日本各地で、2019年7月28日から7日間連続で35℃以上の「猛暑日」が続きました。猛暑日が続いたことにより、熱中症で搬送される人の数も増えつつあります。2019年8月3日の毎日新聞の記事によると、東京や宮城など1都6県で40〜90歳代の男女8人が熱中症で死亡、8月に入ってからの死者は22人となりました。
本記事では、猛暑が続く中、農家が熱中症に遭わないための対策について紹介していきます。
熱中症の怖さ
まずは熱中症の怖さについてご紹介します。
熱中症は、高温環境下にいたことで体温が上がり、体内の水分・塩分バランスが崩れたり、体温調節機能が働くなったりすることで生じるさまざまな障害の総称です。さまざまな障害には、
- 体温上昇
- めまい
- 頭痛
- 吐き気
- けいれん
などが挙げられます。
重症化し、死に至る可能性もある熱中症。そのため、高温環境下に長時間いた時、またはいた後に生じた体調不良には「熱中症の可能性がある」と考えておきましょう。
熱中症は重症度により3つの段階がありますが、手当が遅れると命に関わることも十分考えられるため、熱中症の3段階は覚えておいて損はありません。
- Ⅰ度:軽症(応急処置で回復の可能性:高)
症例)めまい、立ちくらみ、筋肉痛、大量の発汗など - Ⅱ度:中等症(病院搬送を必要とする)
症例)頭痛、不快感、吐き気、嘔吐、倦怠感など - Ⅲ度:重症(入院、集中治療の必要性あり)
症例)意識障害、けいれん、手足の運動障害など
農家のための熱中症対策
近年、屋外作業を行う人の熱中症が増加傾向にあると言われています。
特に工事現場の方など、ヘルメットを装着したり、長袖・長ズボンの作業着を着用したりして、かつ長時間屋外で仕事をしていることで適切な放熱ができなくなり、熱中症にかかりやすくなるのだといいます。
農家の場合、工事現場の方ほど放熱のしにくい格好で作業することは少ないかもしれませんが、熱中症対策を意識しすぎて損することはありません。熱を下げる素材の服装を選んだり、電動ファンや保冷素材のアイテムを活用するなどして、体温を正常に保つ意識は常に必要です。
農家が意識したい熱中症対策
意識してほしい熱中症対策は以下の通りです。
- 日中「以外」に作業を行う
- こまめな水分補給
- こまめに休息する
- 単独で作業するのは避ける
- 熱中症予防グッズを活用する
日中、気温が高い時間帯での作業は避けましょう。温度だけでなく、湿度が高い環境にも要注意です。温度計・湿度計を使って、作業環境を確認しながら農作業を行いましょう。日中「以外」に作業を行う場合も、日よけを設置したり、作業は日陰で行うようにしたりと、できる限り日に当たらない工夫を。ビニールハウス内で作業を行う場合には、風通しをよくしたり、遮熱資材を活用してください。
また熱中症対策の鉄則ですが、水分補給は「のどが渇いてからでは遅い」ということを忘れないでください。のどが渇いていなくても、20分おきぐらいにコップ1〜2杯の水分を飲むようにしましょう。もし作業の途中で筋肉がピクピクしたり、足がつったりした場合には、水分補給だけでなく、塩分補給も忘れないようにしてください。スポーツ飲料や1Lの水に1〜2gの食塩を入れた食塩水、塩分補給用のタブレットなどを摂取しましょう。
熱中症にかかったとき、軽症であれば適切な処置で回復することもできますが、単独で作業をしてしまい、周りに誰もいない中で熱中症にかかってしまうと、処置が遅れ、重症化する可能性が高まります。農作業を行う際には、できる限り単独での作業は避けてください。単独で作業せざる得ない場合には、必ず時間を決め、水分や塩分補給を積極的に行い、体調が優れなくなったら、直ちに作業をやめてください。
巷にはさまざまな熱中症対策グッズがあります。ぜひとも活用してください。「熱中症対策」と書かれているものだけが熱中症対策グッズではありません。帽子の着用は、頭を直射日光から守ります。屋内作業時、送風機やクーラーを使うのも立派な熱中症対策です。
常に心がけておきたいこと
農家に限らず、熱中症予防として常に心がけておきたいことをご紹介していきます。
予防策を知る
予防により熱中症を避けることができます。もっともシンプルな予防策は「暑さを避ける」ことです。
- 炎天下の中を出歩かない
- 外出時には日陰を歩く
- 帽子を着用する
- 日傘を利用する
- 屋内では扇風機やエアコンで温度・湿度を調整する
これらを心がけるだけでも、熱中症にかかる可能性を抑えることができます。
こまめな水分補給
先でも述べましたが、のどが渇いていなくてもこまめに水分補給を行いましょう。ただし注意点がひとつ。水分補給のために飲む飲み物ですが、コーヒーや緑茶、アルコール類は避けましょう。カフェインが多く含まれている飲み物、アルコールが含まれている飲み物は「利尿作用」があり、水分を排出してしまいます。体内の水分を補うために水分補給が必要なのに、排出してしまっては意味がありません。
また水分と一緒にビタミン・ミネラルも失われてしまうので、水分とミネラルを同時に補給できる飲み物が理想です。熱中症対策に適した飲み物は、
- 経口補水液
- 0.1〜0.2%濃度の食塩水
- スポーツドリンク
- 麦茶
- 梅こんぶ茶
- 味噌汁
などが挙げられます。
もっとも飲みやすいのはスポーツドリンクかと思いますが、市販されているスポーツドリンクは糖分が多いため、飲み過ぎには注意しましょう。
体づくりをしよう
体づくりのために、わざわざ炎天下で運動をする必要はありませんが、日頃からウォーキングやランニングなどの運動で汗をかく習慣をつけておくと、暑さに対抗できる体につながります。
こんな人・こんなことに要注意!
- 小さな子供
- 高齢者
- 運動不足、運動に慣れていない人
- 肥満傾向の人
- 寝不足な人
- 体調不良の人
は要注意です!
年をとるとのどの渇きや暑さを感じにくくなるため、意識的に対策しないと熱中症になりやすいです。また高齢により心機能や腎機能など体の機能が低下しているため、熱中症にかかると症状が重くなりやすいです。注意しましょう!
また「節電」を意識しすぎて、空調設備を使わずに夏を過ごそうとする人も要注意です!確かに空調設備等を使うとお金はかかりますが、大事なのは自分の命だということをお忘れなく!温度・湿度が高い日には、無理せず空調を使用してください。
参考文献