農林水産省によると、農業従事者の数は年々減少を続けており、総農家数は1995年の490万戸から、2005年には334万戸、2015年には216万戸、2020年は175万戸となっています。
同省は後継者不足を解消する対策として、集落営農※や法人化を進めています。
その結果、農業経営体のうち団体経営体数は2010年には3万1千経営体(そのうち法人経営体は1万7千経営体)、2015年には3万7千経営体(法人経営体は2万7千経営体)、2020年には3万8千経営体(法人経営体は3万1千経営体)に増えました。
※集落を単位として、農業生産過程の全部又は一部について共同で取り組む組織(出典元:集落営農について:農林水産省)
集落営農や法人化が着々と進んでいますが、そのほかの対策にも注目が集まっています。
人手不足の現状と、今後の対策
農林水産省の資料「人手不足に直面する地域農業の課題と人材確保対策」によると、さまざまな労働力確保対策が行われる中で、現在は「機械の大型化」と「雇用者待遇の改善」の割合が高く、今後期待されているのが「スマート農業の導入等」です。
外国人労働力について
新型コロナウイルス流行によって困難な状況にあるのが「外国人労働力の導入・増加」です。外国人労働者は2015年頃から急増し、日本国内の常雇(常時雇用されている労働者)の1割強を占めるほどになりましたが、新型コロナウイルス感染拡大により、2020年以降、新たな入国ができない状況になりました。ですが、2021年においては、特定技能外国人数が前年の5倍に拡大しています。
「外国人労働力の導入・増加」を高めるために、在留期間の上限がない「特定技能2号」に関する検討も本格化することが予想されています。技能実習制度と在留資格「特定技能」の違いは以下の通りです。
技能実習制度 | 特定技能 | ||
1号 | 2号 | ||
目的 | 技能等の習得等を通じた国際貢献が主目的(労働力確保策ではない) | 人手不足が深刻な分野における人手不足の解消 | |
業務内容 | 実習計画に基づく実習実施が必須 | 幅広い労働需要に対応 | |
在留期間上限 | 最長5年 | 通算5年 | 制限なし |
特定技能については、派遣事業者による派遣形態での雇用が可能で、派遣事業者に雇用される特定技能外国人数は増加傾向にあります。
パート・アルバイト、副業など雇用形態の変化について
パート・アルバイトとして農作業に従事する人数も増加傾向にあります。
農業雇用者の動向(男女別、正規・非正規別)は以下の通りです(単位:千人)。
男性・正規 |
女性・正規 | 男性・非正規 |
女性・非正規 |
|
2007年 |
57 |
37 | 33 | 95 |
2012年 |
72 |
36 | 58 |
115 |
2017年 |
78 |
34 | 69 |
120 |
コロナ禍では、アルバイトとして、農作業に従事する人がさらに増えている可能性も示唆されています。
日本経済新聞2022年6月3日の記事によると、山形県は県職員が副業でサクランボの収穫や出荷作業を手伝う「やまがたチェリサポ職員制度」を導入した、とあります。勤務時間外の週8時間・月30時間以内といった条件で副業を認めています。
農業支援サービスにも注目集まる
農業支援サービスとは「不特定の農業者に対して対価を得てサービスを提供すること」を指します。ただし、「農産物の流通・販売に係るサービス(代理販売や共同出荷など)」は含みません。
具体的なサービス例には、次のようなものが挙げられます。
- 専門作業受注型(ドローンを活用した農薬散布を代行など)
- 機械設備供給型(自動収穫ロボットサービスなど)
- 人材供給型(繁忙期に着目し、農作業を行う社員を専門的に育成して現場に派遣など)
- データ分析型(ドローンによる作物の生育状況のセンシングなど)
これらのサービスは、人手不足、特に繁忙期の臨時雇用の確保のみならず、農産物の収量や品質の維持、スマート農機導入にかかるコストの高さなどの課題を克服することを目的としています。
農林水産省は「農業支援サービスに関する意識・意向調査結果」を実施しており、2021年12月に公表した調査結果によると、52.6%の農業者が農業支援サービスを利用していることがわかりました。
有償のサービスで利用が多いものには以下のものが挙げられます。
- 営農指導(定植や施 肥管 理など営農行為 に関する指導) 41.6%
- 農薬散布や追肥などの管理業務代行 39.6%
- 収穫作業や選別などの営農行為代行 37.1%
現在サービスを利用している人と今後利用したいと考えている人が回答した「今後利用したいサービス」には「営農指導」の次に「繁忙期のみ等の臨時的な人材派遣サービス」が挙げられています。
先で紹介した「やまがたチェリサポ職員制度」などは、農業従事者のニーズに合った制度といえますね。
参考文献