昨今、ニュースや新聞などで「外国人就労者」に関する話題を目にする機会が増えたのではないでしょうか。人口減少に伴う労働人口の減少を解決する糸口としても注目される「外国人就労者」ですが、その現状からはあまりポジティブな話題を耳にしません。
本記事では、農業分野にも大きく関わってくる外国人就労者の現状と、今後の展望について紹介していきます。
外国人農業就労の現状
日本の外国人労働者の数は増加傾向にあります。2017年の外国人労働者の数は約61万人。これは日本の労働者人口の1.2%に相当すると言われています。
約61万人いる外国人労働者の内訳は以下の通りです。
・専門的・技術的分野の労働者 約18万人
・日系人、日本人の配偶者等※1 約24万人
・アルバイト(資格外活動許可を得て行う) 約10万人
・技能実習生※2 約6万人
となっています。
日本で働く外国人のうち、不法就労を行なっている外国人労働者も少なくありません。2017年に強制退去させられた外国人のうち、4万6千人に不法就労事実が認められており、そのうち851人の不法就労者は、農林水産業に従事していたと言われています。
※1日系人、日本の配偶者等はその身分に基づいた在留許可がおり、活動内容に制限はない
※2母国で取得できない技能を取得することを目的にやってくる外国人を指す。企業や農協等で最長1年間の研修、またさまざまな要件を満たしたものは技能実習生として最長2年間の技能実習に励むことができる。技能実習制度で学ぶことができる対象は62種類114作業あり、農業分野では耕種農業と畜産農業の2職種5作業が対象。
外国人労働者の課題
日本に滞在している技能実習生の数は増加傾向にあり、2012年には15万1477人だった技能実習生は、2017年末には27万4233人に増えています。この技能実習生の増加は農業分野においても同様です。少しデータが古くなりますが、2014年時点では約2万4000人が農業分野に従事していました。
日本の農業は、農業従事者の高齢化による後継者不足や耕作放棄地の増加など、持続可能な農業経営に反する問題を抱えています。技能実習生の存在は、そんな農業分野において重要な役割を担っています。実習生が農業分野で活躍してくれることで、農業を継続することができるのですから。
しかし近年、「外国人労働者に対する劣悪な労働環境」が問題視されています。農業分野に限った話ではありませんが、厚生労働省の調査結果によると、全国の労働基準監督機関による監督指導のうち、その約70%に労働基準関係法令違反が認められたと言われています。
雇用者と労働者の対立を深めないためにも、「言葉や文化の違いを受け入れる」という姿勢が重要だということがわかります。
また日本の農業分野が抱える外国人労働者に対する課題のひとつに、「外国人労働者への依存」が挙げられます。日本政府は、技能実習生の在留期間を延長する動きを見せています。その理由のひとつに、雇用者からの「技術を教えても母国に帰ってしまっては意味がない」という意見が挙げられています。しかし「技能実習制度」の目的は「母国で取得できない技能を取得すること」のはずです。ここで挙げられている雇用主の意見は、技能実習生を”単純労働者”として見ている発言だと言えるのではないでしょうか。労働人口の減少から「働く人材に帰られては困る」という意見もわからなくはないですが、そのような考えが、技能実習生に対する劣悪な労働環境を生み出しているのかもしれません。
なんのためにこの制度が始まったのかを雇用者が理解し、実習生ひとりひとりに向き合う必要があると言えます。
外国人農業就労の今後の展望
外国人労働者を支援する対策には以下のものが挙げられます。
・母国語による相談窓口の整備
・実習先変更、調整への支援
・実習生の一時宿泊先の提供等
実習先で不当な扱いを受けた際等に、母国語で通報したり相談したりすることができる窓口を整備しています。また実習先での実習が困難だと判断された場合に、実習先を変更できるような支援も行われます。
しかし先でも申し上げましたが、まずは雇用者が「技能実習制度」や外国人労働者に関する規定について理解し、労働者ひとりひとりに向き合う姿勢が必要です。言葉や文化の違いは受け入れ、互いにひとりの人間として向き合うことが重要なのではないでしょうか。
最後に、外国人労働者を受け入れるうえで参考にすべき事例を紹介します。
地震の影響により農地が被災したり、農業を行う人手が不足するといった問題が加速した熊本県。そのため農業の担い手を外国人労働者に頼らざるを得ないのですが、その状況を逆手にとり「グローバル農業の戦略拠点」として国の特区申請を行いました。
阿蘇市のイチゴ農園「木之内農園」は、インドネシア語や英語が飛び交うグローバルな農園です。ここは、外国人技能実習制度に対する「実習生=安い労働力」という視点を変えたいと考える農園でもあります。「母国で技術を学べない外国人たちが、日本の大学等で農業を学びながら実習を行い、雇用主にとっては彼らが労働力にもなる」そんなウィンウィンな関係を目指していると言います。
参考文献