農業従事者の高齢化が危ぶまれています。
農業従事者の高齢化がもたらす課題として、後継者不足も挙げられていますが、今回着目する「耕作放棄地」の課題の一つとして挙げられています。耕作放棄地とは、耕されることなく放置された田畑のことを指し、日本全国の耕作放棄地の面積は、なんと38万6,000ha、埼玉県に匹敵する面積があるのです。
耕作放棄地、最大の原因は「高齢化、労働力不足」
平成26年に行われた調査では、その発生原因は「高齢化、労働力不足」が挙げられています。もちろんそのほかにも「土地は持っているが農業従事者ではない人の増加」「農作物価格の低迷」なども挙げられていますが、平成14年に行った同様の調査においても「高齢化、労働力不足」が上位に挙げられ、長い間変化がありません。
高齢になると、身体的負担のかかる農作業を続けることは困難になります。また後継者不足も深刻化しています。農林水産省の調査によると、農業従事者は2015年で209万人、これは5年前と比較して2割減ったことになります。ちなみに1985年には、542万人いた農業就業人口。30年間の間で6割も減りました。平均年齢も5年前より0.5歳上がり66.3歳となっています。39歳以下は7%もいない状態です。高齢化が進み、後継者もいないとなれば、田畑を放置せざる得ないのが現状でしょう。
耕作放棄地がもたらす問題
問題の中には、ほかの農地への悪影響を与えるものも挙げられます。
まず農業の大敵である病害虫や雑草が発生する原因となります。
農地として利用されている間は、収穫する農作物に病害虫がつかないよう、農作物の成長が邪魔されないよう、病害虫や雑草への対策に気を使うことでしょう。
しかし放棄されてしまった農地は野放しの状態です。耕作放棄地の中だけで済む話ならまだマシだと思うのですが、自然界に育つ生物の生命力の強さは、隣の農地にまで及びます。あっという間に雑草が生い茂り、農業に害をもたらす病害虫が棲みやすい環境になってしまえば、耕作放棄地の隣の農家はたまったもんじゃありませんよね。
放置された農地が、野生動物の棲家となるケースも厄介です。中間山地によくあるケースなのですが、畑を荒らすイノシシやシカが、農地に人の気配がないことに気づくと、山から田畑へと戻ってきてしまいます。棲家になってしまうと、そこを拠点に他の畑を荒らしかねません。
用排水路などの管理が困難になる場合もあれば、耕作放棄地がゴミの不法投棄場になってしまう…なんてケースもあります。
農地中間管理機構による対策とは
そんな中、耕作放棄地をほったらかしにしないための対策があります。平成26年3月に施行された「農地中間管理事業の推進に関する法律」です。これにより、47都道府県で農地中間管理機構が指定されました。
目的は農地利用の集積・集約化です。農地中間管理機構は耕作放棄地など錯綜した農地を借り受け、担い手が現れれば、まとめて借り受けた農地を貸し付けます。農地と担い手の中間に立ち、借り手が見つかるまで責任を持って農地を管理します。
そのため、長年放棄されたために使いにくくなった農地があれば、必要に応じて管理機構が整備を行います。
これら業務の一部は市町村に委託されます。そうすることで、地域一丸となって耕作放棄地解消を進めることができますし、地域や人とつながる取り組みに貢献できます。
例えば北海道の農業生産法人の場合、酪農跡地の耕作放棄地でダッタンそばを作付けしました。耕作放棄地が新たに利用されたという利点だけでなく、ダッタンそばを特産品として売り出すことで、その地域の活性化にも結びついています。
地域独自の対策も
先に述べた北海道の例のように、農地中間管理機構と農業関連団体、地域が連動することにより、耕作放棄地解消以外にも利点があります。具体例をいくつかご紹介します。
長野県JA北信州みゆきは、耕作放棄地にひまわりを植えました。一見すると、新たな農耕地として活用されていないように思えるかもしれませんが、ひまわりからは食用油を取ることができます。
またこのほか、使われなくなった田んぼや畑に菜の花やひまわりを植えている地域(ちいき)もあります。たとえば長野県のJA北信州(きたしんしゅう)みゆきでは、ひまわりを植えています。ひまわりを植えると、食用油がとれ、焼いた葉や茎は農地で使う土に混ぜることができます。きのこを育てる培地としても役立ちます。
その農地の担い手だけがいなくなっただけで、農地としてはまだ利用できる、そんな場合には市民農園として活用されることもあります。神奈川県秦野市では市民農園「JAはだの さわやか農園」として地域の人に活用されています。第一次産業としての農業に活かす方法ではありませんが、市民農園としての存在は、消費者が農業を知るきっかけになるのではないでしょうか。
耕作放棄地で作られるのは食糧だけではありません。宮城県のある農家は、使われていない田んぼでブタの飼料としてお米を作っています。作ったお米でブタを育て、ブタの排泄物を堆肥に有効活用しています。発酵が進んで完熟した堆肥は、飼料用米を育てる田んぼに利用します。耕作放棄地を活用して、循環型農業を実践しているのです!
今回紹介したような中間管理機構による耕作放棄地への対応が行われているのも事実です。しかし耕作放棄地を作付けできる状態に戻すには、膨大なコストと手間がかかります。耕作放棄地ができる前に、耕作放棄地を生み出さないような対策を練ることも重要なのです。
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