農業に関心はあるが、農業は未経験で、知識や技術の基礎を体験したいという人に向けて、各都道府県では「新規就農者育成研修」が実施されています。
そこで本記事では、就農支援を積極的に行う全国の都道府県・市町村が、どのような研修を開講しているのか調べてみました。
新規就農者育成研修の内容
神奈川県の場合
新規就農者育成研修と検索して、一番上に出てくるのが神奈川県が実施する「新規就農者育成研修(農業体験コース・農福連携コース)」のホームページです。
農業に関心があり、将来神奈川県で就農や新規参入することを検討しているが、農業は未経験で知識や技術の基礎を体験してみたい方に対し、農業の現状と魅力を理解・体験していただく3日間の短期研修を開講します。
※「新型コロナウイルス感染症の拡大防止に向けた県の基本方針」に基づき、2021年6月13日から毎週土曜日に開講予定だった第1回の開催は中止となっています。
農業体験コースの研修内容は、農業の基礎的な知識を学ぶ講義のほか、農業機械の取り扱い方を学ぶ講習や農作業実習などが用意されています。希望者には就農相談も行われます。ホームページには過去に行われた新規就農者育成研修の様子が公開されており、参加した研修生の感想には「農作業=重労働というイメージがあったが、扱いやすい農具もあり、イメージが変わった」「丁寧な研修内容に感心した」「経験したことのない業界について学べて有意義だった」などの声が挙がっています。
一方、農福連携※コースは「農業に参入を検討している障害福祉サービス事業所の職員で、農業の基礎知識や技術を体験したい方」を対象としたコースです。研修内容のうち、
- 神奈川県の農業概要と農政施策
- 農業に関する基礎的講義
- 農作業実習(野菜等)
は農業体験コースと共通していますが、農業体験コースが「就農に向けたガイダンス」を行うのに対し、農福連携コースでは「新規参入に向けたガイダンス」が用意されています。
※農業者と、社会福祉法人やNPO法人などの福祉団体が連携して、障がい者や高齢者らの農業分野での就労を支援する取り組みの総称(引用元:朝日新聞出版知恵蔵mini)
なお神奈川県の新規就農者育成研修を実施する「かながわ農業アカデミー」は、農業の担い手育成機関として様々なニーズに合わせた研修を開講しています。新規就農者育成研修のほか、女性を対象とした「神奈川県女性農業体験研修」や、農業機械の取り扱い等を学びたい人に向けて「農業機械初心者研修」「農業機械安全研修(基礎・応用)」などの研修が用意されています。
山形県の場合
公益財団法人やまがた農業支援センターでは、山形県で新規就農を希望する人を対象に「独立就農者育成研修事業(交付金型)」を実施しています。主な研修内容は、農業経営者の元での実践研修や定期的に開催される座学や視察といった集合研修です。
なお概要には“この事業は、非農家出身者等で国の農業次世代人材投資資金(準備型)を受給して新規就農を目指す方を支援するもの”とあります。国からの給付をもとに行われる研修のため、対象者は「就農予定時の年齢が、原則50歳未満」※「研修期間中に常勤(週35時間以上で継続的に労働するものをいう。)の雇用契約を締結していないこと」「原則として生活費の確保を目的とした国の他の事業による給付等を受けていないこと」など、いくつかの要件を満たす必要があり、また研修終了後1年以内に就農しなかったり、交付期間の1.5倍の期間に自営または雇用等で就農しない場合には、受給した交付金を全額返還しなければなりません。先で紹介した神奈川県の研修とは異なり、あらかじめ就農計画を立てておく必要があるといえます。
※「交付金型」の要件には「就農予定時の年齢が、原則50歳未満」とありますが、就農予定時50歳以上の方を対象とした「県支援型」もあります。
また「農業に興味関心はあるが、生業にするかどうかの決心はついていない」といった人には「やまがた農業短期体験プログラム」があります。
農業に興味のある方、山形県内で新たに農業を始めたい方、職業としての農業に関心をお持ちの方から、希望の作目、体験の時期や期間、場所などをお聞きし、プランを作成し、農業および農家の生活を実体験していただく研修です。
栃木県の場合
JAしおのやは「新規就農者育成研修事業」を実施しています。JAしおのやが設立した出資型農業生産法人(株)グリーンさくらで実習が行われるのですが、興味深いのが栽培技術などの営農指導や農機具、肥料などの扱い方のみならず、税務など経営指導も行われるということ。
応募資格には「心身ともに健康であること」「農業への固い意志と意欲があること」とともに「研修後もJAしおのや管内で居住し、一定期間(10年)就農できる方」とあり、その地域に根ざすことが求められています。
とはいえ、JAしおのやの新規就農者育成研修事業では、研修期間中は研修手当が支給され、労災保険・雇用保険はJAしおのやが負担、また独立後も地域に溶け込むための支援が行われます。経営面や地域で就農することに対してサポートがあるのはなかなか心強いのではないでしょうか。
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『農業をはじめる.JP』の検索機能を使えば、さまざまな就農支援情報を得ることができます。
就職支援情報検索で、支援分野の「2:研修制度」にチェックを入れます。研修先として希望する都道府県がある場合には、そこにもチェックを入れ、検索すると、各都道府県が実施する「新規参入者研修」や「農業経営者育成研修」情報を見ることができます。
参考文献