万円。私たちは下図のように、調達金額に応じたアクションを実現していきます。
支援総額が300万円を越えた際には、アップルライン周辺に本プロジェクトの拠点としても機能する復興総合窓口を設置します。農家は復旧作業に追われており、現場をなかなか離れることができません。この窓口を行政の出張相談所として機能させたり、ボランティアの受付拠点として機能させます。資金とアイデアが集まるほど、窓口の機能が充実していきます。
支援総額が700万円を越えた際には、山積する課題の有識者や、IoT化などに明るいプロを現地に派遣するなど、外部からの支援を充実させていきます。ありがたいことに、支援の輪が広がるにつれ多くの有識者との出会いがありました。クラウドファンディングを通じてさらに広がるであろう支援の輪を活かして、多角的な支援体制を整えます。
支援総額が1,000万円を越えた際には、地域単位で活用する機材の購入などハードへの投資にも着手します。例えば、スピード・スプレイヤー(薬剤散布車)は1台500〜1,000万円。集まった金額次第ですが、地域の未来のために有効と考えるものへと、農家や有識者と相談のうえ投資していきます。
台風が襲ってから1ヶ月が経ちました。すでに数え切れないほどのご支援いただいたなかではございますが、もう少しだけ、皆様の力を貸してください。より多くの方々に関わっていただくことで、未来へと繋がる創造的復興を目指します。そして必ず、いただいた恩を自慢のりんごで返していきます。クラウドファンディングを通じたご支援、そしてこのページの周知に、ご協力のほど何卒よろしくお願いいたします。
長野アップルライン復興プロジェクト
代表:徳永 虎千代 (とくなが とらちよ)
1992年6月20日生まれ。長野県長野市出身。明治時代から100年以上続くリンゴ農家の4代目。2011年、長野商業高校卒業後、県内の油圧機器メーカーに就職したが、2014年に「経営者を目指したい」と脱サラし、長野県農業大学校の果樹専門コースに入学。2016年にリンゴの名産地・長野市赤沼でりんご農家を営む父親の跡を継ぐ形で就農した。耕作放棄地の解消を掲げ、2017年に自身の農園を法人化。当初は1haだった畑を4haまで増やした。また、人手不足の中でも効率的にりんご栽培ができるよう高密植栽培という新しい栽培方法を導入するなど、『課題解決農家』として活動を続ける。