近年、農業人口が減少しています。農林水産省が5年に1度行う調査によると、2015年には209万人で5年前の2割減という結果になっています。農業界では若年層の新規農業参入者を求めていますが、今回は若者に農業へ興味をもってもらうために注意しなければならないことを、農業への発展も期待される「地方創生」の例からご紹介します。
農業人口減少の現状
農水省が「農林業センサス(速報値)」を発表しました。これは農林業の生産構造などの実態と変化を明らかにしたもので、農林業施策の統計を作成することを目標に5年に1度行われる調査です。
冒頭でも触れましたが、2015年の調査結果で農業人口は209万人となりました。
1985年では542万人いた農業人口ですが、半減する結果となり、このままだと2020年には200万人割れするのではないかと不安視されています。平均年齢も5年前より0.5歳上がった66.3歳で、高齢化が目立ちます。
しかし農業人口減少に歯止めをかける兆しも見えてきています。
若者の就農を増やす必要があるのですが、きつく稼げない印象の強い農業の「労働環境」への不安がネックとなっています。そこで近年増加傾向にある「農業法人」が若者を集めるカギとなります。農地面積全体の法人経営は拡大しつつあります。法人形態なら「労働環境」が整いやすく、安定した収益につながるため、若者の農業に対する不安を取り除き、若者を農業業界に呼び寄せる重要な役割を担っています。
若者に農業への興味を持ってもらうには
「農業離れ」が進んだ原因を探り、若者の農業に対するネガティブなイメージを払拭する必要もあります。若者が農業から離れてしまった主な原因として考えられるのは、
・都市型生活を送る人が増えた
・就農する際の初期費用が高い
・安定的な収益が得られない
が挙げられます。
例えば初期費用に必要な資金を集めることができたとしても、農業は生き物を相手にする仕事ですから、就農後の売上が約束されているわけではありません。天候で生育不良が起きることもあれば、天災に見舞われることによって不作になることも考えられます。
とはいえ、上記を打破するものとして注目されている「スマート農業」「都市型農業」や国からの「資金援助」も活用することで、「儲からない」と言われる現状を回避することはできます。今は昔ほど農業を始めるハードルは高くないと言えるのではないでしょうか。
特に「資金援助」は、農業人口減少を重く受け止めた政府が、就農準備や開始に伴う支援を行い、自治体による研修制度、住まい提供などの支援も用意されています。
しかし、ここから注意しなければなりません。
「地方創生」で生じた問題から注意点を知る
東洋経済の記事「地方は若者の「起業家」を使い捨てにしている」は、農業業界においても重く受け止めなければならない事態だと考えます。この記事では、地方創生政策によってその地域にやってきた若者たちが、開発した事業を地域の人たちに強引に横取りされる事例を取りあげています。この事例では、若者がせっかくその地域に来てくれたのに、「来てくれた」だけで目的達成と捉えてしまい、その結果、若者がそこに根ざすことはありませんでした。
これは農業においても言い換えることができるのではないでしょうか。
「新規参入者」を育て、農業就業人口の一部とするためには、彼らの自立を支援する必要があります。「若者が農業に興味をもった・参入した」だけで満足してはいけないのです。
農業の衰退に歯止めをかけるためには、現時点で農業従事者である先駆者たちが、若者を支える意識をもつ必要があります。若者が参入することで生じる「環境の変化」に対応できなければ、せっかく農業に興味をもった若者が増えても、同じ分だけ離農してしまう若者も増えてしまうことでしょう。若者が農業に関心をもち、その後自立するまでは、彼らの思いを汲み取れるよう努力したいものです。
農業人口を食い止める手立てはある
若者が参入することで生じる「環境の変化」には、
・スマート農業の普及
・植物工場の展開
・通勤型農業
など新しい農業の形が挙げられます。
しかし、これらは農業人口減少を食い止める手立てとなるはずです。
例えば「スマート農業」では、情報通信技術やロボットを使い、生産コストを下げることができます。これにより人手不足を補うことができますし、技術を使って生産管理をデータ化できれば、今まで農業に触れてこなかった若者たちも容易に農業に取り組めます。
近年発展が期待される「植物工場」も、手間なく農作物を育てることができるため、もしかすると「土を耕す」「雑草を取る」などの作業そのものがなくなるかもしれません。
もし土を耕すことや雑草取りなどの手間がネックで農業に踏み出せなかった若者がいるとすれば、「植物工場」の発展は若者と農業をぐっと近づけることになるかもしれません。
「通勤型農業」は多種多様なライフスタイルのひとつとしても提供できます。平日は市街地から農場へ「通勤」し、休日は自宅で過ごすというスタイルです。本格的な農業従事者ではないものの、休日だけ契約している農場へ足を運ぶ「週末農業」という形が注目されていますから、その逆のスタイルも広がっていくのではないでしょうか。
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